1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

人生最後の瞬間、本当に欲しいものは? 「帰るべき場所」と幸福【石井ゆかりの幸福論】

ココロニプロロ / 2019年8月25日 18時45分

成功を求め、愛を求め、仲間を求め、やりがいを求めて生きて生き続けた結果、最終的に到達する場所が、「死」です。
死ぬ時にどんな気持ちでいるか、本当に欲しいものはなんだったのか、最後の瞬間、幸福でいられるか。第4ハウスが「家」であり「死」であり「最終的な結果」であり「本心」の場所である、ということが、こう考えると、とてもしっくりくるように感じられます。第4ハウスの「家」は、日々帰る場所であると同時に、人生という旅の最終的な「帰着点」でもあるわけです。

以下は、以前noteに書いたコラムの一部を改稿したものです。「人生の終わり」が私たちにとってどんな意味を持つのか、ということについての、ある調査のお話です。

*******************

次の2つのシナリオを比べてみて下さい。


シナリオ1:
ジェンという女性がいる。ジェンには子どもがなく、独身で、30歳のある日、自動車事故で少しも苦しまずに即死する。
彼女の人生はとても幸せなもので、仕事や旅行を楽しみ、趣味もあり、友人もたくさんいた。

シナリオ2:
ジェンという女性がいる。ジェンには子どもがなく、独身で、35歳のある日、自動車事故で少しも苦しまずに即死する。
彼女の30歳までの人生はとても幸せなもので、仕事や旅行を楽しみ、趣味もあり、友人もたくさんいた。が、30歳から35歳までの最後の5年間は、そこそこ楽しいが、30歳までほどではなかった。


さて、どちらが「より幸せな人生」でしょうか。

この2つのシナリオは、心理学者エド・ディーナーによる実験の素材です。
実験の被験者は、上の2つのシナリオを読み、以下の質問に答えました。


「ジェンの人生を全体として見たとき、どのくらい好ましく感じますか?」
「ジェンが人生で経験した幸せまたは不幸せの総量はどの程度だと思いますか?」


シナリオ2は、シナリオ1に、「そこそこ楽しい5年間」を足しただけのものです。ゆえに、幸せの「総量」は、2つのシナリオで一致するはずです。
ですがなんと、被験者の回答では、シナリオ2のほうで「幸せの総量」が大幅に減らされていたのです(!)。


少しばかり幸せでない5年間を付け加えただけで、まともな人たちがジェンの人生の評価を大幅に下げるとは思っていなかった。だが私はまちがっていた。大半の人が、この5年間のせいでジェンの人生は台無しになった、という直感的な判断を下したのである。
- ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』(ハヤカワノンフィクション文庫)より


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください