BMW i7試乗記・評価 2つの顔を持つ電気自動車のフラッグシップセダン
CORISM / 2024年2月23日 12時12分
BMWは電気自動車に積極的!?
2022年4月にBMWのフラッグシップセダンである7シリーズが発表された。その後、やや遅れて7月にBEV(バッテリー電気自動車)の新型i7が投入されている。今回試乗したのは、BEVのi7だ。
BMWは、BEVに積極的に取り組んでいる。2014年に画期的なBEVだったi3を投入後、続々と新型BEVを発売した。現在の日本マーケットで、最も豊富なBEVラインナップをもつメーカーのひとつとなっている。
BMWのBEVラインナップには、大きな特徴がある。iXといったBEV専用モデルも用意しつつも、既存の内燃機関搭載車と共通化されたモデルを多く持っていることだ。
例えば、iX1はX1がベースとなっている。i4は4シリーズグランクーペをベースとしたBEVだ。このように、既存の内燃機関車とベースを共通化することで、より早く、ローコストでBEV化している。i7も同様に、パワーユニットなどを除くと、ほぼ7シリーズと同じだ。
激変したデザイン
7代目となるG70型7シリーズの外観デザインを初めて見た時は、少々混乱したのを覚えている。従来の7シリーズの面影が一切なく、まったく異なるモデルのように見えたからだ。これほど激変するのは、7シリーズの中で初めてのことのように思える。
その最たるものがフロントフェイスだ。i4の流れを受け、キドニーグリルは縦長で大型タイプとなった。夜間になると、キドニーグリルがライトアップされる。「アイコニックグロー」と呼ばれ、ライトアップにより車体が浮かび上がる。ひと目でi7と分かる機能だ。
超薄型のスワロフスキー製クリスタルヘッドライトは、フェイスサイドの上部に設置されている。睨みの効いたフェイスにまとめた印象だ。とにかく大きな顔で、圧倒的な存在感をアピールしている。
強烈なフロントフェイスに対して、リヤビューは意外とコンサバだ。BMW特有の水平基調とL字型リヤコンビネーションライトを採用している。
高級感のあるラグジュアリーなインテリア
インテリアの豪華さと数々の先進装備には驚いた。インパネは、BMWでは見たことのないようなデザインだ。大きくえぐれたインパネ部分に、大型の12.3インチメーターパネルと、14.9インチコントロールディスプレイが設置されている。ドライバーに向けて湾曲させ、視認性を高めたカーブドディスプレイだ。
コクピット周りは最低限のスイッチ類のみとし、スッキリとしている。クリスタルを多用していたり、メタル調のドアトリムなどが加わっていたりと、煌びやかだ。
ルーフを見ると開放感がある。先代モデルに比べ、約40%ガラス面積を増やしたパノラマガラスサンルーフを標準装備しているからだ。後席まで届くスカイルーフをオプション装備すると、さらに明るく、開放的な空間になる。
トレンドを上手く捉えていたのが、左右のリヤドアに設置された操作系パネルだ。デザインは、スマートフォンのようで、タッチ操作が可能だ。シートのリクライニングなど様々な操作が可能となっている。
後席が映画館のようになる「BMWシアタースクリーン」を搭載
新型i7に搭載された世界初の「BMWシアタースクリーン」は、後席がプライベートシアターになる機能だ。BMWシアタースクリーンには、下記の機能が搭載されている。
- Amazon Fire TV
- 8K対応の31インチのタッチスクリーンディスプレイ
- Bowers & Wilkinsのサラウンドサウンドシステム
- オプションで装備可能なシート内のサブウーファー
- ドアのコントロールパネル「タッチスクリーンリモート(BMWタッチ・コマンド)」
- 自動で後部座席のシェードが閉じるシステム
新型i7は、BEVなので静粛性の高さは折り紙つきだ。そのため、臨場感に包まれ、映像に引き込まれていく。自分のいる場所が、クルマの後席なのか?と、思うほどだ。映画好きであれば、この機能だけで新型i7を購入したくなるだろう。
新型i7は「すべて」が自動ドア
新型i7の自動ドアは、タクシーを連想させる。タクシーは左後部だけだが、新型i7はすべてのドアが自動で開閉可能だ。センサーにより、狭いスペースでも、適切なドアの開放角度を保持する。「至れり尽くせり」とはこのことだ。
さらに大きくなったボディサイズ
新型i7のデザインと装備は、7シリーズを疑うほどの変貌ぶりだ。ボディサイズは、全長5,390mm×全幅1,950mm×全高1,545mm。先代の750Li(全長5,265mm×全幅1,900mm×全高1,485mm)と比べて、全長+125mm、全幅+50mm、全高+60mmほど大きくなっている。
イメージとしては、同じグループのロールスロイスに近い。豪華な装備の数々を見ると、新型i7はドライバーズカーというより、ショーファードリブンになった印象が強い。
745Nm! 怒涛の加速力と快適な室内
新型BMW i7は、前後にモーターを設置した4WDを採用している。システム最高出力は544ps、システム最大トルクは745Nmと十分過ぎるスペックである。0-100km/h加速は、僅か4.7秒(欧州仕様車)とかなり俊足だ。なお、BMWのスポーツモデルであるM4クーペの0-100㎞/h加速が4.2秒だ。
新型i7の加速力は、並みのスポーツカー以上ということになる。
ハイスペックということもあり、期待に身を震わせながら、アクセルを踏み込んだ。すると、一瞬にして頭が後方に引っ張られた。ハイパフォーマンス系のBEVを運転するのは初めてではないため、ある程度は予想できたが、想像を遥かに超えていた。
瞬時に最大トルクを発揮するBEVならではの強烈な加速Gを全身で感じるものの、室内は異様なほど静かだ。かすかにロードノイズが聞こえるくらいである。見事なくらい、遮音されている。
乗り心地は、とても快適だ。サスペンションは、エアサスでフロントがダブルウィッシュボーンだ。リアがマルチリンクとなっている。
BMWらしくないフットワーク?
走行中に気になったのは「BMWらしくない」走りだ。BMWといえば「硬めの足」という印象がある。しかし、新型i7のフットワークは、ふわふわしている。ショーファードリブン化したこともあり、後席の乗り心地重視につくられているのだろう。そう思いながら、BMWらしさを期待しつつ、スポーツモードを選択した。
その瞬間、サスペンションはギュッと引き締まり、「BMWらしくない」走りが消えた。いつものBMWらしいフットワークとなったのだ。しなやかさを維持したまま、クルマの揺れをしっかり抑え込んでいる。
さらに、ハンドリングは激変した。ノーマル状態の少し緩やかなハンドリングから、キレ味が増し、スポーティさが際立った。フロントノーズもより軽く感じた。全長5,390mm、車重2,690㎏というとても大きく、凄く重い車体なのに軽快だ。さらに、BEVならではの低重心さを生かし、カーブではビタっと路面に張り付いているかのごとく安定している。
スポーティな走りは、大きく重い駆動用のリチウムイオンバッテリーの積載位置が大きく影響している。BEVのほとんどがバッテリーを床下に配置する。このため、重心が低くなっているのだ。
新型i7は4WDということもあり、安心してアクセルを踏むことができる。しかし、車重がとても重いので一旦滑り出したら、車体をコントロールするのは非常に困難。無理は禁物だ。
この新型i7、ショーファーカーとスポーツセダンという2面性をもったモデルだった。
650㎞という十分な航続距離
駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は、105.7kWhだ。大容量リチウムイオンバッテリーを使い、650㎞(WLTCモード)という航続距離を誇る。航続距離が長いか短いかは、人により評価が異なるが、実航続距離が550㎞だとしても、一般的な使い方であれば十分だ。
BMW i7試乗記をcar-topicsで見る
気になる実電費は?
さて、気になるのは実電費。首都高速を中心に走った結果、5.4㎞/kWhという結果となった。この電費だと約570㎞の実航続距離ということになる。参考値だが、80㎞/h位の速度で流して走れば、6.0㎞/kWhに近い実電費が出そうな印象だ。
新型i7は高速道路で電費が伸びるタイプ。BMWのBEVは、総じて街中より高速道路での電費が伸びる制御になっているようだ。高速道路での移動が多い人には、ピッタリな仕様といえる。
充電時間は、自宅で6.4kWのBMWウォールボックス(200V/32A)を利用すれば、約17時間で、充電開始時0%の状態から100%まで充電することが可能だ。急速充電(CHAdeMO)においては、90kW充電器であれば、約60分で充電開始時0%の状態から約80%までの充電が完了する。10分の急速充電で、航続可能距離を最大約80km程度伸ばすことができる。
今後、主流になると思われる最新の150kW急速充電器利用では、約50分で充電開始時0%の状態から約80%までの充電が完了する。
<レポート:大岡智彦>
BMW i7試乗記をcar-topicsで見る
BMWのBEV特集
BMW i4試乗記・評価 実電費は?
BMW動画・新車情報・試乗評価一覧
SUV動画・新車情報・試乗評価一覧
電気自動車新車情報・試乗評価一覧
ドイツ車新車情報・試乗評価一覧
BMW i7価格
・i7 eDrive50 Excellence 15,980,000円
・i7 eDrive50 M Sport 15,980,000円
・i7 xDrive60 Excellence 17,480,000円
・i7 xDrive60 M Sport 17,480,000円
・i7 M70 xDrive 21,980,000円
BMW i7電費、航続距離、ボディサイズなどのスペック
代表グレード | BMW i7 xDrive60 M Sport |
ボディサイズ[mm] | 全長5,390mm×全幅1,950mm×全高1,545mm |
ホイールベース[mm] | 3,215mm |
最低地上高[mm] | 136mm |
最小回転半径[m] | 6.2m |
車両重量[kg] | 2,690kg |
フロントモーター最高出力[kw(ps)] | 190kw(258ps) |
リヤモーター最高出力[kw(ps)] | 230kw(313ps) |
フロントモーター最大トルク[N・m(kg-m)] | 365N・m(37.2kg-m) |
システム最高出力[kw(ps)] | 400kw(544ps) |
システム最大トルク[N・m(kg-m)] | 745N・m(76.0kg-m) |
駆動方式 | 4WD |
一充電走行距離WLTCモード[km] | 650km |
電費[㎞/kWh] | 141(約6.2㎞/kWh) |
バッテリー種類 | リチウムイオン |
総容量[kWh] | 105.7kWh |
サスペンション前/後 | ダブルウィッシュボーン(エアスプリング)/マルチリンク(エアスプリング) |
タイヤサイズ前後 | 前255/45R20 後285/40R20 |
トランクルーム容量[L] | 500L |
この記事に関連するニュース
-
ついにグリルが光る!BMW『iX』初の大幅改良へ、パワーも飛距離も大刷新
レスポンス / 2024年5月6日 17時0分
-
日産「新型マーチ」まもなく登場!? “丸目”ライトが超オシャレ! 日本市場“復活”期待の「新型コンパクト」どんなクルマになる?
くるまのニュース / 2024年4月23日 10時10分
-
小さくても「ボルボらしい」とEX30に思う妙技 ついに発売「ヤリスクロス」サイズの小型BEV
東洋経済オンライン / 2024年4月19日 11時20分
-
トヨタ新型「“9人乗り”ミニバン」発表! 全長4.4m級から選べる「超静音モデル」! 精悍顔の「新プロエース」に反響も…約643万円から英に登場
くるまのニュース / 2024年4月17日 19時10分
-
電動SUV、メルセデスベンツ『EQA』改良新型を発売…航続591km
レスポンス / 2024年4月12日 7時0分
ランキング
-
1「産休クッキー」に「お子が熱」。なぜ批判は、会社の構造ではなく“子持ち様”に向いてしまうのか
オールアバウト / 2024年5月8日 21時5分
-
2【実食レビュー】セブンイレブン、お値段そのまま「人気商品増量フェア」増量の具かぞえてみた - 2倍量、3倍量の“こんもり”盛り付けにテンション上がるぅ!
マイナビニュース / 2024年5月8日 16時16分
-
3SNS激怒「常識分からんのか」…相次ぐ「ホテルの備品持ち帰り」被害に弁護士「窃盗です」 どんな罰則がある?
オトナンサー / 2024年5月9日 7時10分
-
4「スナップえんどう」の筋取りが、お家にあるアレを使うだけで簡単キレイに!驚きのアイデアに「目からウロコ」「見ていて気持ち良いー!」
まいどなニュース / 2024年5月6日 15時45分
-
5すき家、14日から復活する“人気メニュー”が話題に 「復刻まじか」「通常メニューにして…」
Sirabee / 2024年5月9日 4時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください