どうして眼をこすってはいけないのか? 新たな理由を発見 ~機械的刺激が目の炎症を引き起こす仕組みを解明~
Digital PR Platform / 2025年1月24日 14時5分
本研究によって、目の結膜上皮細胞に機械刺激を加えることで、Piezo1の活性化を介して炎症性サイトカインIL-6の産生が顕著に増加し、急性炎症の主役である好中球が組織内に浸潤することが明らかになりました。この結果は、目をこする行為が単なる物理的刺激ではなく、急性炎症反応を引き起こす可能性を科学的に裏付けるものです。
【研究成果の意義】
本研究によって、目をこする行為やコンタクトレンズの装着といった機械的刺激が、結膜上皮細胞を通じて急性の炎症を引き起こしうることと、その仕組みが科学的に明らかになりました。この発見は、以下のような幅広い意義を持っています。
○眼の炎症性疾患の予防と治療
角膜疾患やドライアイなどの治療法開発につながる可能性があります。
○目の健康を守る啓発活動の強化
「目をこすらないように」といったアドバイスが、単なる衛生的な観点だけでなく、科学的根拠に基づいて重要であることを示しています。
○新たな創薬のターゲットとしてのPiezo1
Piezo1を標的とした治療薬の開発が進むことで、眼炎症の進行を抑える新しい治療法が期待されます。
【用語解説】
・結膜上皮
目の表面(白目とまぶたの内側)を覆い、異物や病原体から目を守る重要なバリアです。また、涙液中の成分を分泌する細胞もあり、眼の表面の乾燥を防ぐ役割も果たしています。本研究では、この結膜上皮が機械刺激に応答して炎症を引き起こす新たな役割を持つことが明らかになりました。
・Piezo1(ピエゾ1)
Piezo1は、細胞が圧力や引っ張りといった「機械的な刺激」を感知するためのメカノセンサー(機械感受性イオンチャネル)です。2010年に発見され、2021年にはこの研究に貢献したアーデム・パタプティアン博士がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。Piezo1はカルシウムイオンを細胞内に流入させ、さまざまな細胞応答を引き起こす役割を持っています。本研究では、結膜上皮細胞がPiezo1を介して炎症反応を引き起こす仕組みが解明されました。
*「Piezo」という名は、ギリシャ語の「圧力を加える」という意味の言葉に由来します。
・IL-6(インターロイキン6)
IL-6は、炎症性サイトカインと呼ばれるタンパク質の一種で、体内で炎症が起きたときに免疫細胞や組織から放出されます。免疫システムの調整や炎症の制御に重要な役割を果たしますが、過剰なIL-6の生成は慢性的な炎症や自己免疫疾患の原因となることがあります。本研究では、Piezo1活性化がIL-6の産生を誘導することが示されました。
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