人生最後の瞬間、本当に欲しいものは? 「帰るべき場所」と幸福【石井ゆかりの幸福論】
ココロニプロロ / 2019年8月25日 18時45分
*******************
「最後の瞬間に、幸福でいられるかどうか」。
このことは、多くの人にとって人生全体の価値を左右する、大問題であるらしいのです。
多くのドラマや物語にも、そのことはよく表れています。たとえば前掲書では、オペラの『椿姫』が例に挙げられています。
高級娼婦ヴィオレッタと青年貴族のアルフレードは恋に落ちますが、アルフレードの父はヴィオレッタに別れるよう要請し、ヴィオレッタは恋人を思って身を引きます。事情を知らないアルフレードは激怒しますが、最後には事情がわかり、彼女のもとに駆けつけます。ヴィオレッタは病で死の床にありましたが、死の直前に最愛の人に再会が叶ったのでした。
この物語は「ハッピーエンド」であり、最後に恋人の腕の中で死んでいけたヴィオレッタの生涯は「幸福だった」と感じる人が多いのだと言います。
ヴィオレッタの人生を冷静に客観的に考えると、全体としてはかなり辛いものだったろうと思われるのです。娼婦として不名誉を背負って生きざるを得ない苦労、最愛の人と引き裂かれる苦悩、若くして病に倒れた苦しみなど、あまりいいところがありません。ですが、この物語に触れた人の多くが、最後のただ一瞬の逢瀬によって、彼女の人生の全体が光に照らされ、「彼女は幸福だった」と感じるのです。
このオペラの原作小説、小デュマの『椿姫』では、エンディングが大きく異なります。ヒロインの高級娼婦マルグリットと青年貴族アルマンがその仲を引き裂かれるまでは同じですが、アルマンはマルグリットの死に際に間に合わないのです。マルグリットの生きている間には誤解の解けぬまま、二人は死に別れてしまうのです。こちらはまったくの「バッド・エンド」です。死に際の一時間が幸福だったかどうか、それだけで物語全体の印象が大きく変わってしまうのです。
これは「物語の印象」だけの問題ではないのかもしれません。私たちの多くが抱く「人生観」と直結しているのかもしれません。すなわち「死に際が幸福な人生こそが、真に幸福な人生と言える」という人生観です。
※ヴィオレッタ(オペラ版)=マルグリット(原作小説版)
アルフレード(オペラ版)=アルマン(原作小説版)
>>次回:4. 「帰るべき場所」と幸福(後編)(9月25日更新)
プロフィール
石井ゆかり
ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆、「12星座シリーズ」(WAVE出版)は120万部のベストセラーに。Twitterのフォロワー数は30万を越える。著書多数。
公式モバイルサイト
「石井ゆかりの星読み」
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
池松壮亮「アフターコロナにどこに向かうか」4年前出会った「本心」映画化熱望し石井監督に提案
日刊スポーツ / 2024年10月10日 19時9分
-
池松壮亮主演『本心』主人公はVFゴーグルで何を見たのか…最新ロング予告解禁
cinemacafe.net / 2024年10月8日 8時15分
-
池松壮亮主演『本心』物語の全ぼうが明らかに――最新ロング予告解禁
クランクイン! / 2024年10月8日 8時0分
-
池松壮亮主演、映画『本心』物語の輪郭が浮き彫りになる最新ロング予告映像
ORICON NEWS / 2024年10月8日 8時0分
-
【著者累計520万部超】石井ゆかりの占い本、9月27日 一気に発売! 文庫 「星栞 2025年の星占い」(12星座別)、手帳 「星ダイアリー2025」
PR TIMES / 2024年9月28日 11時40分
ランキング
-
1ワークマンとGUの「2000円台パンプス」を徹底比較!1時間履いて歩いてみると違いは歴然
女子SPA! / 2024年10月19日 15時46分
-
2ガストとサイゼ、「ファミレス衰退」での戦略の違い ちょい飲みに適応と、ファストカジュアルへの移行
東洋経済オンライン / 2024年10月19日 8時30分
-
3「びっくりドンキー」モーニング“おかわり無料”コーヒー 本格的でおいしい“納得のワケ”と低価格の“秘訣”
オトナンサー / 2024年10月19日 7時10分
-
4「80歳で20本の歯を残そう」8020運動の“意外な落とし穴”。表彰されたのに「食べ物が噛めない」
日刊SPA! / 2024年10月19日 15時54分
-
5ヒロイン死亡で唖然…『ウルトラマンレオ』視聴者に衝撃を与えたトラウマ展開
マグミクス / 2024年10月19日 8時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください