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埼玉医科大学の研究グループが過分化メラノーマ細胞の免疫学的特徴を解明 ― より手堅いメラノーマの治療法開発に向けて

Digital PR Platform / 2024年12月20日 8時5分

■研究手法
 研究グループは、一般的なマウスメラノーマ細胞株であるB16F10に、放線菌由来の殺細胞性化合物であるスタウロスポリン(注4)を低用量で曝露すると、ほとんどの細胞が細胞死に至るものの、わずかに生存した細胞はメラノサイト分化関連分子が高発現した「過分化状態」となることを見出した。この過分化メラノーマ細胞は、細胞周期の停止、細胞死抵抗性の亢進など、ヒト臨床メラノーマでの治療抵抗性過分化細胞と相同の性質を有していた。そこで、この細胞を用いて過分化メラノーマが免疫学的に排除可能かどうか、完全に機能する免疫系をもつ同種移植モデルマウスを用いて検討を進めた。

■研究成果
 過分化状態のB16F10メラノーマ細胞は通常の状態と比較して、マクロファージや樹状細胞から貪食を受けやすくなっており、加えて、これら貪食細胞の活性化を促した。また、過分化メラノーマ細胞をマウスに接種すると腫瘍細胞由来抗原に特異的に反応するリンパ球の活性化が確認された。
 しかし、通常状態と比較して過分化状態のメラノーマ細胞は、抗原特異的活性化リンパ球による細胞傷害を受けづらくなっていることが確認された。このことは、過分化状態のメラノーマ細胞が腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導できる高い免疫原性を持っているにもかかわらず、免疫学的排除に対しては強い抵抗性を持っていることを示している。
 この免疫回避のメカニズムを明らかにすべく、過分化メラノーマ細胞表面の免疫関連分子の発現を解析すると、免疫チェックポイント分子(注5)PD-L1を強く発現していることが判明した。そこで、過分化メラノーマ細胞を移植したマウスモデルを作製し、そこに免疫チェックポイント阻害抗体を加える実験を行なって腫瘍病態の進展を観察し続けたところ、免疫チェックポイント分子のはたらきが抑えられることで過分化メラノーマ細胞が免疫学的に排除されることが証明された。
 本研究によって、一般的なマウスメラノーマ細胞でも過分化状態にフェノタイプ スイッチさせることが可能となり、それを免疫健常マウスに移植した腫瘍モデル動物が作製可能になることが示された。この過分化メラノーマモデルは、治療抵抗性メラノーマの発生機序や生体内での挙動の理解を深めるために有用であり、より有効な治療法の開発に貢献することが期待される。

■医学生としての視点から
 研究医養成プログラム履修生として、私がこの研究を始めた時期はコロナ禍の真最中でした。しかし、その状況を逆にチャンスとして捉え、医学部の通常カリキュラムの受講と並行して研究活動を進め、スタウロスポリン曝露に耐過したがん細胞の性質や免疫原性について解析を重ねることができました。また得られた研究結果は、医学部の臨床実習や、実臨床での問題点と重ねながら考察を深めることができました。この過程では医学生としての視点を大いに活かすことが出来たのではと思っています。今回の研究成果と経験を活かして細胞死抵抗性がん細胞の排除方法の確立や、より手堅く効果的な抗がん治療の開発を目指したいと思います(埼玉医科大学医学部6年 安藤 優希枝)。

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