「痴漢にストッキングを破られたこともあります」“息子の女装姿”を見た両親の感想は…46歳おじさんが「ロリィタ美少女」に変身した理由
文春オンライン / 2024年8月4日 11時0分
ミュージシャン、タレント、モデルとして活躍する谷琢磨さん。もともと“室伏広治”のような男らしいタイプに憧れていた彼が「女装」に目覚めた理由とは?(撮影:Lestat C&M Project)
「33歳のとき、知り合いが関わっていた雑誌のロリィタ系ファッションブランドの撮影で、女性モデルの代役を頼まれたんです」――体型が小柄なことをきっかけにある日、仕事で「女装」をすることになったミュージシャンの谷琢磨さん(現在46歳)。その意外な経験が彼の人生をどう変えたのか? インタビューの前編をお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
◆◆◆
本当は室伏広治になりたかった
――昔から、女装に興味があったのですか?
谷琢磨(以下、谷) 全く興味がありませんでした。「琢磨(たくま)」という名前通り、「たくましい男性になりたい」と思っていました。小学生の頃から、元ハンマー投げ選手の室伏広治さんのような背が高くてがっしりとした体格に憧れていたんです。そのため筋トレに励んだ時期もありましたが、なかなか筋肉が付かなくて、マッチョになるには向き不向きがあるんだと思いました。中学生のときには筋肉の病気に罹って、急に首が動かなくなった時期がありました。男性が罹るのは珍しい、女性に多い病気でした。思春期だったこともあり、自分の身体が理想とかけ離れていることにすごく悩んだし、コンプレックスを抱えていました。
――では、女装を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
谷 33歳のとき、知り合いが関わっていた雑誌のロリィタ系ファッションブランドの撮影で、女性モデルの代役を頼まれたんです。予定していたモデルさんが急病になってしまい、洋服のサイズが合いそうな人の中で連絡がついたのが僕だけだったそうです。報酬が出るし、知り合いが困っていたので引き受けました。
――初めて女装したときはどう感じましたか?
谷 すごく嫌だったし、恥ずかしかったです。バンドのボーカルをしているので舞台メイクはしていましたが、女装をしたことはありませんでした。スカートを穿くことに違和感があったし、女装をすることで「周りとの人間関係が崩れてしまうかも」という心配もしていました。
でも、そのときの撮影がスタッフの方からすごく好評だったんです。「もっと撮ってみないですか」とお声掛けいただくようになり、レディースファッションのモデルのお仕事が広がっていきました。当時はお金が無かったので「仕事になるならやろうかな」と思うようになりました。だから僕の場合は、完全にお金目当てのビジネス女装がきっかけなんです。
――仕事で女装をするようになったことを、どう感じましたか?
谷 初めの頃は撮影の合間にスカートを穿いてコンビニに行くことも「こんな格好で街を歩いていいのかな」とドキドキしました。でも回数を重ねるごとに感覚が麻痺して平気になっていきました(笑)。「この仕事で税金を納めているから」という大義名分があることは大きかったです。最初の頃は、周りの人にそう言い訳していました。
――女装を楽しめるようになるまで、どんな意識の変化があったのでしょうか。
谷 モデルとして周りの方が認めてくださったことで、段々と気持ちが前向きになっていったんです。身長が低く細身であることを、「いいね」「羨ましい」と褒めていただけるようになり、コンプレックスが武器に変わるきっかけになりました。むしろ、それを磨いていこうというアプローチに切り替えられたことは、すごい意識改革だったと思います。
撮影では、沢山の女性モデルさんの中で、男性が僕だけということがあり、そこに選んでいただいたことに対してプロ意識が芽生えるようになっていきました。ウエディングドレスのモデルをしたときは、そのブランドの会議で検討を重ねた上で僕を起用してくださったと知って、「性別関係なく、プロのモデルとして頑張らなければいけない」と自覚するようになりました。
――プライベートでも女装をするようになったのはなぜですか?
谷 モデルのお仕事で、ブランドからお洋服を沢山いただくようになったんです。全てレディースですが、とても高価なお洋服ばかりだし、自分ではあまり服を買わなかったので、普段から着たいと思うようになりました。お洋服に合わせて普段からメイクをするようになり、モデルとして向上するためにもスキンケアやメイクの研究に力を入れるようになりました。今では女性の格好をしている方が落ち着きますね。
女装を見た両親の反応は…
――普段から女装をするようになって、ご家族や、友人の反応はどうでしたか?
谷 フリーダムな両親なので、何の驚きもなく受け入れてくれました。当時は実家暮らしだったのですが、出かける前に「こっちのドレスがいいんじゃない?」とアドバイスをしてくれました(笑)。
気心の知れた友人には、最初は「気持ち悪!」と言われましたね。女装というより、すっぴんだった人が急にお化粧をし始めたことに違和感があったのだと思います。でも数日で慣れたのか、すぐ何も言われなくなりました。
以前はバンド関係など、男性の知り合いが多かったのですが、女装を始めてからは女性と仲良くなることが多いです。女装していると、女性は距離感が近くなるのですが、男性は距離を置く方が多いです。おそらく、どう接していいか分からなかったり、「不用意なことをして傷つけてはいけない」と思って一歩引いてしまうのだと思います。
――ヒゲ脱毛など、女装のためにしている美容はありますか?
谷 ヒゲは薄いので脱毛はしていないんです。年間で10本くらいしか生えないので自分では気づかなくて、人に指摘されたらピッと抜いてます(笑)。足も23cmと小さく、元々鳩胸だったし、女装に向いている体質だったのかもしれません。
痴漢にストッキングを破られたことも
――女装をするようになって、日常生活で困ることはありますか?
谷 電車に乗ると男性から痴漢されることがあります。「僕が男だと分かってやっているんだろうな」という人もいます。「男だから触ってもいいじゃないか」と考える人もいるみたいなんです。ストッキングを破られたりする物理的な損害もあります。
最近は触るのではなく、偶然を装ってカバンでお尻をガンガン叩いてくる男性が結構多いんです。駅で女性にわざとぶつかる「ぶつかりおじさん」と似たような行為なのかもしれません。痴漢を捕まえていた時期もありましたが、今は振り払って触るのを止めたら、それで放っておいています。
――痴漢に何か対策はしていますか?
谷 「男です」と書いたプレートを首から下げていたことがあります。男だとアピールすれば大丈夫かと思ったのですが、それでも触ってくる人はいましたね。そのプレートは、女装で男子トイレに入るときも使っていました。
――女装をして男子トイレに入ると、周りはどんな反応ですか?
谷 「男です」と書いたプレートを付けていても、スカートを穿いて入っていくとびっくりさせてしまいますね。今は、よく行くところの「誰でもトイレ」の場所を大体把握しているので、女子トイレはもちろん男子トイレにも入らないよう配慮しています。
――谷さんは「女装パパ」として妻子がいることを公表されていますが、夫やパパという立場で女装していて困ることはないですか?
谷 普段からこのままで、子供の幼稚園の送り迎えなども問題なく行っています。ただ、結婚式を挙げる際に少し困ったことがありました。
〈 「ウエディングドレスを着たかったのですが…」“46歳・女装おじさん”が驚いた「意外な結婚式マナー」の壁 〉へ続く
(都田 ミツコ)
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