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【杏林大学】下垂体前葉の成体組織幹細胞の新たな性質と由来を同定―下垂体前葉の外科的治療後の組織再構築への応用に期待―

Digital PR Platform / 2025年1月23日 14時5分

研究概要
本研究では,下垂体中葉側のマージナルセルレイヤーのCD9/SOX2陽性細胞が外胚葉性のホルモン産生細胞と中胚葉性の血管内皮細胞に加え,他の中胚葉性の脂肪細胞,骨細胞,軟骨細胞にも分化できる間葉系幹細胞の性質を持つかどうかを検討しました。まず,抗CD9抗体を用いたビーズトラップ法によって中葉側マージナルセルレイヤーからCD9陽性細胞だけを単離し,間葉系細胞への分化能を観察しました。すると,コラーゲン培地に10%ウシ胎児血清を添加して低密度で培養すると血管内皮細胞へ分化しました。また,間葉系幹細胞用の市販の分化培養液を用いて脂肪細胞や骨細胞,軟骨細胞への分化誘導にも成功し,各間葉系細胞への分化能を持つことを証明しました(図1)。また,間葉系幹細胞マーカーとして用いられる膜タンパク質CD73,CD105,CD271,CD349がCD9陽性細胞に発現することも観察しました(図1)。続いて,このCD9陽性細胞の発生過程を調べるために,生後初期のラット切片を用いて,間葉系幹細胞マーカーなどとの二重免疫染色を行いました。すると,下垂体後葉と中葉の境界部でCD9と各抗体の共陽性細胞を観察し,後葉から中葉に細胞が侵入するような像を観察しました。しかし胎児期ではこのような細胞は観察されませんでした。さらに,CD9陽性細胞の由来を明らかにするために神経堤細胞マーカーであるP0-proteinを発現する細胞がGFP蛍光を有するP0/GFPトランスジェニックマウスを用いて観察しました。すると,中葉側マージナルセルレイヤーのGFP陽性細胞の一部がCD9陽性でした。また,骨髄間葉系幹細胞マーカーとCD9との二重免疫染色を行った結果,両陽性細胞も観察できました。以上から,下垂体前葉の成体組織幹細胞は,間葉系幹細胞の性質を持つこと,そしてその細胞の一部は生後初期の下垂体前葉の発生過程で外部組織から侵入した間葉系幹細胞に由来することが明らかとなりました。

研究の意義
本研究では,内分泌器官である下垂体前葉は,口腔の外胚葉性の細胞から発生する組織であると考えられていたのに対し,その成体組織幹細胞のCD9/SOX2陽性細胞には,生後初期に後葉側から進入する間葉系幹細胞が含まれていることを明らかにしました。今後CD9/SOX2陽性細胞の詳細な起源やホルモン産生細胞への分化機構を明らかにすることで,下垂体腫瘍における外科的治療後の補充療法として,これらの細胞を利用した組織再構築に応用できる可能性があると考えます(図1)。

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