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北朝鮮の通貨「15年前の悪夢」が原因で大暴落

デイリーNKジャパン / 2025年1月17日 6時7分

2009年貨幣改革前の旧100ウォン札の束 ©Zhimin Pan

北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)の成川(ソンチョン)と殷山(ウンサン)では先月10日、1ドル(約156円)が4万北朝鮮ウォンに達したと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の情報筋が伝えた。昨年5月末に8000北朝鮮ウォン台だったので、わずか半年で通貨の価値が4分の1になった計算になる。

一方、デイリーNKが定期的に行っている調査によると、今月5日の時点で平壌、新義州(シニジュ)、恵山(ヘサン)の各都市では1ドルが2万2100から2万2000北朝鮮ウォンだった。

双方にはかなりの開きがあるが、RFAの情報筋は、「貨幣改革がまもなく実施される」というデマが、北朝鮮ウォン急落の原因だったと伝えている。

平安北道の情報筋は、新義州の市場で、昨年12月には1ドルが3万8000北朝鮮ウォンを記録したが、年明けから急激なウォン高に転じ、12日の時点で1ドルが1万6000北朝鮮ウォンまで戻したと伝えた。

情報筋は、北朝鮮ウォンの価値が暴落したのは昨年11月下旬のことで、その原因として、「12月中に貨幣改革が行われる」との噂が広がり、北朝鮮ウォンを売ってドルを買う動きが急増したことによるものだとしている。

北朝鮮は過去に5回、貨幣制度の見直しを行っているが、一般的に「貨幣改革」と言えば、2009年11月30日に行われた5回目のデノミネーション(通貨単位の切り下げ)と旧紙幣と新紙幣の交換を指す。

北朝鮮政府は当時、旧紙幣100北朝鮮ウォンを新紙幣1北朝鮮ウォンに切り上げるとして、旧紙幣を銀行に預ければ、新紙幣で引き出しができるとした。ところが、1世帯当たり10万北朝鮮ウォンまでしか引き出しを認めないとしたことが、大混乱を引き起こした。爪に火を灯しつつ貯めた財産の多くが、一瞬にして紙くずになってしまったのだ。

全国の市場から物が消え、激しいインフレが起きた。絶望のあまり、すべてを捨てて脱北する人も相次いだ。それから十数年経ったが、当時の出来事は北朝鮮の人びとにとってトラウマになっている。それが今回、多くの人をドル買いに走らせたのだ。

(参考記事:【北朝鮮国民インタビュー】「国には何も期待しない。自由に商売をさせてくれるだけでいい」

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、首都・平壌郊外の物流の一大拠点、平城(ピョンソン)でも昨年12月に、1ドル40000北朝鮮ウォン近くになったと伝えた。その理由として挙げたのは貨幣改革のデマに加え、昨年行われた大幅な賃上げだ。

当局は昨年4月、工場労働者の月給を1800北朝鮮ウォンから5万北朝鮮ウォンに引き上げた。教師、医師、事務員の月給も同様に引き上げられ、通貨供給量が20倍以上増えた。この直後からドル高とウォン安の傾向が顕在化した。

昨年4月には1ドル8000北朝鮮ウォンだったのが、5月には9500北朝鮮ウォンになった。当局は、トンデコ(闇両替商)がドルを買い占めているのがウォン安の原因だとして、取り締まりを強化した。すると、今度はドルの供給量が減り、9月には1万7000北朝鮮ウォンになった。そこに加えて降って湧いた貨幣改革の噂がウォン安に拍車をかけ、11月には2万5000北朝鮮ウォン、12月中旬には4万北朝鮮ウォン近くになったという流れだ。

(参考記事:今や北朝鮮の領域を二分する「米ドル地帯」と「人民元地帯」

当局は年明けに、人民班(町内会)を通じて「貨幣改革があるという噂は流言飛語(デマ)だ」と通知したことで、ようやく急激なウォン安に歯止めがかかった。1ドルが2万2000北朝鮮ウォンとなり、今では1万6000北朝鮮ウォンで取り引きされ、高騰していた物価も下がりつつある。

新義州の市場では昨年12月、コメ1キロが1万北朝鮮ウォンまで上昇したが、今では7300北朝鮮ウォンまで下がったとのことだ。

だが、国の言うことは基本的に信用しないのが北朝鮮の人びと。貨幣改革の噂はくすぶり続けており、こんなことを言う人がいるという。

「貨幣改革をしないと言ってウォンの暴落を防ぎ、世論を落ち着かせた後で、貨幣改革を強行するのではないか」

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