「おばさんとして生きていくことを受け入れられない」雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第30回
ココロニプロロ / 2015年12月17日 11時30分
まず、どうして「おばさん」になること、「いいトシ」であることを受け入れなくてはならないのでしょうか。答えはひとつですよね。「みっともない人になりたくない」。いつまでも若作りしてるとか、美人のつもりで気取ってるとか、若い子に張り合って見苦しいとか、そういうことを言われたくないし、痛いおばさんになりたくない。ただでさえ自信をなくしているのに、さらに人からなんか言われてダメージを負いたくないですよね。
「いつかは男性に振り向かれなくなる」。私はそのことを、かなり前から恐れていたように思います。10代、20代前半の頃はそもそも振り向かれることがなかったので、「このまま誰にも振り向かれないまま死んでいくのでは」という恐怖があり、少しは振り向かれるようになってからは「30歳を過ぎたらこんなこともなくなるのでは?」などと考えては、「今のうちに謳歌しておかないと、あとで『あのときもっとチヤホヤされておけばよかった』と後悔するんじゃないか」と思ったりしていました。
相手のことが好きとか嫌いとかの問題では、まったくなかったです。ただ、自分がまだ恋愛やセックスの市場で通用するのかを怯えながら確かめ、自分を査定に出していただけでした。自信がつくと、自分なりに装うことやメイクが楽しくなる部分もあったのに、「もしかしてこういうの、男受け悪いんじゃない?」とときどき怯えた気持ちになっては、化粧品のカウンターに駆け込み「顔色が良く見えて無難なピンクベージュのグロスください!」と叫び出す始末でした。これ、今年の話ですね……。
ただ、加齢ということと、モテということは、近いけれどそれなりに違うことでもあります。佐野洋子さんのエッセイに、老人ばかりの集まりなのに一人だけめちゃくちゃモテている女がいる、という話が出てきます。彼女は真っ赤なワンピースとか着ていて、彼女が集まりにやって来ると、男たちが「俺が送る」「いや俺が送る」とささやかな争いを繰り広げるのだそうです。
あと、私は仕事柄、熟女と呼ばれるAVの女優さんに取材することも多いですが、「なんで私とたいして年齢変わらないのに、こんなに色気があるわけ?」と神様の胸ぐらをつかんでゆさぶりたくなるときがあります。すごいかわいいとか、美人だとか、胸が大きいとか、それらの要素もプロのAV女優さんですからもちろんあるんですけど、そこじゃないんですよね。雰囲気なんです。話してるとき、インタビュー中なのに「ああ、もう訊かなきゃいけないことを訊くのやめて、ただこの人とのんびりした時間を過ごしたい……」って思っちゃうことがあるんです。
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