肘をかまして連続ビンタ、土俵の上でガッツポーズ…“嫌われ親方”白鵬に照ノ富士が囁いた「禁断ワード」《引退発表》
文春オンライン / 2025年1月17日 19時40分
引退会見する横綱・照ノ富士 ©時事通信社
1月17日、大相撲の横綱・照ノ富士が引退会見を行った。「思いどおりの相撲ができなくなり、これ以上、中途半端な気持ちと体で土俵に立つべきではないと感じた」と引退を決断した理由を話し、今後は照ノ富士親方として指導にあたるという。
昨年「週刊文春」は照ノ富士と元横綱・白鵬(現宮城野親方)の関係について報じていた。2017年の“事件”から続く因縁、白鵬現役最後の取組を前に照ノ富士が囁いた「禁断ワード」とは……。当時の記事をあらためて公開する。
(初出:「週刊文春」2024年3月28日号。年齢、肩書は当時のまま)
◆◆◆
2021年7月、名古屋場所。優勝回数44回を数える横綱・白鵬は、打ち出し後の薄暗い廊下で大関・照ノ富士と鉢合わせた。白星を並べ、優勝を争う両者は言葉を交わすこともなくすれ違うはずだった。
しかし薄笑いを浮かべた大関が、横綱の耳元で何事か囁いた刹那、横綱の顔にはみるみる真っ赤な憤怒の形相が浮かんだのだった。
“師匠失格”の烙印を押された白鵬
角界は今、かつての大横綱へのお裁きを巡り、揺れに揺れている。
「元横綱・白鵬の宮城野親方は、暴行問題で引退した北青鵬への監督不行届や暴力の報告義務違反を咎められ“師匠失格”の烙印を押されました」(運動部デスク)
宮城野部屋のその後の展開は不透明な情勢が続いた。
「当初は復活の目がない消滅とも報じられた。所属する伊勢ヶ濱一門は、消滅こそ否定したものの、約20人の弟子の処遇が最大の問題で、複数の部屋に分散させる案が浮かんでは消えてきた」(同前)
“師弟分断”案まで取り沙汰され…
一時は、宮城野親方だけを現役横綱の照ノ富士が所属する伊勢ヶ濱部屋に、弟子たちは大島部屋に転籍させるという“師弟分断”案まで取り沙汰された。
「そこに待ったをかけたのが日本相撲協会執行部でした。最終的には浅香山親方(元大関・魁皇)の下、師弟一同で出直す方針が固まった」(同前)
綿密な“白鵬無力化計画”
もとより協会の北青鵬問題への対応は迅速だった。電光石火で張本人を引退に追い込み、宮城野親方を降格するなど綿密な白鵬無力化計画を成し遂げてきた。
だが、部屋解体後の構想に関しては後手が目立つ。そもそも宮城野部屋所属の親方、力士の処遇については一門に委ねていたはずなのに、なぜ師弟分断にまで具体的に踏み込んだ一門の案にノーを突き付けたのか。協会関係者が声を潜める。
「白鵬と現役横綱の照ノ富士が同じ部屋に所属するのを避けたのでしょう」
2017年の“正座強要”から続く因縁
2人の因縁は、2017年の事件に遡る。モンゴル出身の横綱・日馬富士が同郷の貴ノ岩を殴打し、刑事事件に発展した騒動だ。
「殴打事件は日馬富士、白鵬らモンゴルの先輩組が貴ノ岩や照ノ富士ら年下組を説教する場で起きた。その引き金は、貴ノ岩が『あなた達の時代は終わった』などと言い放ったことでした。後輩の増長に激怒した白鵬はその場にいた照ノ富士に対して土下座での謝罪を求めたといいます。当時すでに両膝を痛めていた照ノ富士にとって正座は辛く、いまだに膝の故障に苦しんでいるのもこの“正座強要”と無関係ではないと言われている」(前出・デスク)
「あなたの時代は終わった。これからは俺の時代だ」
その因縁が火を噴いたのが冒頭の場面だ。白鵬が「進退を賭ける」と宣言して臨んだ2021年名古屋場所。初日から10連勝を飾った取組の後の出来事である。
照ノ富士もまた10の白星を数えていた。大先輩と賜杯を争う身に上り詰めた大関は、すれ違いざまモンゴル語でこう言ったのだった。
「あなたの時代は終わった。これからは俺の時代だ」
この禁断のセリフを突き付けられた夜、白鵬は弟弟子たちを集めて言った。
「力士・白鵬は14日目で引退する。だから、みんなはそれまでに横綱の相撲を目に焼き付けておいてほしい。ただし、千秋楽だけは俺は人間・白鵬翔として照ノ富士をぶっ倒す」
土俵の上で全力のガッツポーズ、獣のように雄叫びまで
そして迎えた千秋楽。
「白鵬は立ち合いから照ノ富士に肘をかまして連続ビンタ、さらに最後は腕をきめて強引にぶん回して土俵に這わせた」(相撲記者)
勝敗決するや土俵の上で全力のガッツポーズ、獣のように雄叫びまで上げた。「横綱の品格」からは程遠い取り口には角界内外から猛批判が湧いたが、これが大横綱・白鵬の現役最後の取組である。
白鵬と照ノ富士のもつれた関係は、宮城野部屋の処遇が二転三転したことにどこまで影響しているのか。一門の総帥、伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)に聞いた。
――伊勢ヶ濱部屋での預かり案が却下されたのは、宮城野親方と照ノ富士の関係性が影響している?
「……」
長い沈黙の末、返ってきたのは、「広報を通してください」という一言だった。
宮城野親方にも数回にわたり直撃を試みたが、記者の呼びかけに一瞥もくれず、口を真一文字に結ぶのみ。
照ノ富士はずっと白鵬に与してこなかった力士
元相撲協会外部委員で漫画家のやくみつる氏が言う。
「照ノ富士はずっと白鵬に与してこなかった力士。そんな横綱の軍門に下ることは白鵬にしてみれば我慢ならないことでしょう。伊勢ヶ濱部屋転籍案は、事実上退職を促しているのに等しいほどの案でした。それが師弟揃って浅香山部屋への転籍となれば復興を前提にした仮所帯という色合いが強くなる。これを機に、今一度誰かが白鵬に『隠忍自重』という言葉を教えてあげればいいのにと思います」
このままだんまりという決まり手はない。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年3月28日号)
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