メルセデス・ベンツEQS SUV試乗記・評価 デカくて重いが、上質感極まる快適性
CORISM / 2023年8月18日 12時12分
全長5m超、全幅2m超。とにかくデカい!
メルセデス・ベンツがカーボンニュートラルに向けて送り出したBEV(バッテリー電気自動車)の専用ブランドがEQシリーズだ。積極的にバリエーションを拡大し、EQCから数えて7作目になるのが「EQS SUV」である。
先行デビューしたフラッグシップのEQS(4ドアセダン)のSUV版と言えば分かりやすいだろう。EQS一族だから、同じテイストのブラックグリルパネルと一体にデザインしたフルLEDヘッドライトを採用し、プラットフォームもEV専用の「EVA2」を受け継いでいる。
間近に見るEQS SUVはかなり大柄に見えた。全長は5135㎜、ホイールベースは3210㎜もある。全幅は2mの大台を超え、なんと2035㎜だ。長い全長だから全高が1725㎜でも背が高いように見えない。案の定、公共の駐車場に停めると、隣のクルマがグッと近いように思われた。
EQS SUVは、ヨーロッパでは2列シートの5人乗り仕様が用意されている。だが、日本向けのEQS SUVは3列シートの7人乗り仕様だけの設定だ。駆動方式も、前後にモーターを配した「4マチック」と名付けられた4WDだけが輸入される。
800Nm!? って・・・、中型トラック並みの最大トルク
ステアリングを握ったのは、ベースモデルのEQS450 4マチックSUVだ。モーターのシステム最大出力265kW(360ps)、システム最大トルク800N・mを発生する。
ちなみに、フロントモーターは88kW(120ps)、リアモーターは178kW(243ps)のスペックだ。最大トルクは8Lクラスのガソリンエンジンと同等なのだから恐れ入る。内燃機関では実現が難しい数値だ。上級のEQS580 4マチックSUVスポーツは、さらにその上を行く。システム最高出力は400kW(544ps)、システム最大トルク858N・mとなっている。
メルセデスらしいジェントルな走り
ドライブモードは「エコ」、「コンフォート」、「スポーツ」に加え、「インディビデュアル」の4モード設定。
「エコ」モードでも不満のない走りを披露するが、守備範囲が広く、ストレスのない加速を見せるのは「コンフォート」である。まずはコンフォートモードで走り出した。アクセルを踏み込むと、モーターは低回転から十分なパワーとトルクを発生する。余裕ある加速を見せるが、猛々しさは感じない。なぜなら車両重量が2880kgもあるからだ。
だが、モーターならではの鋭いレスポンスと、瞬時にパワーが立ち上がるから非力と感じない。それでも不満と感じるならスポーツモードを選べば、冴えた加速を披露する。
しかも、シームレスな加速フィールだし、静粛性も群を抜いて高い。高速走行でもCd=0.26の優秀なエアロダイナミクスを武器に、高級SUVにふさわしい快適性を見せつけた。高速走行では上手にコースティングし、電費を稼ぐ効果も感じ取れる。
ユーザーの好みで走行モード(ダイナミックセレクト)を変えることができるし、ステアリングに装備されているパドルシフトを使えば回生ブレーキの強弱を調整することが可能だ。
また、「オート」モードのインテリジェント回生もあり、これを選ぶと先行車との距離を自動で保つだけでなく、停止まで回生ブレーキを使って自動で速度を調整してくれる。これは重宝した。
EV乗りの多くが好むワンペダルドライブモードもあるが、中央にあるディスプレイ・モニターのMBUXを使って設定する方式なのは、少し残念だ。
快適な乗り心地を支えるエアサス
サスペンションは、フロントが4リンク式のダブルウイッシュボーン、リアはマルチリンクの組み合わせである。ただし、上質な乗り心地を実現するために連続可変ダンピングシステムのADS+を組み合わせたエアサスペンションとした。
もちろん、セルフレベリング機構を備え、乗車人数や荷物の重さに関わらず地上高を一定に保ってくれる。
また、ドライブモードで特筆したいのは「オフロード」モードが加わっていることだ。このモードでは挙動安定制御のESPを解除することもできる。砂地などでは重宝するだろう。
Bセグコンパクトカー並み! 驚愕の最小回転半径5.1m!
大柄なボディの弱点をカバーするためにEQS 4マチックSUVでは後輪操舵のリアアクスルステア機能を装備している。リアタイヤが最大10度の切れ角を持つ4WSで、最小回転半径はなんと5.1mだ。全長5m超のロングボディなのに、驚愕の小回り性能を得ている。
駐車場からの出し入れやUターンでは威力を発揮。住宅地の狭い道路は苦手だが、幹線道路では大きさを持て余すことがない。アップライトパッケージで見晴らしがいいし、見て分かるほどリアタイヤが切れる4WSだから駐車も無理なくこなす。
ただし、全幅は2mを超えているから、首都高速のETCゲートと駐車場の出入りゲートではちょっとドキドキした。
落ち着いた挙動のハンドリング
ハンドリングは素直で、コントロールしやすい。モーター同様に、サスペンションの制御も緻密だ。プレミアムSUVだから滑らかな加速と落ち着いた挙動に終始し、舵の動きも落ち着いていて気忙しくない。
それでいて、コーナリング時には粘り腰を見せる。荒れた路面のいなし方も上手だ。だが、背が高いし、重いこともあり、小さなコーナーを速いスピードで駆け抜けたときには上屋の揺れと動きを意識させられた。
また、急ブレーキング時のボディの動きもそれなりに大きく感じられる。その代わり、乗り心地はとても上質だ。
航続距離は589㎞! 実平均電費は5㎞/kWhを超え
リチウムイオンバッテリーは、フラットなフロアの下に敷き詰められている。その容量は108.7kwhだ。WLTCモードでの航続距離は試乗したEQS450 4マチックSUVが593km、上級グレードのEQS580 4マチックSUVスポーツが589kmと発表されている。
高速道路で流れに乗って、ていねいな運転をすると実平均電費は5㎞/kWhを超えた。積極的に走っても400km以上の航続距離は確保できそうだ。150kWの急速充電器にも対応しているから、充電時間も短くて済むだろう。150kWの充電器を使えば、残量10%の状態から30分で58%に、そして80%までは49分の計算である。
GLSより買い得感あり!? 戦略的な価格設定
キャビンは2列目シートまでなら満足できる広さを確保していた。2列目は足もとだけでなく頭上も余裕があり、シートの出来もいいからリラックスしてロングドライブを楽しめる。
3列目シートも実用になる広さと快適性を確保した。レッグルームとヘッドクリアランスは、大人でも不満を感じさせない広さだ。ラゲッジルームも満足できる広さだった。だが、乗り降りにはちょっと慣れとコツを必要とする。
だが、ミニバン的に使うことができ、いざというときには重宝するはずだ。EQS450 4マチックSUVの販売価格は1542万円。GLSと比べてもお買い得な価格設定だ。補助金や優遇税制などもあるし、4WDだから買い得感はかなり高いように感じられる。
<レポート:片岡英明>
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メルセデス・ベンツEQS SUV価格
・EQS 450 4MATIC SUV 15,420,000円
・EQS 580 4MATIC SUV Sports 19,990,000円
メルセデス・ベンツEQS SUVの電費、ボディサイズなど諸元表
代表グレード EQS 450 4MATIC SUV
ボディサイズ 全長×全幅×全高[mm]: 5,130x2,035x1,725
ホイールベース[mm]: 3,210
最低地上高[mm]: 175
最小回転半径[m]: 5.1
車両重量[kg]: 2,880
トランク容量[L]: 195-2,020
システム最高出力[kw(ps)]:265(360)
システム最大トルク[N・m(kg-m)]:800
フロントモーター最高出力[kw(ps)]:88
フロントモーター最大トルク[N・m(kg-m)]:260
リヤモーター最高出力[kw(ps)]:178
リヤモーター最大トルク[N・m(kg-m)]:540
駆動方式:4WD
一充電走行距離WLTCモード[km]: 593
電費[㎞/Wh]: 221 (5.5㎞/kWh)
バッテリー 種類:リチウムイオン
総容量[kWh]: 107.8
サスペンション前/後:4リンク/マルチリンク
タイヤサイズ前後:265/50R20
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