「自爆無人機が蜂の群れのように…」クルスクで戦死した北朝鮮軍将校の文書を公開
デイリーNKジャパン / 2025年1月15日 13時43分
韓国の情報機関・国家情報院は13日、1万人から1万2000人と推定されるロシアに派兵された北朝鮮の兵士のうち、300人が死亡、2700人が負傷したとの見方を示した。
ウクライナ軍に包囲されたある兵士は、「金正恩将軍!」と叫んで手榴弾を取り出し自ら命を絶とうとして射殺されたという。国情院によると、戦死者の持っていたメモには、自決を強要するような内容が含まれており、「生きて虜囚の辱めを受けず」と教え込まれた旧日本軍を彷彿とさせる。
国際人権団体、ヒューマンライツ財団の北朝鮮専門ウェブサイト「NKインサイダー」は同日、ロシアのクルスクで戦闘中に死亡した北朝鮮の将校の所持品だとするものを公開した。
その中の「94旅団戦闘経験と教訓」という題された文書を見ると、北朝鮮の兵士たちは、前線においても常に思想教育を受けていたことがうかがえる。
(参考記事:【全文】北朝鮮軍94旅団の戦闘経験と教訓)
「すべての戦闘員に思想と信念の強者、高い戦闘精神を備えさせれば、現代的な武装装備を備えた敵より政治思想的優勢、 戦法的優勢となりじゅうぶんに打ち勝つことができるだろう」
「戦闘員たちは、敵の砲撃が雹のように降り注ぎ、自爆無人機が蜂の群れのように襲いかかる中でも、敬愛する最高司令官同志の戦闘命令を命がけで貫徹しなければならないという高い精神力と戦闘精神、自己犠牲精神を発揮し、猛虎のように戦場を駆け抜け、最新兵器で装備された敵を蹴散らし、(ウクライナ国境から北に2キロ、ロシア・クルスク州の)プレホボ地域を解放した」
一方で、ウクライナ軍のドローン(無人機)と砲撃への対策についても、実例を挙げて紹介している。
「戦闘時に負傷者が発生すると、急いで救出すると言って、敵の射撃や砲撃、無人偵察機の打撃を考慮することなく接近し、敵の銃弾を浴びて一緒に負傷したり、犠牲になる現象が十数件も発生」
「リアルタイムの偵察及び無人機打撃行動が行われる現代戦で、戦闘組(2~3人)単位で分散行動を行わなければ、敵の無人機、砲兵打撃によって同時に多くの損失を被ることになる」
また、ロシア軍とのコミュニケーションが円滑に行われていない件についても取り上げている。
「ロシア側との協力で負傷者と戦傷者を出動陣地まで搬送したが、刻々と変化する戦場の状況で搬送地点が変わり、また、ロシア側で搬送組織を担当したが、搬送車が10時間ほどで到着し、また、適時に傷病者を搬送できず、搬送途中で戦闘員が犠牲になる欠陥と、病院までの搬送手順と秩序についてよく知らないという問題が提起された」
一方、やはり同日公開された「進めるべき事業の順序」という文書には、「戦闘時に傷病者は自主的に処理し、できる限り支援なしに隠蔽すること」という指示も含まれていた。
(参考記事:【全文】進めるべき事業の順序)
なお、この将校の遺体からは2枚の写真が見つかった。
1枚は本人と両親やきょうだいと思しき男性1人、女性3人の合わせて5人で撮った家族写真で、「美しき思い出とならん!2024.8.15」と書き添えられていた。フォントや背景から考えて写真館などで撮ったものと思われる。もう1枚は、若い男女の写真で「妹と共に 2023.3.16」と書き添えられている。自宅のタンスの前で撮影したものと思われる。
ヒューマンライツ財団韓国担当のイ・ソンミン局長は、この所持品について、ウクライナ特殊軍の作業に協力しており、それがきっかけとなって入手したとその経緯を明らかにした。そして、このように評価した。
「書類に記されているものを見ると、北朝鮮の軍人たちは非常によく学んでいるようです。(しかしほとんどが)ともかく(戦場に)出ていってミッションを遂行せよというものです。負傷者や死者が出ようとも。このような行動綱領を見て、彼らがどのように動くか理解するようになりました。目的達成のために(北朝鮮は彼らに)犠牲を強いているのです」
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