「政治ガチャ」で私たちは損してる? 社会学者のド直球解説は気付きの嵐! 政治は「監視が必要」と池上彰さんも
CREA WEB / 2024年5月1日 17時0分
「日本の政治はハズレでしょうか?」と社会学者の西田亮介さん。「政治とカネ問題」「物価や税金は上がるのに給料は上がらない」「選挙で投票しても何も変わらない」「円安で海外旅行も遠のいた」など、日ごろ政治に対して抱く不信感や不満に対して、西田さんは「諦めず、粘り強く改善していくことが大事」と説きます。まずは、私たちの暮らしに深く関わっている政治の仕組みを知るために、必読の1冊をご紹介します。
生まれる国は選べない、日本は「政治ガチャ」なのか?
日々の暮らしの中で物価高や増税などの負担感にモヤモヤが募っていませんか。働き方改革が進められているとはいえ給料は上がらず、未だにサービス残業も多く、統計上は正規雇用が増えているとはいえ、非正規雇用に将来への不安を感じながら働く人も少なくありません。このモヤモヤや不安は何が原因なのでしょう?
「政治が好きとか嫌いとか、役に立つとか立たない云々といったわれわれの認識とはほぼ無関係に、身の回りのいろいろなものが政治と深く関係しています」「新型コロナの給付金も、ビジネスも教育も税金も、ぜんぶ政治が決めている」と西田さん。つまり、政治と私たちの生活は、どのジャンルをとっても深い関係にあるわけです。
国別の幸福度ランキングでは、日本の順位はとても低く、2023年は137国中47位という結果。同じ年の国内総生産(GDP)は世界第4位という豊かな国にも関わらず……。幸福度が低いのは「人生の選択の自由度」や「寛容さ」に課題があることがわかっているそうで、「幸福度を上げるために、標準労働時間を現在の週40時間から30時間にしてはと考えます」と西田さん。ただし労働時間を減らすと同時に、手取りの実質賃金は減らさないことが重要とも言います。その結果、時間的な余裕もうまれ、子育て中の人は保育園の送り迎えもしやすくなり、家族で過ごす時間も増えることになります。
このように本書ではデータとともに事実を紹介し、私たちの現状への不満に対して西田流具体策を提示。「日本に生まれたわれわれは『政治ガチャ』なのか?」と、インターネットスラングの“〇〇ガチャ”で政治の現在地を卑近な例えで表現し、読者の興味を喚起するなどわかりやすい導きが随所に溢れています。
因みに、日本の政治がハズレなのか? の問いかけに対しては、「歴史を振り返ってみればそれほど悪いといえないとも考えています。強いて言えば、結構ラッキー」とも。日本は太平洋戦争に負けてから、よくも悪くもいろいろな課題に対応しながら、自由民主主義を80年近く続けてきている珍しさを語りつつ、「課題は多々あるけれど、諦めることなく、粘り強く改善することが大事ですね」と政治への関心を持ち続ける重要性を説きます。
政治というのはしょせん、私たちの身の回りのあらゆることに関わっている
「西田先生の文章、とても大学教授とは思えないでしょう。ぶっちゃけてるよね。でも、これが持ち味。折り目正しく難しい話をする政治の本が多すぎるから、みんな政治に関心が持てなくなる。その点、西田先生は、『ふるさと納税』を批判しながら、『食べ盛りの子が3人いるので』利用していると自供している。この正直さがいいよね」と池上さん。
さらに「日本人ももっとワークライフバランスが整えば、政治について考えるゆとりが生まれるかもしれない。ヨーロッパ諸国があれだけ政治意識が高いのは、プライベートな時間が結構あるからだと思いますね」と西田さんが言及した労働時間の件に、池上さんも同様の見解を示しています。
「マイナ保険証」「ふるさと納税」「最近よく見かける電動キックボード」など身近な話題を中心に、現在の政府の方針や各政党の特徴の解説を繰り広げる西田さん。その言説に池上さんが絶妙な合いの手を入れながら本書は展開していきます。読み進めていくと、疑問に感じていたり、報道に触れながらもいまひとつわからない、と思っていた政治に纏わるあれこれを理解する糸口がみつかります。
「結局、われわれが読者のみなさんに言いたいことは『監視が必要だよ』ってことですよね。でないと、私たちの税金が無駄遣いされます」という池上さんの言葉どおり、この本をきっかけにして、自らの頭で政治を考える人になりませんか。幸せに生きるために、まずは政治を知ることから始めてみましょう!
明日の自信になる教養2 池上彰 責任編集
幸せに生きるための政治
著者 西田亮介
責任編集 池上彰
定価 1,870円(税込)
KADOKAWA
文=CREA編集部
写真=西村彩子
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