【中部大学】アルカリ水溶液でA型インフルエンザウイルスが不活化されるメカニズムを解明 ― 感染症予防に新たな可能性 ―
Digital PR Platform / 2024年11月29日 20時5分
【研究成果のポイント】
■A型インフルエンザウイルス(IAV)は水素イオン濃度指数(pH)11.75以上で効果的に不活化されることを確認
■IAVが持つスパイク(注1)であるヘマグルチニン(HA)タンパク質がpH11.75 以上で加水分解され構造と機能に影響を受ける
●発表概要
インフルエンザは毎年のように流行するが、その中でもA型インフルエンザウイルス(IAV)は特に感染力が強い。B型、C型と比べて症状も強く、時には重篤化するケースもある。
現在、脂質二重膜のエンベロープ(注2)を持つウイルスは、主に油を溶かすエチルアルコールによるエンベロープの破壊作用を利用したウイルスの不活化が行われている。一方、アルカリ水溶液によりIAVが不活化される現象が実験で確認されていたが、どのようなメカニズムで不活化されるかは明らかにされていなかった。
今回、中部大学大学院生命健康科学研究科の瀬口愛斗大学院生(博士後期課程1年)と鶴留雅人教授、伊藤守弘教授らの研究チームは、アルカリ水溶液がIAVを不活化するメカニズムを明らかにした。
水素イオン濃度指数(pH)の異なる水溶液をIAVに作用させた実験において、pH11.75以上でIAVが不活化された。
さらに感染に関係するスパイク(ヘマグルチニン(HA)タンパク質)の量を調べたところ、pH11.75以上で明らかに減少し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察では、pH12.0ではウイルススパイクの確認が不可能であった。
実験にはA型インフルエンザウイルス(PR-8 株)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH調整に水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いた。pH 7.4から12.0までの水溶液において、pH11.25 までほぼ不変であったウイルス感染力価(注3)が、pH11.75以上で検出限界以下になった。さらに宿主の細胞への感染に関わるHA タンパクを検出したところ、pH11.75以上で明らかに減少した。HAはHA1サブユニットとHA2サブユニットで構成されているタンパク質だが、アルカリの作用によってHA1とHA2が解離してしまうこともわかった。
さらに、TEMによる観察によって、pH12.0でウイルス粒子表面のスパイクが消失していることも分かった。
総じて、本研究成果は、アルカリ水溶液がエンベロープウイルスのスパイクタンパク質を変性させることが考えられ、アルカリ水溶液がウイルスの持つタンパク質を分解もしくは変性させ、感染能を不活化させたことを示唆するものである。
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