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アローズにビームス…セレクトショップの未来とめざすべき新ビジネスとは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年9月2日 20時59分

本日は、セレクトショップの未来について「妄想的」予言をしてみたい。セレクトショップを論じる時に忘れてならないキーワードは、「アメカジ」と「メンズ」の2つである。この2つにSPA(製造小売り)ではなく、「小売」ビジネスを掛け合わせたものが本来のセレクトショップである。しかし、こうした厳格な定義はもはや崩れてきている。本稿では「セレクト御三家」についてユーザー視点で話を進めていきたい。

女性比率とPB比率が高いユナイテッドアローズ

 セレクトショップ御三家とは言うまでもなく、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」、そして「シップス」の3社を指す。その特異な点として、アパレルビジネスはレディースのほうがメンズより数倍も市場が大きいにもかかわらず、これら「セレクトショップ」のメンズ比率がもともとかなり高いことがあげられる。

 そうしたなかで、ユナイテッドアローズは「レディース」 x 「プライベートブランド(PB)」の比率が大きくなっているが、これは本来のセレクトショップの方向性とは異なるものだ。御三家の中で唯一この領域を拡大できているのは、同社が上場して、豊富な投資資金を確保していることも関係している。ハッキリしたデータを持っているわけではないが、同社の広義のPB比率は、全体の70~80%にも拡大している可能性がある。こうなると「セレクトショップ」と言って良いかどうか、という水準だろう。

 PBの定義は難しい。よくPBSPAを混同して使っている人がいるが、例えば、商社に生産をOEMで丸投げしていても、また、その企画さえも商社に丸投げしていても、その商品責任を「店舗側」が持つのであれば、それは、「PB」である。商社に生産や企画を丸投げするか否かは、アウトソースかインハウスかという戦略の違いにすぎない。「PBか否か」とは関係ない点を認識してほしい。

「アメカジ×メンズ」を代表するビームス

 ビームスこそ、「アメカジ」 X 「メンズ」を代表する企業だ。もともと段ボール会社だったと聞くと驚く人が多いかもしれない。米国のアメリカンカジュアルを日本へもってくることを主眼にセレクトショップの原型のような店を立上げ、ユナイテッドアローズも実はビームスから枝分かれしたのである。

 ビームスが服好き、ファッション好きの社員を沢山集めているのは有名な話だ。しかし、外から見て、似たような店が乱立しており、例えばユナイテッドアローズのように、グリーンレーベル、ビューティー&ユースを「キャッシュカウ」(金のなる木)にして、ユナイテッドアローズでテストマーケティングをする、というブランドの連続性のようなものが見えにくい。なおビームスは非上場のため、在庫やキャッシュフローなどの詳しい状況はわからない。

 

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古き良きシップスと、有力なエディフィス、エストネーション

写真はイメージ、ChayTee/istock
写真はイメージ、ChayTee/istock

 その昔、セレクト御三家といえば、ユナイテッドアローズ、ビームス、シップスで、仲間内では「セレクトUSB」 (御三家の頭文字)などといっていた。シップスは、時間が止まっており、セレクトショップの原型をそのまま残している気がする。私の推測と業界関係者との話を聞くに、顧客もかなり年齢層が高いのではないだろうか。また、ベイクルーズが展開する「エディフィス」、サザビーリーグが展開する「エストネーション」などは有力セレクトショップといってよい。

 両社の業績については私も社員との面談でしか聞いたことがなく、一次情報ではあるものの、あくまでも「語り」でしかないが、どちらも調子が良いそうだ。なおダイヤモンド・チェーンストア調べではベイクルーズの238月期決算は増収である(利益は非開示)。サザビーリーグの243月期決算は、微減収ながら大幅増益(当期純利益ベース)である。

 特にエストネーションの六本木ヒルズ店などは一度行ってみるとわかるが、圧巻である。あれだけの商品をよく集め、また、飾り付けできたものだ。エストネーションの責任者からは、私の書籍の第3冊目「知らなきゃいけないアパレルの話」を読んで感銘を受けたのでディスカッションをしたいと言われ、一度お話しをしたことがあるが、とにかく、社員に自由度を与え、また、社員のやる気を引き出している仕組みをあちこちに導入しているという。ユニクロに入社した社員が心身ともに目一杯働いているのと比較すると、同じアパレルビジネスでも、ファッションビジネスとコモディティビジネスではこうも違うのかと驚いたぐらいだ。

セレクトショップの競合と未来

 セレクトショップの競合は「百貨店」である。私は、百貨店のビジネスはセレクトショップを大きく拡大したもので、また、例えば伊勢丹などは完全にセレクトショップの競合となっている。百貨店は、駅チカなど、立地が良い場所だけが残り、地方都市や立地が悪い(近くに巨大モールがあるなど)エリアはどんどん淘汰されてゆくだろう。

 しかし、その百貨店の店数の淘汰が終わった後は、駅チカで好立地の富裕層が集まる、強い百貨店だけが残ることになる。当然百貨店は、都市に集中しその存在感を高めてくるだろう。その時に、競合になるのがセレクトショップだ。

 経営学的に言えば、ユナイテッドアローズのブランドポートフォリオが理想的なのだが、同社の高すぎるPB比率が、同社のビジュアルマーチャンダイジング(VMD)の魅力を削いでいないか若干の心配が残る。

 ニュースソースは明かせないが、本日紹介したセレクトショップの中のナンバーツーの人物が将来戦略でこんな未来を語っており、私は大いに感銘をうけた。机上の空論を振りかざすコンサルのきれいな文章ではない、実務家のトップからでた言葉だ。

 「セレクトショップはEC比率をもっと上げ(今は、2030%)、ストア・ブランドを強化する。さらに「本当に自社の商品である」と確認できれば、顧客が着古した商品を一定のパーセンテージで買い取り、自社の補修工場で直して再プレスし、二次流通で売っていきたい。これは、クルマ業界がやっている手法だ。

 セレクト商品は今後ますます高価になる。日本人は貧しくなってくるため、なかなか高価なセレクト品を買ってはくれないが、「商品を買い取りしてくれる」ことの認知が広まれば、それを前提にして、例えば10万円のコートも買ってくれる可能性が高い。

 10万円のコートの状態が非常に良い場合、たとえば「6万円で買い取ってくれる」となると(あくまでも例えばの話)消費者は最初から、「10万円―6万円=4万円」と考えて商品を買ってくれる。また、このように、リユースすることでアパレルの余剰在庫の問題、償却の問題も解決できる。これは、10万円の価値のある商品を選べるセレクトにしかできない戦略だ」と

 現時点では夢のような話に聞こえるかもしれないが、私は大いに参考になったし、応援したいとおもっている。あなたはどう感じたか?

 

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プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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