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筧利夫、「踊る大捜査線」時代は誰とも話せなかった 忘れられない室井&新城の初対峙シーン

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年10月28日 7時3分

忘れられない室井&新城のシーン

 そんな筧には、忘れられないシーンがある。「歳末特別警戒スペシャル」で、室井が新城に物申しに捜査会議室を来訪したときの会話だ。「初めて室井さんと新城が対峙するところでした。僕は一連の室井さんからの言葉を全てシャットアウトするみたいな芝居をしてたんです。そうしたら、そのシーンの最後の『なあ新城、聞いてくれ』で始まっていた台詞を、『なあ新城、耳を貸せるもんなら聞いてくれ』と柳葉さんが変えてきたんです。『お、台詞を変えさせたぞ』と内心思っていました」と振り返った。

 「毎回、本当に気合入れてました」という筧からは、次々と撮影の裏話が飛び出した。「『容疑者』の最後で室井さんの胸に警察手帳をしまうシーンは、本番直前に『室井さんに微笑んでくれないかな』と君塚(良一)監督から言われたんです。本番で急に変更したので、室井さんも戸惑ったのか、反応が体感的に何秒かずれました。また、『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』の『兵隊は犠牲になってもいいのか』という台詞は何回もやり直しました。本広(克行)監督が『気が済むまでやってください』と言ってくださったので、その度に頭の中のイメージを変えて、何度もガチャン! って受話器を置いてました(笑)」

 舞台で活躍していた筧は、新城役で映像の世界にも大きなインパクトを残したが「世間的には比較的スルーだったんです」と苦笑する。「それで事務所が『筧をバラエティーで売ろう!』と思ったみたいで。幸い、最初の映画は700万人が観てくださって、紹介映像もたっぷりありましたから」。クールな新城役と陽気な筧にキャラクター性のギャップが人気を博し、「シャンプー刑事(『めちゃ×2イケてるッ!』)で爆発したんです」。以降の筧の活躍は周知の通りだ。

新城は意外に枷が多い

 「踊る大捜査線」は筧にとってどんな存在なのだろうか。「難しい質問ですね……」としばらく考えたのち、「ここまで来ると、役者のキャリアとして、無しには語れないです。役は作品の中にあるので、僕の大きな一部です。断続的とはいえ、27年もやり続ける役は、ほぼないですからね」としみじみ。

 「でも、同じ役を続けるのはそれほどイヤではありません。役者さんって世の中にたくさんいるから、1人の人が何でもやるのではなくて、ずっと同じ役で全てのドラマに出るのでもかまわないんです(笑)」と独特の持論を展開する。「ただ、新城は意外に枷が多くて自由が利かないんです。室井さんは秋田弁とかでガス抜きができますから。新城を演じ続けていると、“新城管理官”みたいな人になってしまうか、寿命が縮まるかのどちらかだと思います(笑)」

 室井と、彼を大きく変えた青島俊作(織田裕二)に撃ち抜かれ、新城が明確に室井の片腕的立ち位置になった『容疑者』から19年が経った。「年齢もある程度いくと、あまり表だってバチバチしなくなります。鬱々するものはあっても、新城は室井さんをやれる範囲で助けようとすると思います。新城は、なるべく警察機構を使って、上の人も納得させる形でうまいこと立ち回るタイプだと思います。『生き続ける者』ではその辺を新城が語っています(笑)。怒涛の展開になりますよ」とアピールしていた。(取材・文:早川あゆみ)

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