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妊娠中の母親の葉酸血中濃度と乳児期の川崎病発症との関連

Digital PR Platform / 2024年1月9日 10時0分

3.研究内容と成果
 エコチル調査に登録された妊婦から生まれた104,062人の子どものうち、流産、死産、調査への協力辞退、母親の妊娠中の葉酸摂取に関する情報が得られていないなどにより対象外になった方を除いた87,702人が、本調査の対象となりました。このうち336人の子どもが1歳までに川崎病を発症しました。
 87,702人の子どもの母親を、妊娠中期から後期の葉酸サプリメント摂取頻度によって4つの群(毎日、週1回以上、月1回以上、摂取なし)に分け、母親の妊娠中の血液中の葉酸濃度の分布を検討したところ、サプリメント摂取頻度が高い群ほど葉酸濃度もより高くなるという傾向が明らかになりました。
 さらに、母親の血液中の葉酸濃度や葉酸サプリメント摂取頻度と子どもの川崎病発症との因果関係を評価するために、プロペンシティスコア解析の手法を用いて検討しました(表参照)。その結果、妊娠中期から後期の血液中の葉酸濃度が高い母親から生まれた子どもは、生後12カ月までの川崎病の発症頻度が約30%低いことが明らかになりました。また、妊娠中期から後期の葉酸サプリメント摂取頻度が高い母親から生まれた子どもも、川崎病の発症頻度が約30%低い傾向が示されました。一方、母親の食事からの葉酸摂取量は、川崎病を発症した子どもと発症しなかった子どもの間では差がなく、葉酸サプリメントの摂取が血液中の葉酸濃度を高めていることが分かりました。
 葉酸はビタミンB群の一種に分類される必須の栄養素です。特に、胎児の神経管閉鎖障害の予防効果は多くの研究によって証明されていることから、多くの国々で妊娠前から妊娠初期の葉酸サプリメント摂取が推奨されています。今回の研究結果は妊娠中、特に中期から後期の葉酸サプリメント摂取は母親の血液中の葉酸濃度を高め、その結果として子どもの川崎病の発症リスクを下げる可能性があり、改めて妊娠全期間を通しての葉酸サプリメント摂取が推奨される根拠を示したと考えられます。

4.今後の展開
 今回は、生後12カ月までに川崎病を発症した子どもを対象に研究を行いました。川崎病は大半の患者が6歳までに発症することから、今後は解析年齢を6歳まで拡大し、出生後の他の因子も含めて、川崎病の発症に関連する因子について探索します。その際、本研究で検討した母親の妊娠中の血液中の葉酸濃度や葉酸サプリメントの摂取との関連についても再検討する予定です。また、母親の妊娠中の血液中の葉酸濃度が、何歳まで生まれた子どもの川崎病の発症を減らす可能性があるかについても解析を進める予定です。

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