糖脂質を標的にしたタンパク尿治療効果を確認 ~透析患者数の減少を目指して~ 北里大学
Digital PR Platform / 2024年1月18日 14時5分
■研究の背景
慢性腎臓病は成人の8人中1人に存在していると推定されており、新たな国民病といわれています。慢性腎臓病の患者の中でも、タンパク尿の量が多いほど、透析療法や腎移植といった治療が必要となる危険性が高くなることが知られています。腎臓は生物が生きていく過程で生じた老廃物を体外に捨てる仕事をしています。その際、身体に必要なタンパク質が体外に漏れ出ないように、タンパクろ過バリアと呼ばれる「ふるい」の役割をしている場所があります。この「ふるい」が、腎足細胞が形成しているスリット膜と呼ばれる構造物です。タンパク尿はこのろ過バリアであるスリット膜が破綻することで、血液中のタンパク質が尿中に漏れ出てしまう状態のことです。さらに、タンパク尿は腎臓病を更に悪化させるだけでなく、脳卒中や心筋梗塞などの発症率を約3倍以上高めるリスクになることもわかっています。
本研究グループはこれまで、糖脂質GM3が腎足細胞間に形成されるスリット膜を構成するネフリンと協調しながら足細胞の機能を維持していることを明らかにしてきました(Clin Exp Nephrol, 2022; 26(11):1078-1085, Sci Rep, 2022;12(1):16058)。しかし、GM3のタンパク尿や腎機能に対する治療的効果は不明でした。
■研究内容と成果
本学医学部腎臓内科学で樹立したネフリンに対する抗体で惹起されるネフローゼ症候群モデルマウス (Nephron, 2018;138(1):71-87)に対して、抗てんかん薬でもあるバルプロ酸を投与してGM3合成酵素遺伝子の活性化を亢進させたところ、足細胞膜に発現するGM3が同細胞膜上のネフリンの障害の程度を軽微に留めることで、タンパク尿および腎機能の遷延・悪化を抑制する効果があることを明らかにしました【図1, 2】。さらに、前述の処理により病態下においても足細胞と糸球体基底膜を結合しているインテグリンβ1の発現維持を介して足細胞数の減少も阻止できていました。これらのことから、足細胞膜に発現するGM3は、同細胞膜に発現しスリット膜を形成するネフリンだけでなく、他の細胞膜タンパク質とも相互作用し、総合的に足細胞の障害の進行を抑制していることが示唆されました【図3】。
また本研究グループは、最大の透析導入の原因疾患である糖尿病性腎症に対するモデルマウスを用いた試験でも、バルプロ酸によるGM3合成酵素遺伝子の活性化を介してタンパク尿や腎機能悪化に対する治療効果を見出していることや、糖尿病性腎症患者の糸球体足細胞におけるGM3の発現の低下を確認しています(Int J Mol Sci, 2023; 24(14):11355)。これらの結果から、GM3を標的とした(新たな)薬剤治療が様々なタンパク尿を伴う腎疾患に応用可能であることが期待されます。
この記事に関連するニュース
-
第61回ERA(欧州腎臓学会)学術大会:画期的な研究結果によると、セマグルチドが2型糖尿病と慢性腎臓病を合併した患者において、重大な腎疾患イベント、心血管合併症、および死亡リスクを大幅に低減させることが明らかになりました
共同通信PRワイヤー / 2024年5月27日 9時34分
-
メガリンの立体構造とリガンド結合様式を解明
Digital PR Platform / 2024年5月24日 11時0分
-
SGLT2阻害薬治療早期の一時的な腎機能低下に影響を与える因子と腎予後との関連性を明らかに
Digital PR Platform / 2024年5月22日 10時0分
-
誠心堂薬局、慢性腎臓病に対する無料のオンライン漢方相談開始 「漢方の役割」をホームページに公開しました
@Press / 2024年5月17日 11時30分
-
腎臓病や糖尿病の方のかかりつけ薬剤師・薬局に関するアンケートを開始
PR TIMES / 2024年5月10日 15時15分
ランキング
-
1トヨタなどで不適切事案発覚 認証不正受け調査、国交省公表へ
共同通信 / 2024年6月1日 18時40分
-
2スバルの「新・水平対向エンジン」何が凄い? トヨタハイブリッドを独自進化させた“スバルらしさ” 新型「フォレスター&クロストレック」に搭載へ
くるまのニュース / 2024年5月31日 12時10分
-
3秋田で半世紀親しまれる「うどん・そば自販機」、「断腸の思い」で50円値上げ
読売新聞 / 2024年6月1日 13時57分
-
4電気代値上げが『賃上げ』『減税』効果を台無しに【播摩卓士の経済コラム】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年6月1日 14時0分
-
5「止まれ」かと思ったら…ナニコレ!? 「日本唯一」激レア道路標識、なぜできた?
乗りものニュース / 2024年6月1日 16時42分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください