まるで大きな「ツーリングセロー」!? 新型「ヒマラヤ」にじっくり乗って実感
バイクのニュース / 2024年8月31日 11時10分
ロイヤルエンフィールド初の大型アドベンチャーモデル「HIMALAYAN(ヒマラヤ)」は、2021年に日本初上陸し、モデル名の由来となるヒマラヤの道を進むために開発され、2024年型で大幅刷新されました。新型は日本の道ではどうなのか? 様々なシーンを走ってみました。
■求められたのは、タフな道を進むためのチカラ
新しい「HIMALAYAN 450(ヒマラヤ450)」(2024年型)に乗りました。数日間このバイクで走り、どこを走っても楽しめたので、これはオススメなバイクです。
ロイヤルエンフィールド新型「HIMALAYAN」(2024年型)に試乗する筆者(松井勉)
先代の「ヒマラヤ」は、2016年に新登場した排気量411ccの空冷単気筒を搭載したツーリングバイクです。バーチカルシリンダーで、容量15Lの燃料タンクやフェアリング、リアキャリアの装備など、乗った誰をも笑顔にするようなバイクでした。
そもそもこのバイク、インドのライダー達が憧れる冒険ツーリングである、道路で越える最高峰の峠、ヒマラヤのカルドゥン・ラを目指すために造られたと言います。海抜5359m。片道でも数日を費やし、空気は薄く、雨が降れば道が川になり、舗装路と未舗装が入り交じるタフな行程です。そこを目指すライダー全てが乗りやすいバイクを目指したのが、この「ヒマラヤ」だったのです。
そのため、エンジン特性はマイルドで最高出力は18kW、最大トルク値は32N.mとなり、5速のミッションを駆使すれば行けない場所は無いかも、と思わせる、例えるなら大きなヤマハの「ツーリングセロー」のようなバイクでした。
ロイヤルエンフィールドの技術者達は考えました。誰でもヒマラヤに行ける「乗りやすいバイクコンセプト」は世界共通なはずだ、と。新型もキープコンセプトで行こう。そして世界から集まるモアパワーと移動の快適さ、というような部分にも応えようと。
そこで、乗りやすさをそのままに、出力やハンドリング性能を向上させつつ、サイズや重量はキープして独自のポジショニングは踏襲。じつは乗りやすさを生むエンジン特性や重量面で、これ以上でもこれ以下でもないと言うのです。
新型「ヒマラヤ」では、排気量452ccの水冷単気筒DOHC4バルブを新開発し、フレームやサスペンションなど全てが刷新された
新型「ヒマラヤ450」のエンジンはコンパクトな水冷単気筒DOHC4バルブとなり、最高出力は29.4kW、最大トルクは40N.mと大きくパワーアップ。リアのサスペンションストロークを20mmアップして前後とも200mmのサスペンショントラベルを確保。フロントには倒立フォークを採用し、リアショックの機能も上がっています。ダブルクレードルからツインスパーとなったフレームにより、車体レイアウトや剛性バランスに様々なメリットを得ています。
シート高は2段調整式となり、825/845mmから選べます。先代は800mmでしたが、車体がスリムなため足つき感は上々。オプションで805mmに設定できるローシートも用意されています。車体重量は4kg軽い195kgに納めています。
試乗車のタイヤはブリヂストンAX41を履いていたので、舗装路でのハンドリングや乗り心地はオリジナルではありませんでしたが、テストはこのタイヤで行ないました。フロント90/90-21、リアは初代の120/90-17から140/80-17とワイド化。これによりタイヤの選択肢が拡大しているのは嬉しいニュースです。
また、新型ではチューブ仕様とチューブレス仕様が用意され、価格(消費税10%込み)はそれぞれ88万円/89万9800円。この価格、ほとんど先代と横並び。このご時世に嬉しい限りです。
■日本の道でもストレスなし、むしろ「これ、いいじゃん!」
東京の杉並にあるロイヤルエンフィールドのディーラーでテスト車を受け取ります。ショップの方がライディングモードをエコにすると、エンジン特性が先代みたいで「ヒマラヤ」感がそのままです、と教えてくれました。
市街地から高速道路、ワインディングを走る。アドベンチャーバイクらしい、どんなシーンでもゆとりのある乗り味
容量が17Lに増量された燃料タンクを護るように伸びるヘッドライトステーは先代のイメージ同様。ライト類はLED光源を採用しています。メーターは4インチのTFTカラーモニターになり、ターンバイターンのナビからGoogleマップを投影するナビに進化しています。全体のスタイルは「ヒマラヤ」らしくもあり、マフラーのレイアウトなどからキュっとコンパクトになった印象もあり、親しみやすいのもホメポイントです。
まずはエコモードで市街地に走り出すと、新エンジンは確かに先代風でした。6速になったミッションの恩恵でシフトアップごとの回転の繋がりも先代以上にスムーズです。
前後サスペンションの吸収性が良く、傷んだ路面でも快適です。452ccの単気筒エンジンが見せるダッシュ力はエコモードでも充分。パフォーマンスモードにすると力強さが増し、これ以上を望む必要があるだろうか、とすら思います。それでいてガンガン走るというタイプでもなく、良い意味で「ヒマラヤ」らしい扱いやすさは健在。ブレーキの制動力も強力さや鋭いタッチをことさら演出するタイプではなく、濡れた道やダートでも扱いやすそうな印象です。
高速道路に入って本線に合流するような場面では、堂々と素早い加速から一気に100km/hまで到達して流れに乗ります。先代よりも相当速い印象で、本線に流入してからも、80km/hから追い越しを掛けて完了までのフラストレーションがまるでナシ。
ワインディングでも一体感あるハンドリングで、ダート向けのタイヤを履きながらも、カーブを切り取り、タイトターンからの再加速も楽しめます。性能を使い切る先代に対して、ゆとりを持って楽しめるのが特徴です。ブレーキやサスペンション、ハンドリング性能も、大型アドベンチャーバイクから乗り換えても不満は無いでしょう。
ダートでは先代のマイルドなパワー特性に対して、新型はファンライドも楽しめるトレールバイクのような印象。大排気量アドベンチャーモデルとは異なる親しみやすさもアリ
最後に、オフロードも走りました。ライディングモードにはエコ、パフォーマンスともに、ABSのオン、オフがあり、オフを選択すると後輪のABSがキャンセルされます。
まずはエコモードで。エンジン特性はマイルドです。サスペンションは舗装路同様動きが良く、路面をしっかり掴む印象です。深いギャップでもサスペンションに余裕があります。走りに緊張感を呼ばない、優しいキャラクターなのです。
パフォーマンスモードでペースを上げてみました。タイヤがダート向けというのもありますが、先代ではノーマルタイヤでグリップ限界を迎えることもなくマイルドなパワー特性が生み出す優れたトラクション、というイメージでしたが、新型ではスロットルをワイドオープンで軽くテールスライドを誘発でき、優れたシャーシの性能を高い次元で楽しめます。
「250ccクラスのトレールバイクみたい」そんな印象のまま林道を楽しめました。
結果的に、先代の良さ、つまりは「ヒマラヤ」が築いてきた世界観はしっかりと反映されています。撮影のためにガンガン走っても燃費は30km/l程度でした。「これ、いいじゃん!」それが僕(筆者:松井勉)の結論です。
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