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Gタンパク質共役型受容体Bai3欠損マウスは蝸牛形成異常と難聴を呈する--音を感知する末梢感覚器が、強くしなやかな構造を維持するメカニズムの一端を解明--北里大学

Digital PR Platform / 2023年12月21日 14時5分

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北里大学医学部の三枝智香講師、藤岡正人教授、山下拓教授らの研究グループは、慶應義塾大学医学部の柚﨑通介教授らと共同で、Gタンパク質共役型受容体であるbrain-specific angiogenesis inhibitor 3 (Bai3) がマウスの聴覚系において重要な機能を持つことを明らかにしました。私たちが外界からの音を感知する末梢感覚器が、音圧由来の振動に負けない、強くしなやかな構造を維持する分子メカニズムの一端を解明した発見です。本研究成果は2023年12月4日付でInternational Journal of Molecular Science (IF 5.6)に掲載されました。




■研究成果のポイント
・Bai3はマウス蝸牛のpillar cell【※1】で発現しており、Bai3遺伝子を欠くマウスにおいてはpillar cellの形成に異常が認められたことから、Bai3がpillar cellの形成に必須の遺伝子であることが分かりました。
・pillar cellにおけるBai3遺伝子の発現や機能が示されたことで、蝸牛pillar cell形成分子機構の一端が明らかになりました。
・Bai3遺伝子を欠くマウスは難聴を呈したことから、難聴研究のモデルマウスとして応用することで、今後の難聴発症機構の研究や治療方法の探索が発展することが期待されます。


■研究の背景
 難聴には遺伝子変異が原因の遺伝性難聴や加齢に伴う加齢性難聴、ウイルス感染による難聴など様々な種類の難聴があり、いずれも生活の質を著しく低下させる症候です。しかしながら、その発症機構は未だ不明な点も多く、根本的な治療方法はありません。
 聴覚系の末梢器官である蝸牛内には約50種類の細胞があると言われており、それらの細胞が音刺激に対して協調的に働くことで聴覚受容器としての機能が維持されています。中でもpillar cellは感覚上皮の中央に位置するコルチトンネル【※2】を形成する細胞です。コルチトンネルは感覚上皮の構造を維持し、音刺激を正確に受容し、中枢に伝える上で必須の構造ですが、コルチトンネルを形成するpillar cellの形態形成の分子機構はほとんど明らかにされていませんでした。


■研究内容と成果
 今回、研究グループでGタンパク質共役型受容体であるBai3のマウス蝸牛での発現様式を解析したところ、新生仔においては有毛細胞【※3】で、成獣においてはpillar cellでBai3が発現していることが分かりました(図1)。Bai3欠損マウス【※4】では高音域で聴力の低下を認め(図2)、さらにBai3欠損マウスのpillar cellの直径は比較対照群である野生型マウスのものより細いことが分かりました(図3)。Bai3欠損マウスの一部のコルチトンネルは潰れた形態を示しました(図4)。一方で、老齢Bai3欠損マウスにおいては、有毛細胞やらせん神経節細胞【※5】の脱落を認めました(図5)。
 以上のことから、Bai3はマウス蝸牛pillar cellの形成もしくは維持において必須の役割をもつことが分かりました。本研究により、これまで不明であったpillar cell形成分子機構の一端を明らかにすることができました。

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