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バイクの「ヨンヒャク市場」が盛り上がっている!? これはたまたまなのか?

バイクのニュース / 2024年9月1日 11時10分

普通自動2輪免許で乗れるバイクは排気量400cc以下という制度は日本独自であり、これまで沢山のモデルラインナップがありましたが、近年はその数も減り、今では海外モデルが400ccクラスのモデルを拡充し始めています。どいうことなのでしょうか。

■海外メーカーが次々と参入

 近年の日本におけるバイク市場をあらためて見ると、ロングセラーモデルのヤマハ「SR400」とホンダ「CB400SF」の生産が終了したことで、少し前までは、選択肢の減少を嘆く声が多かったような気がしますが、2024年の今、アンダー400ccクラスはかなりの活況を呈しています。

新開発となる排気量398ccの水冷単気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、2024年に新登場となったトライアンフ「スピード400」(左)と「スクランブラー400X」(右)新開発となる排気量398ccの水冷単気筒DOHC4バルブエンジンを搭載し、2024年に新登場となったトライアンフ「スピード400」(左)と「スクランブラー400X」(右)

 ここ数年の日本市場のモデルラインナップを振り返ってみると、ホンダ「GB350/S」、カワサキ「Ninja ZX-4R/RR」、「エリミネーター」、ベネリ「インペリアーレ400」、ロイヤルエンフィールド「メテオ350」、「ハンター350」、ハーレーダビッドソン「X350」、トライアンフ「スピード400」、「スクランブラー400X」など、魅力的なニューモデルが矢継ぎ早に登場していますし、ロイヤルエンフィールドの「350クラシック」シリーズは2022年型、KTM「390デューク」とその兄弟車であるハスクバーナ「ヴィットピレン401」、「スヴァルトピレン401」は2024年型でフルモデルチェンジを敢行しました。

 ただし、それらのほとんどは日本市場を重視したモデルではありません。近年の300~500ccで各社が念頭に置いているのは、膨大な販売台数が見込めるヨーロッパと東南アジア市場で、日本独自の普通(=中型)2輪免許に合致するのはたまたま……と言えなくはないのです。

 念のために記しておくと、ヨーロッパのEU加盟国の2輪免許は、「AM」が16歳以上・50cc以下、「A1」が17歳以上・125cc以下・11kw以下、「A2」が19歳以上・排気量制限ナシ・35kw以下、「A」が24歳以上あるいはA2免許歴2年以上・排気量制限ナシ、という4種で、アメリカは150cc以下の「M2」と、排気量制限ナシの「M1」という2種(いずれも取得年齢は16歳以上)しかありません。

 そして東南アジアを含めたその他の地域でも、日本のように排気量400ccを境にして、普通と大型を分類する免許制度は存在しないようです。

■400ccクラスでは物足りない?

 もちろん、たまたまではあっても、日本人にとって選択肢の増加は歓迎するべきことでしょう。ただし400cc市場の活況は、そんなに長くは続かないのかもしれません。

 と言うのも、少し前にトライアンフの「スピード400」と「スクランブラー400X」を試乗した私(筆者:中村友彦)は、各車の乗り味に大いに関心する一方で、最高出力はA2ライセンスに適合する現状のままでいいから、排気量を450cc前後に拡大して低中回転域のトルクが太くなったら、もっと面白くて使い勝手が良好になるのかも? ……と感じたのです。

 このあたりの考え方は各人各様ですが、カワサキには私と同じような考え方をする技術者がいたようで、「エリミネーター」のヨーロッパ仕様とその技術を転用して生まれた2024年型「Ninja 500」は、排気量を398ccから451ccに拡大し、最大トルクを37Nm/8000rpmから42.6Nm/6000rpmに高めています(その一方で、最高出力は35kw/10000rpmから33.4kw/9000rpmに下げている)。

 となれば他社のアンダー400ccモデルも、今後は排気量を450cc前後に拡大する可能性があるのではないでしょうか。

排気量398ccの水冷並列2気筒エンジンを搭載するカワサキ「ELIMINATOR」排気量398ccの水冷並列2気筒エンジンを搭載するカワサキ「ELIMINATOR」

 なお、ロイヤルエンフィールドの「ヒマラヤ」も、カワサキの451ccパラレルツインエンジンに通じる姿勢で、2024年に登場した2代目で排気量を451.6ccに拡大していますが、このモデルの場合は、日本の普通2輪免許をまったく考慮していないことが如実に伺える、初代の411ccという排気量が印象に残っている人が多いかもしれません。

 また、インド市場で350ccという排気量が定番としての地位を獲得していることを考えると、ロイヤルエンフィールドの「350クラシック」シリーズと、その対抗馬であるホンダ「GB350/S」は、今後も現状の排気量を維持するでしょう(兄貴分の500ccが登場する可能性はある)。

■BMW Motorrad「G」シリーズの動向

 ヨーロッパのA2ライセンスと東南アジア市場を重視したモデルの中で、カワサキとロイヤルエンフィールドに続いて450cc化を行ないそう……と、私が(勝手に)考えているのは、2016/2017年からBMW Motorradが発売を開始した「G 310 R」と「G 310 GS」です。

排気量312ccの水冷単気筒エンジンを搭載するBMW Motorrad「G 310 R」排気量312ccの水冷単気筒エンジンを搭載するBMW Motorrad「G 310 R」

 この2台が313ccという排気量を採用した理由は定かではないですが、市場でライバルになる、KTM「390デューク」と「390アドベンチャー」、トライアンフ「スピード400」と「スクランブラー400X」などのパフォーマンスを考えてみると、圧倒的な優位を築くために450ccの道へ進んでも不思議ではありません。

 各車の2024年型の「最高出力/最大トルク/重量」は以下の通りです。

「G 310 R」25kw(34ps)/28Nm/158.5kg
「G 310 GS」25kw(34ps)/28Nm/169.5kg

「390デューク」33kw(45ps)/39Nm/165kg
「390アドベンチャーSW」32kw(44ps)/37Nm/172kg

「スピード400」29.4kw(40ps)/37.5Nm/170kg
「スクランブラー400X」29.4kw(40ps)/37.5Nm/179kg

KTM「390 DUKE」に試乗する筆者(中村友彦)KTM「390 DUKE」に試乗する筆者(中村友彦)

 逆に言うなら、2024年型でフルモデルチェンジを敢行したKTMとハスクバーナの3兄弟、そして2024年にデビューしたばかりの「スピード400」と「スクランブラー400X」は、しばらくは大がかりな仕様変更は行なわないはずなので、「G」シリーズの450cc化は、BMWにとって起死回生のチャンスになるかもしれません。

 とはいえ、日本の2輪市場の活性化を考えると、業界人の1人としては、できることなら400cc以内に留めて欲しいところです。

■ホンダは400ccと500ccを同時開発

 世界各国の需要を満たす400/500ccモデルとして、早い段階から明確な方針を打ち出していたのはホンダです。

 同社が2013年から発売を開始したパラレルツインエンジンを搭載する各モデルは、海外市場向けの「CB500R」。「CB500F」、「CB500X」(最高出力は35kw)と、日本市場向けの「CB400R」、「CB400F」、「400X」(34kw)を同時開発していたのですから。

 もっともそれはホンダだから、あるいは、日本のメーカーだからできたことかもしれません(かつて日本の4メーカーは、海外市場がメインの500~600ccと、日本向けの400ccを同時開発することが珍しくなかった)。

 おそらく海外メーカーの多くは、ヨーロッパのA2ライセンスと東南アジア市場を重視したモデルを450~500ccに切り替えたら、そのアンダー400cc仕様は作らないでしょう。

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