「バカ、ゴミ、才能のないピエロって言われて(笑)」なぜ米オーディション番組で37歳お笑いコンビが“成功”したのか? シューマッハが語る、日本のテレビとの“決定的な違い”〈『ゴット・タレント』特別賞で話題〉
文春オンライン / 2024年8月4日 11時0分
シューマッハの五味侑也(ごみゆうや:左)と中村竜太郎(なかむらりゅうたろう:右) ©山元茂樹/文藝春秋
全世界のパフォーマーが優勝賞金1億5000万円を目指して戦うアメリカの人気オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』。とにかく明るい安村やチョコレートプラネットも手が届かなかったゴールデンブザー(審査員特別賞)を日本の芸人として初めて獲得したのがサンミュージック所属のシューマッハだ。
動物のかぶり物で世界を唸らせた37歳の同級生コンビはどんな思いであのステージに立っていたのか。ネクストステージ直前の2人に話を聞いた。(全3回の1回目/ 続き を読む)
◇◇◇
「もう分かんない! バーン!」って押してくれた
——現在オリンピック開催中ですが、『ゴット・タレント』とオリンピックってちょっと似てるのではないかと。
中村竜太郎さん(以下、中村) すごい考え方ですね(笑)。
——オリンピック同様『ゴット・タレント』は出場するのも難しいですが、その中でもゴールデンブザーはなかなか取れない。しかも、コメディアンは難しいと言われていますよね。
五味侑也さん(以下、五味) 激ムズと言われています。
——世界中のエンターテイナーが憧れる人気番組で、審査員がどうしても次のステージに進ませたい出演者にだけ押すことができるゴールデンブザーを獲得されました。
五味 ほんと運ですよね。あれもノリみたいな感じがありましたから。(審査員の)ソフィアが「わけわかんない!」って言いながらバーンと押してくれて。あれ、僕らのパフォーマンスが本当に素晴らしくてというよりは「もう分かんない! バーン!」だったので。
——でもそれってお笑いの原点のような気もしていて。
五味 ああ、確かに。
——お笑いを考察するのがブームですが、「あの間がこうで」とか「あの言葉のチョイスがこうで」とか。でも実際に笑っちゃう時ってこうだよなぁと。何が決め手だったのかって聞かれたソフィアさんが、「I don't know!」って叫んだように。
五味 そうそう。
「才能のないピエロ」…世界中から賛否両論のコメントが殺到
中村 だから、かなり賛否両論がありますよ。メチャメチャ「否」の意見もあって。アメリカだとどうしても歌とかダンスとか、あとバックボーンが特に重要視される。あそこに行くまでの過程も。僕らの場合は否がすごいんですよ。「このゴミたちを次のラウンドに行かせるな」とか。
五味 「なんだこの才能のないピエロは」とか。
中村 いろんな言語で書きこまれてる。賛否の「賛」ももちろんあるので、毎回動画についたコメントの翻訳ボタンを押す時、イチかバチかなんです。
——どういうことですか。
中村 一応押してみようって押したら「ただのバカの集まり」って訳されて出てきて。うわぁハズレだった(笑)。
——でも、それだけ色々な国の方が見てるということですもんね。
中村 それがうれしいですね。
——そもそも『ゴット・タレント』に出ようと思ったきっかけはなんだったのでしょう。
海外に向けてアピールがしたかった
五味 もともと海外に向けて何かアピールはしたくて。2017年あたりかな、今後インバウンドで日本に来る人たちに向けてライブを開催してたんです。
——だいぶ早い時期から。
五味 ゆんぼだんぷ(お互いのお腹を打ちつけ合う音芸で『ゴット・タレント』に出場)やウエスP(裸の上でのテーブルクロス引きで『ゴット・タレント』に出場)など海外で活躍している芸人やこれから海外を目指したいメンバーを集めて、ライブをやってたんです。でもコロナでそれもできなくなっちゃって。それで本当に動こうと思ったんですよね。
中村 2017年ぐらいからウエスPとゆんぼだんぷが『ゴット・タレント』に出始めてたんです。でも僕らだけ一向に海外に進出する気配がなくて。で、去年の暮れにウエスPに相談したんです。「どうやったら『ゴット・タレント』に出られるのかな」って言ったら、ウエスPはSNSに動画を載せて、それがバズったことで向こうからオファーが来たんですよ。
でも僕らは2022年末までSNSに動画を上げるということを一切してこなかった。2023年になって初めて「これからはインターネットの時代だ」ということに気づき、それからは毎日動画を上げるようになりました。
ウエスPってTikTokのフォロワー数が1280万人もいる、日本トップの芸人なんです。ウエスPに毎週電話で相談して、どうしたらいいのか徹底指導してもらって。
——コンサルですね。
「毎日続けることに意味があるから」SNSへの投稿を続けると…
中村 あいつは友達が僕らぐらいしかいないんで、仕事以外の時間はいつでも電話がつながる(笑)。月何十万払ってもいいぐらいのSNSコンサルの知識を僕らが独占してました。
最初の1カ月はTikTokフォロワーが30~40人という地獄の日々が続いたんですけど、ウエスPが「何よりも毎日続けることに一番意味があるから」と。で、工夫しながら1カ月続けていたら、ユニコーンで風船を割るという動画が1500万再生。
五味 なんかプレゼンしてるみたい(笑)。
中村 そうしたら本当にその動画一本で『アメリカズ・ゴット・タレント』のプロデューサーから、TikTokのダイレクトメッセージで「私たちの番組に興味ありませんか」とメッセージが来て、そこからです……!
五味 言い終わった後の満足感、何だよ(笑)。
——でも、ちゃんと見てるということですよね。『ゴット・タレント』のプロデューサーは。
五味 現地の方に言われたんですけど、「日本のコメディアンは面白い。いろんな発想があるので、私たちは常に注目してる」と。だから、実際見てみると、コメディアンで他の国から行ってる人って意外といないんですよ。安村さんみたいな、ああいう本当にバカバカしくて笑えるっていうのはたぶん日本人しかやってないので。
アメリカの現場は日本とすべてが違った
——『アメリカズ・ゴット・タレント』の実際の収録はどんな感じでしたか。日本のテレビとどんなところが違いました?
中村 すべてが違います。
五味 もちろんアメリカのよさもすごくありますが、やっぱり日本で生きてきたので、あらためて日本人ってほんと素晴らしいなと思いましたね。まず、日本だと何時にリハ、何時に収録……とかスケジュールが細かく決まってるじゃないですか。でもアメリカの場合は「8時に来て」だけメールでピュッと来て。
——え?
五味 「明日本番だけど、この感じで大丈夫?」っていうぐらいアバウトな。「そこでいろいろ撮ります」と書いてあって、8時に行ってはみたもののなかなか始まらない。「あれっ、撮るって書いてあったけど、本当に大丈夫かな」って。
中村 だんだん不安になってた。
五味 ひたすら待機してたよね(笑)。でもそれがアメリカのやり方なので。それでうまくいってるからいいんだなと思うんですけど。僕はそこがほんと新鮮でしたね。
中村 今日の取材も「16時から」って言われてほんとドキドキしてた。文春がアメリカンな会社だったら……。
五味 僕ら待機する気ではいたんですよ。
中村 6時間ぐらいは全然待機します(笑)。
しょうもない芸をしたらブーイングが起きる恐怖
——しかしすごい経験されたんですね。
五味 面白いです。よく『ゴット・タレント』の演出で、出場者がスタジオに入っていく、PVみたいなシーンの撮影があるじゃないですか。それを撮るってなって、バーッと行ったら、カメラマンさんが「ハーイ」って言いながらリンゴ食べてたり。
——アメリカンだ(笑)。
五味 それが当たり前でしたね。すごい不思議。
——視聴者からするとすごく緊張感がある現場なんじゃないかと思ってました。
五味 「緊張しなかったの?」ってすごく聞かれるんですけど、そういう小っちゃい積み重ねがジャブとなったのか、当日全然緊張しなかったんですよ。何時間も待機して、カメラマンさんはリンゴかじってて、そうなるともうこっちとしてはやるだけなので(笑)。
中村 日本の番組でもお客さんが入ってるものはあるけど、『ゴット・タレント』はそれこそこの場を楽しもうっていうお客さんが何千人と集まっているから、本当に盛り上がってもらえる。でも、しょうもない芸をしたらブーイングが起きるんです。みなさん正直なので。
——そこは厳しいんですね。
五味 2個前ぐらいの人は「ブ~」ってなってましたし。僕らも分からないじゃないですか。何が受け入れられて何が受け入れられないのか分からないので、恐怖との戦いではありました。でも、楽しくやればいいやと思っていた。
ゴールデンブザーを取ったら、ずっと僕らに「フゥ~~」って
中村 ゴールデンブザーを取ったら取ったで、その後が結構長いんです。追加の収録とか、カット割り撮影とか。そこでスタッフさんがずっとテンション高いんですよ。ずっと「フゥ~~」って。
五味 ずっと僕らに「フゥ~~」ってやってくれる。
中村 撮影から撮影の間に移動してる時もずっと「フゥ~~」。それが3時間続く(笑)。さすがに3回目くらいで、これはスタッフさんのボケだと思い「いや、分かった分かった」ってツッコんだら、「え、何が?」みたいな。全然ボケじゃなかった。純粋な「だって喜ばないと。うれしいでしょ」でした。
五味 僕ら以前『仮装大賞』でユーモア賞っていう賞をいただいたことあるんです。芸人なのに(笑)。その時はスタッフさんが「芸人だけど、ユーモア賞とって大丈夫?」って心配してくれたんですけど、たぶんアメリカだったら「ユーモア賞~~フゥ~~」なんですよ。
——でもそれくらいゴールデンブザーを獲得するというのはすごいことなんですよね。
五味 もう、「フゥ~~」ですよ。
中村 ほんとだよね。
五味 映像を見てもらったらわかるんですけど、押してくれた審査員のソフィアが、全く押す素振りじゃなかった。「何をやってるのか分からない。何もないし、歌でもないし」みたいな。その前のサイモンがすごく褒めてくれていたのに。
『ゴット・タレント』って、合格をもらってもオンエアされるかどうかが分からないんですよ。僕たちはとりあえずサイモンが褒めてくれたから、これでオンエアはいけると思ってました。
それなのにソフィアが「わけ分かんない」って言い始めたので「うわっ、マジ?」「変なこと言わないで……オンエアはしてくれ……」って祈るような気持ちで聞いてたら、ブザーをバーン。
中村 あの時はゴールデンブザーより「オンエアされる!!」っていう喜びでした。
五味 映像見ると僕らの口「オー」ってなってるんですけど、あれ、「オンエアされる!」の「オ」です。
——なるほど(笑)。ソフィアのフリはすごかったですもんね。
五味 驚きしかなかったです。何これ、みたいな感じ。
「これで何とかチョコプラより話題になるかな」
中村 実は直前にプロデューサーさんから「今回のシリーズでは日本から(とにかく明るい)安村とTTブラザーズ(チョコレートプラネット)が来ていて」と言われて、俺、その時に初めて知ったんですよ。
——日本から人気芸人もやってきていた。
中村 僕らは昔吉本所属だったんですけど、チョコレートプラネットとは同期で。ご存知の通りあっちはずっと活躍していますけど、俺らはほんとやっとチャンスをつかんでここまで来て、それなのに「またチョコプラに話題を持っていかれるのか……」っていう気持ちもありました。
だからゴールデンブザーを獲得した時は、オンエア確定と「これで何とかチョコプラより話題になるかな」みたいな、そこの思いもありましたね。
五味 うわぁここにもチョコプラいるのか~だったよね。
中村 直前、マジ絶望してた。あの時ばかりは「いいじゃん、日本で売れてるんだから!」って気持ちでした。
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(西澤 千央)
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