「踊る大捜査線」から27年 甲本雅裕「毎回が勝負」だった立ち番時代、“ライバル”森下への熱い思い

　12年ぶりに再始動した「踊るプロジェクト」の最新映画『室井慎次　敗れざる者』（公開中）には、27年前の連続ドラマ「踊る大捜査線」から引き続き出演している俳優たちがいる。その一人が、かつて湾岸署の立ち番警官だった緒方薫役の甲本雅裕だ。『敗れざる者』で驚きの再登場を果たした甲本が、連ドラ当時の思い出や「踊る」シリーズへの思いを語った。（以下、「踊る大捜査線」シリーズと『敗れざる者』のネタバレを一部含みます）

思い出深い青島とのシーン

　いまでこそ連ドラレギュラーや映画出演も多い甲本だが、「踊る大捜査線」初回当時は「劇団（三谷幸喜主宰『東京サンシャインボーイズ』）が充電期間に入って間もないころで、映像のレギュラーをやったことなくて。初回には出演したけど、次も出られるのか、周囲の人に認識されてるのかどうかもわからない」状態だったという。

　甲本が印象に残っているのは、連ドラ第4話「少女の涙と刑事のプライド」。青島俊作（織田裕二）ら湾岸署の刑事たちとの仲間意識を感じた瞬間だった。室井と揉めて警察手帳を投げ捨てた青島に、室井が警察手帳を拾って届けに来た後、その原因となった被疑者を緒方が連行してくるシーンだ。所轄の仲間たちが影から見守る中、被疑者の取り調べをどうするか聞く緒方に、「青島さんが『俺しかいないじゃん。俺が調べるに決まってんだろ』と言い、僕が『お願いします！』って被疑者の身柄を渡すんですけど、そこのシーンで『俺もここの一員なんだ』って実感したんですよ」と明かした。

　「緒方は設定上、強行犯係でも盗犯係でもないから、親しい部署の人もいない。だけどああいうシーンがあると、『この人と魂が通い合ったな』という瞬間が得られます。この組織の中にいて、誰かが誰かのことを思ってる中の一人なんだって思えるんです」と続けた甲本。「ドラマの中の表現もそうだし、僕自身が役者としてここに呼んでもらった意味を感じたというか。仲間に入れた気持ちになったんです」としみじみと語った。

毎回が勝負…必死だった連ドラ時代

　長くレギュラーが続いたことについては、「ただただ一生懸命だったので、冷静に語れないです。毎回が勝負だったので、落ち着いて役割とかを考えられるようになったのは『歳末特別警戒スペシャル』くらいからです」と打ち明けた。緒方はその後、盗犯係や強行犯係を行ったり来たりする。「途中、刑事にしてもらったけど、袴田課長（小野武彦）にお中元を突き返されて、出世を無かったことにされるんですよね（笑）。そこはすごく鮮明に覚えてます。そういう、面白かった思い出はいっぱいあります」