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上場廃止から6年、業績V字回復の「カメラのキタムラ」の現在

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年8月20日 20時59分

カメラの販売および買取り事業、フォトプリント事業、フォトスタジオ事業を展開してきたキタムラ(東京都)は20244月、店舗運営機能を分社化するかたちでカメラのキタムラ(同)を設立した。キタムラがグループ横断型のマーケティング施策やサービス開発を担う一方で、カメラのキタムラは店舗運営に集中する。カメラ・写真事業を取り巻く市場環境と同社の事業戦略について、キタムラ執行役員統合マーケティング本部部長安達友昭氏に聞いた。

「埋蔵金は3兆円」伸びが期待されるリユース事業に注力

 カメラ販売とリユース事業、フォトプリント事業、フォトスタジオ事業を展開するキタムラ(以下、キタムラ)。同社は写真店として1934年に創業し、長きにわたりカメラ・写真に関連した事業を展開してきたが、高性能カメラが搭載されたスマートフォンの普及を背景に、主力のデジタルカメラ販売やフォトプリント事業が苦境に追い込まれた。20173月期決算では上場以来初の最終赤字を計上。20186月には上場廃止し、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京都:以下、CCC)の子会社となった。

 しかしここ数年、同社は順調な回復を遂げている。CCCの関連企業となり、2023年3月10日には親会社のキタムラ・ホールディングスがプライム市場への上場承認された。市況の悪化に鑑みて上場手続きは一旦取り止めとなったものの、「2024年3月期の業績は前年同期比を上回る水準で着地した」(キタムラの執行役員統合マーケティング本部部長の安達友昭氏)。

 カメラのキタムラの事業ポートフォリオのうち、成長領域はカメラ&リユース事業だ。中古カメラやブランド時計、スマートフォンの買取り・販売を行うリユース事業は伸び代が大きく、安達氏によると「埋蔵金は3兆円」。全国約600カ所の「カメラのキタムラ」店舗での買取りサービスに加え、ECや郵送での買取りも強化している。

キタムラ執行役員統合マーケティング本部部長の安達友昭氏

 同社は元々、ECで購入した商品を店舗で受け取るBOPIS(バイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストア)の利用率が高く、EC関与売上比率は現在も約6割にのぼる。安達氏は、「出張買取りも強化したい」と話す。2023年3月には「マルイ有楽町店」と組み、カメラの買取りと商業施設での購買を促すキャンペーンを実施した。今後も商業施設や高層マンションでの出張買取りを展開し、顧客接点の拡大に努めている。

 カメラ&リユース事業の成長のカギとなるのが、LTVLifeTimeValue:顧客生涯価値)の最大化だ。安達氏は、「キタムラでカメラを購入したお客さまがレンズを購入し、次は別のカメラを購入する。そして古いカメラの買取りをキタムラに依頼する。この好循環を生むことが理想。競争の激しい業界だが、当社の強みであるハイエンド商品の買取りを伸ばしつつ、ミドル層もカバーして裾野を広げたい」と意気込む。

 販売面では、近年は「新宿 北村写真機店」をはじめとする旗艦店づくりに力を入れる。競合店を圧倒的する豊富な品揃えを武器に、各拠点でコアなカメラファンから新たな趣味を求めるシニア層まで幅広い層に訴求する。CCCが手掛けるVポイント連携も含めグループ横断型の顧客データを活用することで、顧客ごとの購入・買取りパターンに応じたCRMにも着手している。

高利益率も客数は減少、フォトプリント事業の今後

 利益率は高いものの利用者が減少しているフォトプリント事業では、1人あたりの単価アップが課題だ。キーワードとして安達氏は、「ギフト」と「コレクション」を挙げる。

 旅行や孫との写真をプリントしたギフト用途、あるいは子どもの成長過程や“推し”の写真を集めるといったコレクションニーズ。背景が透明な写真をプリントできる「クリアプリント」サービスや、仕上がりを確認しながらプリントできる「店頭ラボ」機能は、こうした需要にマッチする。フォトブックが人気のグループ会社、しまうまプリントとのシナジーにも期待できそうだ。

 さらには、「プリントのシーンそのものを変えたい」と安達氏。試験的に、ライブ会場などにキタムラが出向き、現地で「感動が生まれる瞬間に」(安達氏)即時プリントし即時グッズ化できるサービスを考案している。

フォトプリントで作成したクッション、トートバック、マグカップ

 フォトスタジオ事業は、誕生から節句、誕生日、七五三といった節目ごとの利用の継続性が明暗を左右する。顧客データに基づくCMRSNS施策、バナー広告などを駆使してマーケティングに力を入れるとともに、「写真館の第5世代を作っていきたい」と、安達氏は話す。

 「いわゆる“町の写真館”が第1世代、これをチェーン展開した当社の『スタジオマリオ』は第2世代。続く第3世代は、『ライフスタジオ』に代表されるようなオシャレ感のある写真館で、第4世代は出張写真館。世代が進むごとに写真の『画(え)』が変化している。新たな『スタジオマリオ』は、目線や動き、非日常感のある衣装を工夫することで、スタンダードな画のみならず新しい画も撮れる写真館をめざしたい」

 とはいえ、出生率が低迷する時代、フォトスタジオ事業が衰退業界であることは否めない。キタムラとしては、他事業併設型の店舗運営やシナジー効果を高めることで、全体の固定費削減と利益率向上をめざす構えだ。

 オムニチャネル構築やCRMの強化には、デジタルに強い人材が欠かせない。また、カメラ&リユース事業では経験と専門知識を持つ人材が求められる。よって引き続き、外部からの優秀な人材を採用したい考えだ。「査定経験者やデジタルに強い人材を集めて、デジタル領域と買取り領域を強化したい」(安達氏)としている。

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