「そんなプライドいらなかったじゃん」結成12年目のシューマッハが米国で大ウケ…小島よしお、ダンディ坂野ら“一発屋芸人”からの“ワイルドすぎる教え”〈『ゴット・タレント』でゴールデンブザー獲得〉
文春オンライン / 2024年8月4日 11時0分
シューマッハの五味侑也(ごみゆうや:左)と中村竜太郎(なかむらりゅうたろう:右) ©山元茂樹/文藝春秋
〈 「出よう。絶対おかしなことになるから」『いいとも』に毎週出ても吉本では売れず…世界が注目する芸人・シューマッハに刺さった“タモリさんの一言”とは〈『アメリカズ・ゴット・タレント』で快挙〉 〉から続く
米人気オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』のゴールデンブザー獲得により、飛び級で次のステージに進出することが決定しているシューマッハ。元々M-1を目指していた二人が「犬で生きていく」ことを決意したその陰には、一発芸の道を貫いてきた先輩芸人たちの金言があった。
「できることならしがみつきたかった」漫才やコントへの思い、そして彼らからプライドや執着を捨てさせた「犬」という鎹(かすがい)。全ての「うまくいかなかった」人たちに送る、新しい人生の見つけかた。(全3回の3回目/ はじめ から読む)
◇◇◇
「僕にはもう犬しかなかった」
——M-1のような賞レースで結果を出すことが成功とされる今の芸人界で、動物のかぶり物ネタをする苦悩、そして喜びはどんなところにあるのでしょうか。
中村竜太郎さん(以下、中村) サンミュージックの話から急にテーマが壮大に(笑)。
五味侑也さん(以下、五味) それは深いですね。
中村 もともと2人ともM-1志向で、本当に最初は頑張ってたんですけど、僕がマジで噛むんですよ。本当に噛むんです、僕。
——そうなんですか。
中村 今はフリートークだからまだマシかもしれないです。でも漫才だと緊張しちゃって言葉がガガガッとなっちゃうので、漫才をまずあきらめました。だったらコントに……って思ったんですけど、僕はマジで中学生のお遊戯会以下の演技力しか持ってなかった。本当に演技が『中学生日記』以下で。
五味 もはや『さわやか3組』だね。
中村 漫才では噛むし演技もダメってなったときに、僕にはもう犬しかなかった。あれ、演技要らないんで。
——かっこいい。
中村 かっこいいですか?
——「僕にはもう犬しかなかった」ってかっこいい。信念を感じます。
中村 あれはお面の下で目をつぶって止まるだけなんで。あとは怪我しなきゃいいだけ。
五味 ほんとにね。
犬で営業に行くと、すごいいい反応がもらえる
中村 だから……五味君はコントも漫才も思いつく人なので、他の芸人と組んでればある程度いけてたと思うんですけど、俺を相方に持ってしまったから。
五味 そんな簡単じゃないよ。いや、いいんですよ。
中村 だから申し訳ないなと思ってるんですけど、何とか犬のネタで俺とコンビで居続けるように引き留めてる感じです。
五味 実際漫才やコントで勝負するのって大変ですよ。
中村 競技人口が多いからね。
五味 競技人口が多いですし、運もありますし。いいネタができてたとしても、それがタイミングによっては表に出ることもなかったり。負け犬の遠吠えですけど。でも、犬で営業に行くと、しょっぱなのお客さんにすごい反応がよかったりするんですよ。
——洋の東西を問わず老若男女にウケる。
ゴー☆ジャス、ダンディ坂野、ビックスモールン。「貫いてきた」芸人たちから言われたのは…
五味 この前ドン・キホーテに行ったらお面売り場にカップルがいて、僕らの目の前で「最近これ反対にかぶって犬になる人たち知ってる?」ってしゃべってるんです。なんか不思議な気持ちでした。でもその時、俺らが極めるのはここだって思った。今は一切漫才、コントは考えてないです。投げ捨てました。
——かっこいい。
中村 でもこれ、貫き始めたのは去年の末からですからね。わりとすぐ結果が出たので(笑)。
五味 確かに。
中村 ほんと5年ぐらい前から、ゴー☆ジャスさんに「なんで犬やらないの? コントなんてやる必要ないよ」ってアドバイスされたり、ダンディ(坂野)さんにも「飽きたら負けだからな」って諭されたり、ビックスモールンさんにも「(漫才やコントは)あきらめなよ」とか。
——錚々たる「貫いてきた」芸人さんたち。
中村 それなのにその時は僕ら「いやいや、あなたたちと違うんで。ちゃんと王道でいくんだ」って思ってた。
五味 「犬もあるけど、漫才もコントもやるんです」みたいな。
中村 だけど今は「あなたたちのグループに入れてください!」っていう感じです。
五味 「すいません」といって入り込んでます。
もし怪我してなかったら、漫才やコントに未練があったかもしれない
——その考えにいたったのはなぜですか?
五味 僕が去年右腕を大怪我しまして。本当にネタも何もできない状態になっちゃったんです。コント、漫才、もちろん犬もできない状態に。それもあって今までできなかったSNSを頑張ろうと。ありがたいことにSNSの反応も大きくなって、「もうこれやれる範囲でやっちゃおうか」っていうのが大きなきっかけではありました。
中村 TikTokの動画をさかのぼっていただくと分かるんですけど、五味君は動かなくていい役回りか、半分以上は僕がピンの動物ネタを毎日上げてました。五味君が怪我したことが犬のネタを極めることになった大きな要因かもしれないです。
五味 まあ、いいきっかけだったかもしれないね。
中村 そうだね。もし怪我してなかったら、いまだに……。
五味 まだこじらせてたかもしれない。「いや、漫才、コント」って。
中村 「僕らはスギちゃんとは違うんだ」って(笑)。
五味 あと年齢もあります。芸歴が浅かったら終わってました。「ふざけんなよ! なんで怪我するんだよ」「しょうがねえだろ」って、バトって終わってましたよ、きっと。
中村 そうだね。
「お前はお笑い界のベートーヴェンになれ」
五味 それこそ一時期プチブレイクして、次世代芸人みたいに言われてた時期もあったんですよ。もちろんダメで、その時もいろいろ経験して。思い描いているようにはいかないから、今この目の前にあるものを取りあえずやっていこうと、2人ともそういう気持ちになっていた。どんな状況でも、今目の前のことをやるしかないという感じはあったかもしれないですね。
——かっこいい。
五味 かっこよくはないですよ(笑)。
中村 僕ら2人とも小島よしおさんにすごくお世話になっていて。結婚の保証人もやってもらったぐらいなんですけど。一度、僕が本当に噛むことで悩んでしまって、小島さんに泣きながら相談したんです。
その時「大丈夫だ。お前はお笑い界のベートーヴェンになれ」って言われて。「ベートーヴェンは耳が聞こえなくたってあれだけ偉大な音楽家になったんだから」って。それはずっと胸の奥にあります。言葉は出なくてもお笑いはできるからって。
——小島さん……。
中村 それを小島さんに言われた次の日、『ダウンタウンDX』を見たら、小島さんがメッチャ噛んで笑い取ってたんで、「そうか、噛んでもいいんだ」みたいな。
——小島さん(笑)。
中村 本当に前向きな方で。かなり小島さんの影響は僕ら2人とも受けてますね。
小島さんのパワーを感じて近づいていってる
——小島さんも相当いろんなことを周囲から言われてきたんでしょうね。「そんな格好で子どもたちだけ笑わせてどうするんだ」みたいな。
五味 実際それは言ってました。
——お笑いの世界では、センスある一言で大人を笑わせることが上位に置かれていますもんね。だからこそ『ゴット・タレント』で審査員が「I don't know!!」って言いながらゴールデンブザーを押したことに意味があるというか。
五味 わけわかんないけどなんか笑っちゃうよね、バーン、みたいな。小島さんもたぶんそういう方だと思うので。だから僕ら引き寄せ合っているというか、いや、パワーを感じて僕らが近づいていってるのかなと思います。
——今現在お二人のテレビに対する距離感はどのように考えていますか。若手の芸人さんにお話を伺うと「正直テレビに対してそこまで思い入れがない」とか「すごく出たいとかではないんですよね」みたいに話す方も少なくないです。
中村 やっぱりテレビにあこがれてお笑いを始めた人間なので、小っちゃい頃から見ていた方の番組には出たいです。『さんま御殿』とか『ダウンタウンDX』とか。逆に芸人になってから始まった番組に対してはそんなに思い入れはなかったりするんですけれども。
今のテレビのビジネスモデルでブレイクしたい
五味 テレビ番組には必ず女性アナウンサーがいるじゃないですか。
中村 そうとは限らないけどね(笑) 。
五味 女性アナウンサーがいらっしゃるので、そこは説明不要かなって思います(笑)
——そこもブレないですね。
五味 フジテレビクラブに入ってたくらいのテレビっ子なので、「テレビに出たい」というよりは「出ておきたい」という感じ。人生において。
中村 そうだね。で、ブレイクはしたい。今のテレビのビジネスモデルでブレイクしたいです。M-1やR-1、キングオブコントで優勝したら、(テレビ番組を)一周するみたいな言い方あるじゃないですか。僕らは『アメリカズ・ゴット・タレント』でゴールデンブザーを取ったという肩書で、一周させてほしいんですよ。こういう新しいブレイクのモデルを作りたい。
五味 大口叩いてるな(笑)。
——でも、やっぱり誰かが道を開かないと。お二人によって「こういうブレイクの仕方があるんだ」って示せたら最高ですよね。
五味 本当にそれは願いたいです。やっぱりテレビの影響力はすごい。どうしてもYouTubeだとピンポイントになっちゃいますけど、テレビはみんなが見てますよ。特に大きい番組なんかなおさらで。そういうところで僕たちも出て、皆さんに名前を知ってもらって、もっと仕事の幅を広げたい。そういう意味では、テレビという存在は偉大だなと今でも感じます。
中村 EXITとかさらば青春の光さんみたいに全部の媒体に出たいですよね。テレビ、ラジオ、YouTube、ABEMA、全部まんべんなく出てるじゃないですか。理想的。
五味 ラジオは本当にやりたいです。
ケンカしながら一緒に帰る仲
——ラジオすごくよさそうです。お互い名字に君付けをして話すお二人の関係性に合ってる。
中村 ああ、そうなんだ。そういうのいいんだ(笑)。
——昔だとコンビは仲悪いほうが売れるって都市伝説みたいに言われていたじゃないですか。お二人は話していてもナチュラルで現代的だなと。
五味 僕らは仲いい状態でコンビが始まってるので、今思い返すと、仲悪いタイミングがないよね。
中村 以前俺らが楽屋でケンカしてたんですよ、ネタのことで。で、「もういいや。行こうぜ」って、そのまま2人で駅に向かって歩き出した。それを見た後輩に「マジでシューマッハさん意味分かんないです」って。
五味 ケンカしながら一緒に帰った(笑)。
中村 俺らからしたら普通のことだったんですけど。
五味 仲悪い芸人が流行ってる時期に、意識的に仲悪くしようみたいなのもあったんですけど、無理でしたね。
——意識的に(笑)。
中村 でも、今『ゴット・タレント』のこともあって調子がいいので、もっと仲いい感じはあるかもしれないです。単純にコンビの仲のよさは仕事がうまくいってる度に比例するのかな。
五味 そうかな。ずっとこんな感じじゃない? 俺ら。
中村 そうかそうか。
人生の目標は「犬をメジャーにすること」
——「もうかぶり物はやめない?」みたいなことは今までなかったんですか?
五味 ないですね。営業で本当にお客さんが盛り上がってくださるんですよ。だから、捨てる理由がなかった。犬は絶対的なものとして、それをやめるやめないは一切話してないです。
中村 今は犬が完全に主軸になったので、僕の野望としては、ナポレオンズさんの「あったま・ぐるぐる」ぐらい犬をメジャーにしたい。あれを超えることが僕の人生をかけた目標です。
——何かのネタでブレイクされた芸人さんがどこに行ってもそれを求められることに苦痛を感じた……というお話はよく伺いますが、これからずっと犬を求められたとして、そのことに怖さはないですか。
中村 僕はもう腹をくくれました。先週もくりぃむしちゅーさんの深夜番組で、若手芸人50人ぐらい集まってたんですね。本当に今イケイケの、それこそママタルトとかトンツカタンとか。
——おお、高学歴芸人たち。
中村 ああ、そうか。
五味 無意識でそこに注目してたな(笑)。
中村 その中で、僕らだけぶっちぎりで先輩だったんですけど、普通にタイツ着て、お面を常に持ちながら堂々といることができた自分に「もう腹くくれたな」と思いました。
——もう大丈夫だと。
中村 5年前だったら無理でした。今はもう腹くくれてます。
「そんなプライド要らなかったじゃん」っていう経験をしてきた
五味 『いいとも』でのプチブレイクの時はちょっとあったんですよ。ちらっと、「ずっと犬?」って思ってた。でも、それが落ちていって、もう一回また注目していただいてる。ここでまた「ずっと犬?」みたいに言ってる年齢でもないですし。そこは要らないプライドじゃないですか。「そんなプライド要らなかったじゃん」っていう経験してるんで。
中村 昨日音楽番組見てたらORANGE RANGEが『上海ハニー』歌ってから新曲も歌ってて、「いやいや、新曲要らない」って思いましたからね。俺らからしたら、「『上海ハニー』だけ歌って!」って思いました。
五味 ちょっと「俺らからしたら」って、さらっと俺を巻き込まないでよ! ORANGE RANGEさん、俺は新曲も歌ってほしい派です!!
(西澤 千央)
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