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脊髄小脳失調症の新しい治療薬候補を発見 ~L-アルギニンの脊髄小脳失調症6型に対する治験結果~

Digital PR Platform / 2024年11月28日 20時5分

脊髄小脳失調症の新しい治療薬候補を発見 ~L-アルギニンの脊髄小脳失調症6型に対する治験結果~



新潟大学脳神経疾患先端治療研究部門の石原智彦特任准教授、脳神経内科学分野の小野寺理教授、近畿大学医学部内科学教室(脳神経内科部門)の永井義隆主任教授らの研究グループは、神経難病の一つである脊髄小脳失調症6型(SCA6)(注1)に対する新たな治療薬候補の治験を行いました。治験薬の候補として、L-アルギニン(注2)の有効性と安全性を調べるために、日本国内の5施設で二重盲検無作為化試験を実施しました。40人の患者さんが参加し、48週間の治療後、症状評価スケールSARA(注3)スコアはプラセボ(注4)群で0.56点悪化したのに対し、L-アルギニン群では0.96点改善しました。一定の効果が得られましたが、残念ながら統計的な有意差は確認できませんでした(p=0.0582)。今後はより大規模な第3相試験(注5)が行われることが期待されます。




【本研究成果のポイント】
●脊髄小脳失調症の新規治療薬の第2相試験(注6)を行いました。
●脊髄小脳失調症6型患者さんで有効な可能性が示されました。
●より大規模な第3相試験の実施が望まれます。

【研究の背景】
脊髄小脳失調症は小脳という脳の一部が病気になり、うまく歩けない、呂律が回らないなどの症状(失調症状)をおこす神経の病気です。日本ではおよそ3万人の患者さんがおられ、遺伝性のものが1/3を占めます。遺伝性の脊髄小脳失調症のうちの多くは同じ仕組みで発症し、ポリグルタミン病(注7)と呼ばれます。これは、グルタミンというアミノ酸が繰り返される配列が異常に長くなったポリグルタミン蛋白質によりおきる病気です。ポリグルタミン蛋白質が神経細胞の中で集まり、固まっていくことが病気の原因と考えられています。新潟大学の小野寺理教授や近畿大学の永井義隆教授らの研究グループは、L-アルギニンという物質がポリグルタミン蛋白質の固まりを作らないようにすることを見い出し、ポリグルタミン病の動物モデルで治療効果があることを報告しました(Minakawa EN et al. Brain 2020)。L-アルギニンはアミノ酸の一種で既に医薬品として使用されている物質です。本研究グループは、ヒトにおけるL-アルギニンの安全性とポリグルタミン病に対する治療効果を確かめるための治験を行いました。

【研究の概要】
この治験(AJA030-002、jRCT2031200135)は日本国内の5施設(新潟大学、国立精神・神経医療研究センター、東京医科歯科大学(当時)、大阪大学、近畿大学)が参加して、多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化群間比較試験として2020年9月から2022年9月まで行われました。40人の患者さんが参加し、20人はL-アルギニンを、20人はプラセボを48週間内服しました。比較的少数の患者さんについて、有効性と安全性などを調べる探索的試験、第2相試験の位置づけです。薬剤の効果をしっかりと検証するために、試験対象は脊髄小脳失調症6型(SCA6)の患者さんに統一しました。SCA6は日本に患者さんが比較的多く、患者さん毎の症状の差が少ないからです。治療効果は小脳の病気の評価に使われるSARAという方法で評価し、治験開始時と48週間後での変化を調査しました。

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