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“日本中に憎まれたヒール”ダンプ松本が誕生した理由 白石和彌総監督が見た過酷なショービズの世界

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年9月22日 7時15分

 格闘シーンで意識したことは「試合と試合の間にあるストーリーと、一つ一つの試合にちゃんと意味を持たせること」。そこを丁寧に描くことで、視聴者は必然的に試合にのめり込めるという確信のもと演出を行ったという。

物語のキーとなるのはビューティ・ペア

 全5話のストーリーには登場人物の生きざまが刻まれている。なかでも、白石監督は「僕が知っている全女(全日本女子プロレス)の印象って、クラッシュ・ギャルズと極悪同盟が血で血を洗う戦いをしている印象なのですが、彼女たちは同期であり、もともとは親友だったりするんですよね」と語ると「修業時代の絆を感じられるシーンはいいなと思って撮っていました。最後まで観ると、そのシーンはやっぱり肝になっていて、自分の演出は間違っていなかったと実感できました」と自信をのぞかせる。

 最初に本企画を引き受けたとき、白石監督は「極悪同盟を結成したダンプ松本が非道の限りを尽くし、日本中から嫌われたものの、それでも強く生きていく……というストーリーになるのかなと感じていた」というが「でも話をかみ砕いていくと、松本香もそうだけれど、本当にピュアな気持ちでプロレスをやっていて、何者でもなかった少女たちがプロレスという武器を持って、厳しく生きづらい世界をいかに生き抜いていったかという青春の話になったんです」とキャラクターに深く向き合うことで、より作品がドラマチックになっていったという。

 特にこだわったのが、ダンプ松本や長与千種、ライオネス飛鳥らの憧れの存在だったビューティ・ペアだ。ジャッキー佐藤とマキ上田からなる二人の女子プロレスチームは、1970年代後半に一世を風靡した。

 白石監督は「正確にいうと松本香は違うのですが、あの世代のほとんどのレスラーはビューティ・ペアに憧れて全女に飛び込んでいる。でも、ビューティ・ペアほどの大スターでも、陰りが見えるとぞんざいに捨てられていく。ジャッキーさんの末路を見ながら“このままじゃいけない”と潜在的に危機感を覚えたんだと思う。そんなストーリーを盛り込んでいくと、『極悪女王』というタイトルや、ダンプ松本のビジュアルから想像する物語から少し違う方向の話になっていったんです」と作品に込めた思いを明かす。

松永3兄弟とダンプ松本らは「トムとジェリー」のような関係

 そんな彼女たちの陰となったのが、全女を運営する松永3兄弟(村上淳、斎藤工、黒田大輔)だ(実際は4兄弟)。白石監督は彼らの描き方にも強い思い入れがあるという。

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