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【杏林大学】下垂体前葉の成体組織幹細胞の新たな性質と由来を同定―下垂体前葉の外科的治療後の組織再構築への応用に期待―

Digital PR Platform / 2025年1月23日 14時5分

【杏林大学】下垂体前葉の成体組織幹細胞の新たな性質と由来を同定―下垂体前葉の外科的治療後の組織再構築への応用に期待―



保健学部保健学研究科博士前期課程1年新藤綾乃(指導教官 健康福祉学科 堀口幸太郎 准教授),自治医科大学 東森生 講師,神奈川大学 藤原研 教授,東邦大学 吉田彩舟 講師らの研究チームは,ラット下垂体前葉の成体組織幹細胞が間葉系幹細胞の性質を持ち,その細胞の一部が生後の下垂体前葉発生過程で外部組織から侵入してくることを明らかにしました。この研究成果は下垂体前葉の成体組織幹細胞の性質や組織構築機構に関して新たな知見を与えるものとなりました。なお,本研究はJSPS 科研費(19K07255, 22K06798)の助成を受けて行われたもので,研究成果はCell and Tissue Research誌の電子版に,2025年1月14日に先行公開されました。
掲載URL:https://doi.org/10.1007/s00441-024-03947-x





研究のハイライト

・ラット下垂体前葉の成体組織幹細胞は,転写因子SOX2と膜タンパク質CD9を発現する細胞(CD9/SOX2陽性細胞)として同定されます。
・本研究では,このCD9/SOX2陽性細胞をラット下垂体から単離し,外胚葉性のホルモン産生細胞だけでなく,中胚葉性の血管内皮細胞や脂肪細胞,骨細胞,軟骨細胞様の細胞に分化させることに成功し,間葉系幹細胞の性質を持つことを実証しました。
・この間葉系幹細胞の性質を持つCD9/SOX2陽性細胞は,生後の下垂体前葉形成時に神経堤細胞や骨髄造血幹細胞など外部組織から下垂体に侵入する細胞に由来する可能性が示唆されました。
・本研究結果は,これまで外胚葉から発生する下垂体前葉の組織構築,維持には外部からの細胞が関わるという新たな組織形成機構を予想させ,下垂体前葉の外科的治療後の組織再構築に応用できる可能性が期待できるものです。

背景
各臓器,組織を構成する細胞は常に新しい細胞に置き換わっていきます。この細胞のターンオーバーの供給源になる細胞を成体組織幹細胞といいます。下垂体前葉は,外胚葉性の口腔上皮になる細胞群から発生する内分泌器官です。成長ホルモンや母乳合成を行うプロラクチン,生殖に関わる卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンなどを分泌するホルモン産生細胞と毛細血管で構成されています。ラット下垂体前葉の成体組織幹細胞は,前葉と中葉側に跨る細胞層であるマージナルセルレイヤーと呼ばれる部位に存在し,膜タンパク質CD9や転写因子SOX2を発現していることが特徴です。このCD9/SOX2陽性細胞が中葉側マージナルセルレイヤーから前葉へと移動することで,下垂体前葉の細胞供給に関与していると考えられています。これまでの研究から, CD9/SOX2陽性細胞は,前葉の各ホルモン産生細胞だけでなく,中胚葉性の血管内皮細胞へ分化することも報告されており,間葉系の性質を持つことが示唆されていました。本研究は,この下垂体前葉の成体組織幹細胞の詳細な性質と由来を明らかにすることを目的としました。これらを明らかにすることは,下垂体前葉の外科的治療によって切除した後の組織再構築に関して重要な鍵になるのではと考えます。

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