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〈森友裁判〉石破首相の誕生日に「上告しないで」近畿財務局に豊中市議らが申し入れ 《赤木雅子さんはビラを配る様子を見守り…》

文春オンライン / 2025年2月5日 16時0分

〈森友裁判〉石破首相の誕生日に「上告しないで」近畿財務局に豊中市議らが申し入れ 《赤木雅子さんはビラを配る様子を見守り…》

問題の国有地には森友学園の校舎がほぼ完成している

「財務省は大阪高裁の判決に従え~、上告はするな~、文書を出せ~!」

 真冬の官庁街に訴えが響いた。

 事の始まりは大阪府豊中市の国有地だ。教育勅語を幼稚園児に朗唱させる教育で知られた森友学園がここで小学校の設立を計画した。名誉校長には時の安倍晋三首相の妻、昭恵氏が就任。森友学園の教育をSNSなどで称賛していた。財務省近畿財務局は国有地を鑑定価格から8億円以上も値引きし、1億3400万円で売り払った。

 8年前、この事実が発覚すると「首相の妻への忖度ではないか?」と国会で追及が始まる。すると安倍首相(当時)は答弁で言い切った。

「私や妻が関係していれば、総理大臣も国会議員も辞める」

 これがきっかけで財務省は取り引きの文書の改ざんを始める。安倍昭恵氏の名前はすべて消された。その時、近畿財務局で作業をさせられたのが赤木俊夫さんだ。改ざんを苦にうつ病になり、1年後、命を絶った。

「不開示決定を取り消す」と逆転勝訴を勝ち取った

 国有地巨額値引きと公文書改ざん。森友事件の真相は明らかになっていない。なぜ夫は追い詰められたのか? 妻の赤木雅子さんは財務省に関連文書の開示を請求した。事件の捜査で財務省が大阪地検特捜部に任意提出し、捜査が終わって返却された文書だ。ところが開示は認められず、文書があるかどうかすら答えてもらえない。

 そこで不開示の決定を取り消すよう求めて裁判を起こした。一審では訴えが退けられたが、今年1月30日、大阪高裁の控訴審判決では「不開示決定を取り消す」と逆転勝訴を勝ち取った。喜びに沸く傍聴席には、因縁の国有地がある地元・豊中市の木村真市議会議員の姿もあった。

 木村市議は8年前、問題発覚の端緒を開き財務省の責任を追及してきた。判決直後、法廷で雅子さんに駆け寄り「よかった~」と声をかけたが、これですべてが終わるわけではない。まずは国に上告をさせず、この勝訴判決を確定させることが大切だ。さらに判決は「不開示決定を取り消」しただけで「開示を命じた」わけではないから、黒塗りなどのない形で文書をすべて開示させることが必要だ。赤木俊夫さんが亡くなって早7年近い。これ以上長引かせるわけにはいかない。

「あるかないかも答えないって、とんでもない話です」

 判決から5日後の2月4日、木村市議は賛同する人たちとともに大阪市中央区の財務省近畿財務局を訪れた。合同庁舎1階の応接室で財務局の総務課長らと向き合って真っ先に尋ねたのは、

「まさかとは思いますが、まだ上告はしていないですよね?」

 そこを確認した上で、申入書を渡し本題に入った。

「行政文書はそもそも役所のものではありません。国民の財産ですから公開するのが原則です。それを、あるかないかも答えないって、とんでもない話です」

「だいたい任意提出した文書があることはわかりきっているんです。隠そうとするからおかしくなる。最初から開示に応じていれば、こんな裁判する必要もなかったわけです」

 上告はせず、一刻も早く文書を開示するよう求めた。これに財務局側が「私たちには権限がない。すべて上級庁である財務本省が関係各所と協議して決める」と答えると、

「建前はそうかもしれませんけど、この問題は財務省や近畿財務局の人たちがやったこととして片付けられていますよね。でたらめな土地取引を隠すために公文書の改ざんまでさせられた。政治家は誰一人責任を取らない。安倍さん(元首相)も亡くなりましたけど責任は取っていないわけです。皆さん、それでいいんですか?」

「だいたい石破首相は、首相になる前は『再調査が必要だ』って言ってたんで、首相が『出しなさいよ』と言えば済む話じゃないですか」

雅子さんが「これは夫が担当していた土地だ……」

 職員も内心そう思っているのではないか? 最後は申し入れ内容を本省に伝えるよう訴えた上で、一言。

「これ(申入書)僕らが出ていったらすぐにほかす(捨てる)んとちゃうの?」

「そんなことはございませんので」

 真剣な話にもちょこっと笑いを交えるところが、いかにも大阪人だ。

 申し入れが終わると、賛同する人たちが庁舎前で「上告はせず文書を出して」と呼びかけながらビラを配った。この冬一番の寒波に見舞われ、官庁街を吹き抜ける風で寒さがひとしお身にしみる。

 その様子を原告の赤木雅子さんが少し離れた場所から見守っていた。ちょうど職員が退庁する時間帯だ。ビラを差し出しても受け取らずに走り去る人を見ると心が痛む。庁舎前の掲示板をふと見ると、国有地の測量をするための入札公告が貼り出されている。対象となるのは千里万博公園。その地名で雅子さんは思い出した。

「これは夫が担当していた土地だ……」

 元気なら名前が書かれていたかもしれない。そう思うと切ないが一方で、真相を明らかにするため上告断念を求める活動は心強い。訴えが終わると雅子さんは参加者に「寒い中ありがとうございました」とお礼を伝えた。

 奇しくも、2月4日は石破首相の誕生日。68歳になった首相は木村市議らの申し入れを、そして雅子さんから届く切なる想いをどう受け止めるのか。

◇◇◇

 2月5日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および2月6日(木)発売の「週刊文春」では、森友事件を取材し続けるフリー記者・相澤冬樹氏の特別寄稿『森友裁判逆転勝訴までの2522日 赤木雅子さんが語った「決断してよ、石破さん」』を掲載。国との裁判で初めて勝った赤木雅子さんの日々や胸中、そして判決当日の様子などを4ページにわたって詳しく綴っている。

(相澤 冬樹/週刊文春 2025年2月13日号)

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