ストレスによる大腸の不調が学習能力を低下させることを発見
Digital PR Platform / 2024年12月4日 10時0分
~大腸を標的とした精神疾患治療薬開発への期待~
藤田医科大学(愛知県豊明市 学長:湯澤由紀夫)医療科学部レギュラトリーサイエンス分野 毛利彰宏教授、田辺萌夏大学院生、國澤和生准教授、鍋島俊隆客員教授、齋藤邦明学部長らは、医学部消化器内科学、医科プレ・プロバイオティクス講座の廣岡芳樹教授、栃尾巧教授、藤井匡准教授との共同研究により、幼少期の社会的な孤立によるストレスが大腸の粘液を産生する杯細胞※1を減少させ、認知機能障害をひき起こすという精神疾患の新たな発症メカニズムを解明しました。また、胃潰瘍や胃炎の治療に広く使われているレバミピド※2が杯細胞を増やすことで脳内の炎症を抑制し、認知機能障害が改善されることも発見しました。本研究により、レバミピドが精神疾患の新たな治療薬となる可能性が示唆されました。
本研究成果は、欧州科学誌「Molecular Psychiatry」のオンライン版で2024年11月29日に公開されました。
論文URL :https://www.nature.com/articles/s41380-024-02826-9
研究成果のポイント
レバミピドが大腸の杯細胞を増やし、海馬のミクログリア※3の過剰な活性化を抑制することで、ストレスによる認知機能障害を改善することを世界で初めて発見しました。
精神疾患の新たな発症メカニズムとして、ストレスにより大腸の杯細胞が減少し、それに伴い血中アミノ酸であるシスチン※4の低下を介して海馬のミクログリアが活性化され、認知機能障害がひき起こされることを発見しました。
レバミピドが認知機能障害に対する新たな治療薬となる可能性を提唱しました。
背景
現在使用されている精神疾患の治療薬の多くは、脳に直接作用するものです。しかし、これらの治療薬では精神疾患による認知機能障害に対し十分に効果が得られない患者が多く、さらに副作用の問題もあるため、新たな治療薬の開発が求められています。研究グループは、従来とは異なるアプローチによる治療法を模索する中で大腸に着目しました。近年、腸内環境が健康と密接に関与することが明らかになり、特に「脳腸相関」と呼ばれる、腸と脳の機能的な連関が注目されています。ストレスによって腸内環境が変化し、精神疾患の発症に関与することは知られていますが、こうしたメカニズムに基づく有望な治療薬は未だ開発されていません。本研究では、大腸の粘液を産生する杯細胞に着目し、杯細胞の増加が腸内環境を改善し、精神疾患治療の新たな標的となる可能性について検討しました。
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