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「光る君へ」なぜ“手”をクローズアップ?心に美しい残像を生むために~タイトルバックの裏側

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年5月31日 12時0分

 吉高由里子主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で初回から半年を経てもなお反響を呼んでいるタイトルバック。1,000年の時を超えるベストセラー小説「源氏物語」の作者・紫式部(まひろ)と、強い絆で結ばれる平安貴族社会の最高権力者・藤原道長の“手”をフィーチャーした映像が「艶めかしくも美しい」と評判だが、なぜ“手”に注目したのか? タイトルバックを企画・監督した市耒健太郎がその理由を語った。

 平安時代の貴族社会を舞台に、世界最古の女性による小説といわれる「源氏物語」を生み出した紫式部の生涯を、大河ドラマ「功名が辻」(2006)や社会現象を巻き起こした恋愛ドラマ「セカンドバージン」(2010)などの大石静によるオリジナル脚本で描く本作。タイトルバックは開く花に始まり、主人公・まひろ(吉高)、男女の手、リキッドアート、平安京、琵琶、書などで構成され、各シークエンスに「感性の芽生え」「光の霊性に触る」「人生という旅」「時空を超えて」「創造性の目覚め」「この思いは永遠に」といったテーマが設けられている。

 市耒が取り掛かったころにはまだ脚本が進んでおらず先の展開が読めない状況だった。先に冬野ユミによる音楽のデモテープが上がってきたため、それに合わせて制作を進めることとなった。「本編の内容が決まってない状態で、ある程度予測する必要がある。同時に観てくださる方の期待感は上げたいんだけど、具体性を持ちすぎてはいけない。加えて、放送されるのは日曜日の夜なので、視聴者の方が元気になる、生きる喜びを与えるようなものにしなければという思いはありました」

 市耒が目指したのは、1,000年前も1,000年後も変わらない人間の普遍的なロマンティシズムを光と触感によって映像化すること。そして、本編への「美しい暗号」として描くこと。「『光る君へ』は1,000年前の話なんですけど現代にも通ずる何かを探すのが自分の役割だと思いました」という。

 「そもそも映像とは、心に残像を生むための総合芸術です。特に今のような情報過多の時代にこそ、心に残る、深層に迫るようなクリエイティブの方が有効だと考えました」

 そこで全体を貫く普遍的なキーワードとして考えたのが「光と触感」だった。「昔は太陽光、ろうそくの光などで生活していたと思うのですが、光と触感というものは普遍的だろうと。今のような目まぐるしい時代だからこそ、恋をしたときの永遠に感じるような一瞬を描けたら、むしろ新鮮に感じてもらえるのではないかと。そこから企画、演出、美術、ライティングなどを詰めていきました。加えて、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』や世阿弥の『風姿花伝』など、日本的な美を探求してきた書物とまるで打ち合わせを進めるような感じで、詰めていきましたね」

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