1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

歯周炎による炎症は老化を促進して各種臓器の障害を招く

Digital PR Platform / 2025年2月3日 12時8分


<研究手法・研究成果>
まず、軽症歯周炎および重症歯周炎をそれぞれ3カ月間または5カ月間罹患させるモデルマウスを構築しました。軽症モデルでは歯に糸を巻き付け、重症モデルではさらにヒトの歯周炎の主要な起因菌である Porphyromonas gingivalis (Pg菌) を塗布しました。
このモデルマウスの下腿の筋肉についてsingle cell RNA-seq※4で解析し、1細胞レベルで遺伝子発現解析を行ったところ、遅筋が特異的に障害されていることがわかりました。また、大腿骨は最も脆弱で骨密度が低下しており、遅筋の障害とあわせてフレイルの病態を呈していました。認知機能についても検証し、歯周炎により海馬※5のミクログリア※6の増加や成体神経新生※7の減少が生じ、空間学習が障害されることが明らかとなり、モデルマウスは身体的フレイルも合併している認知的フレイル(cognitive frailty)であることが判明しました。
最も脆弱であった大腿骨に関して、治療介入により回復できるかを検証しましたが、大腿骨の骨密度を回復することはできなかったことから、一度骨密度の低下を招くと歯周炎の治療に加えて積極的な骨への加療が必要であることが判明し、歯周炎、骨への早期介入が重要であることが示唆されました。

[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2299/103435/550_357_2025020311585367a030edea804.jpg

〈図〉 歯周炎による炎症性老化とその全身への影響(論文中の図を改変)
歯周炎により炎症性老化が進み、骨密度の低下、筋力低下、認知機能の低下をきたすことが明らかになった。特に骨は脆弱であった。


<今後の展開>
今回の研究結果を通じて口腔内環境が悪く、歯周炎に罹患することで不可逆的な骨密度の低下を招き、加えて認知機能、筋肉へも悪影響があることがわかりました。しかし、内科外来診療においては、対象疾患以外に口腔内の状態や骨密度の評価が行われることは少ないのが現状です。このため、高齢者診療と歯科診療の連携による包括的な診療の重要性が示唆されました。また歯周炎により筋疲労を招くことがわかったことから、アスリートにおいても噛み合わせだけでなく、歯周病ケアの重要性が示唆されました。


<用語解説>
※1) フレイル:心身の機能が低下し、各臓器において虚弱な状態を指す。
※2) 遅筋:速筋とともに筋肉を構成する筋肉成分。持久力に優れている。
※3) 炎症性老化:炎症(inflammation)と老化(aging)を組み合わせた用語で、慢性の炎症による老化で各種疾患の発症に関与する。
※4) single cell RNA-seq:ひとつひとつの細胞レベルで全遺伝子の発現解析を行う方法。
※5) 海馬:脳内の記憶に関わる部位。
※6) ミクログリア:脳内の免疫を担っている細胞。
※7) 成体神経新生:神経細胞(ニューロン)が新たに生まれる現象のこと。


<文献情報>
●論文タイトル
Multi-organ frailty is enhanced by periodontitis-induced inflammaging(歯周炎による炎症性老化により複数臓器のフレイルが促進される)

●著者
筆頭著者:加瀬義高、森川暁
研究責任者:中川種昭、岡野栄之

●DOI
10.1186/s41232-025-00366-5   




本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください