「地雷系」ファッションに勝機あり?越境EC「Temu」に夢展望が国内企業初出店!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2024年12月19日 20時59分
RIZAPグループ(東京都/瀬戸健社長)の傘下で、アパレルEC事業などを手がける夢展望(大阪府/塩田徹社長)は2024年10月、中国発の越境ECサービス「Temu(テム)」と連携することを発表した。成長著しいオンラインショッピングモールへの出店は、夢展望の海外展開の足掛かりになるのか。同社に提携の経緯や今後の事業戦略を聞いた。
「Temu」の驚異的な成長スピード
ニールセンデジタルが発表している、Monthly Totalレポートをもとにした2024年5月におけるオンラインモールの月間利用状況によると、最も利用者数が多かったのは「Amazon」で、月間利用者数は6724万人だった。2位は「楽天市場」で6631万人、3位は「Yahoo!ショッピング」で3541万人と続いた。
そうした中、4位にランクインしたのが昨年日本市場に参入して急速に利用者数を伸ばした「Temu」だ。同月の「Temu」の月間利用者数は3106万人。ちなみに5位には、セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)の「Omni7」が1840万人でランクインしている。「Omni7」に大差をつけて4位にポジションをつけていることを考えると、「Temu」の驚異的な成長スピードがわかるだろう。
「Temu」の最大の特徴は、圧倒的な低価格と取り扱い商品の多さだ。2022年9月にアメリカ市場に参入してから、欧米諸国や東南アジアなどで事業を拡大。10月時点での進出先は82カ国・地域となり、急速に利用者数を増やしている。
そして今年10月、「Temu」との連携を発表して業界人を驚かせたのが、ECを中心にアパレル事業を展開する夢展望だ。
起爆剤としての「海外展開」
主に、「アパレル事業」「ジュエリー事業」「トイ事業」を手がける夢展望。24年11月に発表した2025年3月期第2四半期の連結業績は、売上収益が22億円だった。前年同期との比較では1.9%減となったものの、第3四半期以降は、Temuとの連携によりアパレル事業が伸長することが期待される。
同社は24年7月以降、抜本的な方針転換を図り、「業務Speed重視」「社内Communication強化」「Ownership促進」を推し進めるとともに、8月以降は海外展開を本格化している。
米国、中国、韓国、台湾の主要な事業社と連携した越境ECによる販売を開始した結果、7月から9月における同社単体の売上高は対前年同期比が15%増となったほか、トイ事業も増収増益で好調だった。同社は「Temu」単体に依存するのではなく、複数のプラットフォームを活用した総合的な海外展開を引き続き進め、通期での売上伸長をねらう。
日本国内の企業が「Temu」に出店したのは、夢展望が初だという。なぜ、同社は「Temu」での商品販売を決めたのか。夢展望の副社長執行役員を務める津田茂寿氏は「最も勢いのあるECと意気投合し、うまく接触できた」と振り返る。
「地雷系」ファッションに白羽の矢
今回「Temu」内で販売を開始したのは、「アパレル事業」において同社が展開する主力ブランド「DearMyLove」などの衣料品だ。同ブランドは「地雷系」「量産型」と称されるガーリー系のアイテムが中心となっている。
今回の提携に至った背景について、津田氏は「中国で開催された展示会に出展した際、『Temu』側が『DearMyLove』の商品に注目したことがきっかけだった」と振り返る。
日本市場に参入し、シェアを高めたい「Temu」にとって、重要な課題のひとつがローカライゼーションだった。そんな折、夢展望の展開する「地雷系」「量産型」のような日本独自のファッションに「Temu」が関心を寄せたという。
夢展望側も、アメリカや香港、台湾などの海外客による「DearMyLove」商品の購入が増えていることを認識していた。日本独自のファッションが潜在的に持つ海外でのニーズをキャッチしていたため、海外展開に新たなチャンスを見出していたという。こういった背景から、両社は意気投合し、提携に向けて調整を始めるに至った。
連携の第1段階として、「DearMyLove」の商品を「Temu」の日本向けサイト内で販売することからスタート。
夢展望で販売する「DearMyLove」の商品は5000円前後のトップスから1万円台のドレスなど、価格帯としてはやや高めとなっている。「Temu」内で販売されているほかのアパレルアイテムと比較するとその価格の高さが目立つものの、津田氏は「価格は合わせず、しっかりとブランディングをしていく」としており、過度な値下げは考えないという。
「Temu」の成長で相乗効果ねらう
夢展望は今後、連携の第2段階として「Temu」の海外向けサイトでの販売を検討中だ。また、取り扱いブランドの拡大や別事業への派生展開など、販路の拡大も考えていくという。
津田氏は「これは日本マーケットで売上を伸ばしていくにあたっても重要なアプリになる」と指摘する。
いまや日本でもECは実生活に根付き、お客は膨大な数のショップやサイトを使い分けている。たとえ同じ商品を扱っているショップがあっても、値段が安いほうを選んだり、ポイントが得られる方を利用するなど、ECサイトを使い分けるお客は少なくない。
夢展望では、自社ECのほか、「楽天市場」や「ZOZOTOWN」などでも商品を販売している。「Temu」で販売開始することで、同社の商品の新たな購入口が増えれば、新規客の獲得につながる。
今後、夢展望では「Temu」と協力し、海外展開によって危険性が増すとされる模倣品対策をはじめ、品質の向上によって「Temu」内における同社のブランド価値を高めていきたいとしている。津田氏は「『Temu』がプラットフォームとして強化されていけば、国内外で抱える圧倒的な数のユーザーが安心して購買できる環境を整えることができる。その相乗効果を期待している」と話す。
夢展望の専務執行役員を務める植竹知子氏は「『Temu』にも当社のブランドに手ごたえを感じていただいた。規模の大きいECに限らず、引き続き海外展開に積極的にチャレンジしていく」と前向きに話している。
国内企業で最初の「Temu」出店となった同社は、「Temu」日本市場における“成功事例”となれるか。
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