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クラシック音楽を世界で一番“気軽に” 楽しむ音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024」の楽しみ方

CREA WEB / 2024年3月22日 7時0分


©teamMiura

 世界最大級のクラシック音楽祭と言われる「ラ・フォル・ジュルネ」。日本では2005年から開催され、“推し”の作曲家や演奏家のコンサートを気軽に楽しめるようになりました。

 今年の「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024(以降、LFJ2024)」は、東京国際フォーラムで5月3日~5日の3日間、5つのホールで90公演が開催されます。

「ラ・フォル・ジュルネ」の創始者であり、世界各地で年間約1500もの公演を手掛ける音楽プロデューサーのルネ・マルタンさんに、コンサートの楽しみ方を伺いました。

「U2」のライブのような熱狂をクラシックにも


ルネ・マルタンさん。

――どんなことがきっかけとなって「ラ・フォル・ジュルネ」という音楽祭を企画されたのですか?

 私がクラシック音楽と出会ったのは、20歳の時。スヴャトスラフ・リヒテルのピアノコンサートを聴きに行き、彼の演奏に衝撃を受けました。その後、経営について学び、音楽の道を歩むことに。南仏で行われるピアノフェスティバル「ラ・ロック・ダンテロン」を手がけ、今では世界最大級に成長しました。

 幼少期はクラシック音楽一辺倒ではなく、ジャズやロックの曲も好きでした。1993年にフランス・ナントのサッカースタジアムで「U2」のライブで3万5000人もの若い聴衆が魅了されている姿を目にし、「どうして若者は同じようにクラシックに熱狂しないのか?」と自問自答しました。


©teamMiura

 その結果、若い世代の人たちが、ベートーヴェンやシューベルトの曲と出会う機会がないことに気づいたんです。若者層がクラシック音楽と出会うきっかけをつくらなければならない、その思いで「ラ・フォル・ジュルネ」のコンセプトが生まれました。

 演奏は45分という短い時間、チケットはお手頃な価格という条件で、皆が気安く来られるようにしたい――1995年にナントで開催した「ラ・フォル・ジュルネ」は、それらを実現したことで、クラシックコンサートの概念を打ち破って大成功を収めました。その後、2000年にポルトガル・リスボン、2005年に日本と開催地が拡大されていきました。

完璧なものに触れると、人生は大きく変わる


ルネ・マルタンさん。

――クラシック音楽と、生の演奏を聴くことの素晴らしさについて教えてください。

 クラシック音楽は、純粋なまでのむき出しの感情でありつつ、非常に洗練されているものだと思います。

 以前、クリスチャン・ディオールのメゾンでコンサートをオーガナイズすることがありました。ディオールのドレスを目にした時、“完璧だ”と思うのと同時に、モーツァルトやベートーヴェンの作品にも同様の完成度の高さを感じました。そういう完璧なものに触れると、人の人生は大きく変わります。天から降ってきたような心を揺さぶるハーモニーに身を置くというのは、奇跡のように素晴らしいことなのです。

 しかも生演奏であれば、音の響きを体が直に感じることができることができます。音を浴びるという感覚でしょうか。同じ曲を同じ人が演奏しても、スピーカーなどの音と生の音ではまったく違うものです。それを「ラ・フォル・ジュルネ」で体感していただきたいです。


©teamMiura

次世代を担う天才ピアニストに注目!

 今回のテーマは「ORIGINES(オリジン)―すべてはここからはじまった」。音楽の起源、ルーツに立ち帰ることを意味するテーマを通して音楽の伝統にスポットライトを当て、充実した内容の公演が数多く上演される。


©teamMiura

――3日間で行われるコンサートのなかでもおすすめのプログラムは?

 私たちは知名度の高さよりも、輝かしい未来を待ち受けているような若手のアーティストを選ぶようにしていますから、「LFJ2024」は若き才能を発掘できる場でもあります。「CREA」の読者の方と同世代の4人のアーティストが演奏するコンサートはいかがでしょうか。

唯一無二の天才ピアニスト、マリー=アンジュ・グッチ


Marie-Ange Nguci(マリー=アンジュ・グッチ)©︎Caroline Doutre

 とても聡明で、音楽性も素晴らしく、ピアノでは最も才能を持っているのではないでしょうか。1997年、アルバニア生まれで、13歳でパリ国立高等音楽院のピアノ科に飛び級入学し、16歳で最優秀の成績で修士課程を卒業し、同音楽院の博士課程、さらにソルボンヌ大学の修士課程で研鑽を積むというありえないほどの経歴を持つ頭脳明晰な方なので、ヨーロッパの音楽界から注目を浴びている屈指のピアニストです。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」を演奏していただくのですが、とてもロマンティックな曲なので楽しんでいただけると思います。

公演番号:212(ホールA) 演奏曲:ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op.30」

音楽一家出身の才媛、リヤ・ペトロヴァ(ヴァイオリン)


Liya Petrova(リヤ・ペトロヴァ)©︎Simon Fowler

 ブルガリアの音楽家の家庭に生まれ、4歳からヴァイオリンを始め、その後ブリュッセルのエリザベート王妃音楽院やベルリンのハンス・アイスラー音楽大学などで研鑽を積んで、2016年にはデンマークのカール・ニールセン国際コンクールで優勝した実力の持ち主です。使用している楽器もストラディバリウスの弟子カルロ・ベルゴンツィが1735年にクレモナで製作した「ヘリオス」が貸与されています。素晴らしい楽器の音色で魅了してくれます。

公演番号:214(ホールA) 演奏曲:ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61」

衣装デザインも手がける多才な表現者、ヴァランティーヌ・ミショー(ソプラノ・サクソフォーン)


Valentine Michaud(ヴァランティーヌ・ミショー)©︎Gabrielle Besenval

 類い稀な才能を持つサクソフォーン奏者です。オートクチュールが好きで、自身の衣装も自らデザインしています。表現手段を選ばない人で、今回はスウェーデンの作曲家による現代音楽を演奏するのですが、「ピーコック・テールズ(孔雀物語)」という曲を演奏します。ほかにも弟のガブリエル・ミショーのパーカッションとのデュオのプログラムでは、鳥をテーマにした様々な作品を演奏します。一つの専門性だけではなく、多岐にわたる興味を表現するところが聴き手の視野も広げてくれるのではないでしょうか。

公演番号:223(ホールC) 演奏曲:ヒルボリ「ピーコック・テールズ(孔雀物語)―ソプラノ・サクソフォーンとオーケストラによるミレニアム版」、公演番号:147(G409) 公演概要:〈天国の鳥たち〉、公演番号:246(G409) 公演概要:〈天国の鳥たち〉

異なるジャンルを経て出会った奇跡のアンサンブル、レ・イティネラント(ア・カペラ・トリオ)


Les Itinerantes(レ・イティネラント)©︎IsabelleBANCO

 ミュージカルのワークショップで出会った3人の女性歌手で結成した「ア・カペラ」のアンサンブルです。マノン・クザン、エロディ・ポン、ポーリーヌ・ラングロワ・ド・スヴァルテ、エロディの美しい三重唱とパーカッションが神秘的なステージを繰り広げると思います。彼女達は11の音楽スタイル、9世紀にわたる40の異なる言語をレパートリーにし、大成功を収めました。今回のLFJ2024のテーマと同じ「ORIGINES~オリジン~」というアルバムも発表し、起源というものを掘り下げていて、コンサートも〈オリジン〉と題しています。

公演番号:136(ホールD7) 公演概要:〈オリジン〉、公演番号:347(G409) 公演概要:〈オリジン〉

日本人の注目アーティストは、亀井聖矢(ピアノ)と辻 彩奈(ヴァイオリン)

――ぜひ聴くべき日本人のアーティストも教えていただけますか?

 2022年のロン=ティボー国際コンクールで、サン=サーンスのピアノ協奏曲の第5番を演奏して第一位、評論家賞、聴衆賞に輝いた亀井聖矢さんと2016年のモントリオール国際音楽コンクールで第一位に選ばれた辻 彩奈さんをオススメします。お二人とも日本のクラシック音楽界の未来を担うために素晴らしいキャリアを築いていく方々だと思います。

亀井聖矢(ピアノ)


Masatya Kamei(亀井聖矢)©︎Yuji Ueno

公演番号:115(ホールA) 演奏曲:チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23」

辻 彩奈(ヴァイオリン)


Ayana Tsuji(辻 彩奈)©︎Makoto Kamiya

公演番号:113(ホールA) 演奏曲:メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64」

――初めて聴く演奏家や楽曲が演奏されるコンサートに行く前に予習することはできますか?

「Apple Music」でLFJ2024のプレイリストを配信していますので、私のオススメやテーマに知られざる名曲など、演奏予定曲を事前に聴いておけば、さらにコンサートを楽しむことができると思います。ぜひお試しください。

ルネ・マルタン

フランス・ナント生まれ。クラシックの音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」のアーティスティック・ディレクター。経営と音楽とを学んだ後、1979年に芸術研究制作センター(CREA)を創設。以来、数多くのコンサートや音楽祭を手がけてきた。

ラ・フォル・ジュルネTOKYO2024

公演期間 2024年5月3日(金・祝)~5日(日・祝)
場所 東京国際フォーラム
公式サイト https://www.lfj.jp/

文=山下シオン

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