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《中学受験家庭の壮絶すぎる4日間》偏差値50の中堅校の待合室で母親が“来ないでほしい”と願ってしまった一言「次の筑駒、願書出した?」

文春オンライン / 2025年2月3日 11時0分

《中学受験家庭の壮絶すぎる4日間》偏差値50の中堅校の待合室で母親が“来ないでほしい”と願ってしまった一言「次の筑駒、願書出した?」

中学受験の合格発表の様子 ©時事通信社

 中学受験をする家庭にとって、多くの学校の受験初日となる2月1日から合格を手にするまでの日々は緊張の連続。

 5年にわたる取材で中学受験家庭の入試までの道のりを描いたルポ『中学受験のリアル』(集英社インターナショナル)では、詳細な様子を描いているが、入試開始日から合格を手にするまでにかかる時間はそれぞれに違う。すんなりと志望校の合格を手にする子どもがいる一方で、なかなか合格の二文字に出会えずに長く苦しい戦いとなるケースもある。

 2人の子の受験を経験した都内在住の女性は、中学受験のニュースを見る度に子どもたちの受験期を思い出して胸が詰まる思いがするという。長女は初日に第一志望の合格が決まったが、息子Aくんの受験は全く違った。同じように対策をしたはずが、受験日が近づいても手応えを感じられず、2月の受験シーズンに突入した。

 Aくんの家庭はもともと、“私立中学に絶対に入れたい!”というスタンスではなかった。子どもに合った学校が見つかり、本人が行きたいと望むなら受験をしようという考えで、「地元公立中でもいいんだからね」と、息子とも話していた。

 息子が志望したのは、偏差値50そこそこのいわゆる中堅校だった。最近は中学受験を目指す家庭の裾野が広がったこともあり、中学受験のボリュームゾーンとなっている。

 偏差値60を上回る難関校に合格することが難しいのはよく知られている。だがその下のレベルを目指して受験する子どもが増えたことで、模試会社が発表する偏差値表ではさほど高い数字でなくても、倍率が上がり合格が難しくなっている。時には、見た目の学校偏差値を大きく上回る子どもでさえ、合格確実ということでは決してないのが現状だ。

「次の筑駒、願書出した?」「出したよ。受けるでしょ?」

 Aくんが受けたのもまさにそんな学校で、近年人気が高まっていた。それもあり、入試初日の保護者控え室は満員の状態だった。母親が空いていた席に座って息子を待っていると、元々知り合い同士といった雰囲気の他の保護者たちの声が聞こえてきた。

「次の筑駒、願書出した?」

「出したよ。受けるでしょ?」

 元々知り合い同士といった雰囲気の3~4人の母親たちがそんな会話を交わしていたのだ。

“筑駒”は筑波大附属駒場の略だが、筑駒は偏差値70を超える国立の男子校だ。

 Aくんの母親はそれを聞いて、偏差値50前後の学校なのに筑駒を目指すような子が受験に来ているのかと驚いた。「そんなレベルの子が受けているのなら、落ちるかも知れない」と不安になると同時に、「うちはここが第一志望校、そんな高みを目指す人達は頼むから来ないでほしい」と思ってしまったという。

 しかし悪い予感は的中し、その入試の結果は不合格。

 Aくんは手で涙を拭い、「明日は必ず合格する!」と母親に伝えて寝室に入った。

 結果的に、Aくんは2日目の入試で無事に合格を決めた。母親は胸をなでおろしたが、本人は不満顔だった。というのもその学校には一般クラスと特進クラスが存在し、Aくんが合格したのは一般クラス。そのため、特進クラスに合格するまで受けさせてほしいというのが本人の希望だった。

2月4日の待合場所は雰囲気が全く違うことに気が付いた

 家族で話し合い、2月4日に最後の入試に挑むことを決断する。Aくんを送り出した後、母親は前回と同じ待合場所に案内されたが、それまでとは雰囲気が全く違うことにすぐ気が付いた。

 2月1日や2日の待合室はほぼ満員状態だったが、4日ともなると保護者はぽつり、ぽつりと離れた座席に座るほど。Aくんは一般クラスとはいえ合格を手にしていたが、おそらく1校も合格をもらえていないという家庭もあったに違いない。重たい雰囲気はそれを物語っていた。

 この日の受験は、午前中が学科だけでの試験、午後は面接や作文で合否が決まる特色入試と言われるものだった。午後に入ると待合室の人数はさらに減った。この学校がその年に行う最後の入試だ。

 試験を終えたAくんは帰り道、母親に「手応えを感じた」と話した。自宅に帰り、夕食を済ませて発表時刻を待ち、緊張の面持ちで受験番号を入力、Enterキーを押すと「合格」の文字がはっきりと見えた。

「やった! 受かった!」

 Aくんは思わずガッツポーズ、念願の特進クラス合格を果たしたのだった。

 Aくんは初日から偏差値的にギリギリの第一志望を受け続けたが、家庭によっては初日に合格確率の高い学校を受け、安全を確保したうえで2日目以降に「本番」を用意することも多い。

 B子さんのケースでは、受験初日に模試でA判定が出ている学校を2つ用意して受験に挑んだ。しかし、待っていたのは予想外の苦戦だった――。

〈 「うそでしょ」偏差値10以上ゆとりがあったはずの学校でまさかの“合格逃し”に焦り…中学受験家庭の「ジェットコースターすぎる3日間」を現場ルポ 〉へ続く

(宮本 さおり)

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