岡田将生が嫌われ役に挑む理由 凶悪殺人犯役は「トンネルの中にいる感覚」
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年3月3日 8時2分
それは連続ドラマのように「演じる時間を積み重ねると、その役が自分に染み込んできて、そのキャラクターが勝手に動き出す。どんどん自由になっていく」という感覚とはまるで違うそう。「僕はどちらも好きですけど」と前置きしつつ、昨年映画化もされた宮藤官九郎脚本のドラマ「ゆとりですがなにか」(2016)を例に挙げ、「あの役は宮藤さんが僕に当て書きしてくださった大好きな役。自分と共通点があり、だからこその自由さがありました。そうした役を演じさせていただいて改めて、演じるということはとても面白い作業だと思うようになったんです」と充実した表情を見せる。
映画は思わぬ展開を遂げ、東は事件の目撃者となった少年少女と対立していくこととなる。演じる羽村、星乃、前出の撮影現場での様子についても、「どこか昔の自分を見ているような感覚でした」と岡田。それでいて3人が年齢以上にしっかりしていることにも驚かされたようで、「子どもらしい一面を見せてくれるときもあったのですが、とても集中して現場に臨んでいました。それを遠目に見ていて、自分も昔はきっとこうだったのだろうな……と。いろいろな先輩にこんなふうに見守っていただいていたんだと改めて気づき、だからこそより自由にやってほしいなと思ったんです」と過去に自身を支えてくれた先輩たちを思い返す。
そうして撮影を終えたとき、「なんかスッキリしたんですよね」という岡田。それでいて「東は共感したり、相手の言葉を聞いて変化していくキャラクターではないので、自分の感覚が鋭くなるようで」というのも不思議に思える。相手に共感し、変化していく方が感覚が研ぎ澄まされるのではないかと想像するのだが、「逆なんですよ。僕が変なんでしょうね」と苦笑い。劇中、東が子どもたちと話すシーンでも、「彼らの言うことをもちろん聞いているけど、聞いていないというか……。東には自分の中に思考の筋道があって、そこだけに意識が鋭くなっていく。誰かの言葉より、敏感に感じてしまう。バランスが悪いのでしょうが、東昇のような役は一点集中で演じます。他のことをあまり考えないので、そういう意味ではちょっとラクとも言えるかもしれません」と独特なアプローチを明かす。
それだけに完成した映画について、「今もすごく不安です」というのは意外に思える。「そう口にしてしまうのは自分の弱さでもあるのかもしれません」と前置きした上で、「面白い映画ができたという確信はあります。撮り方も、編集の仕方も、音楽も、これまでの映画にはなかなかない、とても新鮮なものに。僕自身も、東と子どもたちの心理戦、目に見えない戦いがすごく面白かったですし。ただ真に新しいと思えるものだからこそ、どの年代のどんな方々に、どんな言葉でこの作品をお伝えすればよいのだろう? というのがとても難しい。だからこの作品に関しては、観てくださった方のお話をお聞きしたい。そんなことを思っているんです」と率直な心境を明かしていた。(取材・文:浅見祥子)
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