【東京医科大学】肝線維化を制御する経口投与可能な核酸医薬品の開発 ~ 飲み薬で肝硬変を改善する方法を目指して 〜
Digital PR Platform / 2025年1月20日 14時5分
【本研究で得られた結果・知見】
今回注目したmiR-29a-3pは肝線維化進展に関係するCollagen 1A1(細胞外マトリクス)と持続的な炎症反応に関係するPDGFC、IL-1βの発現を直接制御します。肝線維化進展は持続炎症の結果、細胞外マトリクスの増生が起こるため、miR-29a-3pにより複数の遺伝子発現を制御することで肝線維化進行を阻害することが期待できます。また、本研究では、従来の核酸創薬の問題点である薬物輸送(送達)システム (drug delivery system (DDS))*2に関して、マイクロ RNAがRNA分解酵素から阻害されるのを防ぐため、核酸(マイクロRNA)に特殊な化学修飾を行いました。その結果、本マイクロRNAは、遺伝子導入試薬やDDSを用いずに、経口投与によって、肝線維化の抑制を可能にしました。
【今後の研究展開および波及効果】
現在本邦で進められている肝線維化を標的とした創薬は、(1)非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対しPNPLA3阻害剤の皮下注射の治験、(2)CBP/βカテニン阻害剤(OP-724)の静脈注射による治験が、いずれもフェーズ2に進んでいます。両者とも注射薬ですが、肝疾患患者は血管が脆弱な人が多いため、簡便に投与できる経口投与可能な薬剤の登場が期待できます。また、マイクロRNAは元々生体内にある分子であるため、生体に対する毒性も低く、安全性の高い薬剤であることが期待されます。
【用語の解説】
*1 Victor Ambros博士とGary Ruvkun博士は共同でマイクロRNAの発見の功績にて2024年ノーベル医学生理学賞を受賞しました。彼らの発見は、遺伝子制御のまったく新しい原理を明らかにし、それが人間を含む多細胞生物にとって不可欠であること示しました。現在、ヒトゲノムは 1,000 を超えるマイクロ RNA をコードしていることがわかっています。マイクロ RNA は、生物の発達と機能に根本的に重要であることが証明されています。
*2 Drug Delivery System(DDS)とは、必要な濃度で、必要な期間、必要な細胞・組織へ薬物を送達するシステムのことを示します。薬物の体内動態を最適化する創薬・創剤技術と定義されます。このことで薬剤は特製の作用が増強され、副作用の発生リスクが軽減され、必要最小限の薬剤投与による経済性などを期待することができます。
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