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【東京農業大学(共同研究)】光合成微生物シアノバクテリアにおける新奇プラスミド複製因子の発見

Digital PR Platform / 2024年2月15日 10時53分

発表内容
 CO2を固定しつつ炭素化合物を合成する光合成微生物シアノバクテリアは、大腸菌や枯草菌などのモデル微生物とは異なり、複数の大型のプラスミドを持つ種が数多く見つかっています。プラスミドは細胞内で複製されることで維持されますが、複製機構が同じプラスミドは同じ細胞では共存できません(不和合性と呼ばれます)。シアノバクテリアが複数のプラスミドを同じ細胞に持つということは、それぞれのプラスミドの複製機構が異なっており、互いに協調しながら細胞機能を担うと考えられます。しかしながら、シアノバクテリアにおいてプラスミドの複製に関する情報は極めて限られていました。
 Synechocystis sp. PCC 6803 (以下PCC 6803) は一番最初に全ゲノム配列情報が完全解読されたシアノバクテリアであり、主染色体の他に4つの大型プラスミド(pSYSM, pSYSX, pSYSA, pSYSG)を持つことが知られています(図1)。研究グループは、これまでにpSYSAの複製に関わる因子CyRepAを同定しましたが (文献1, 2)、他の大型プラスミドの複製因子は不明でした。本研究ではPCC 6803のゲノムライブラリーを用いた網羅的スクリーニングを実施し、新たに複製活性を持つ領域を二箇所(slr6031、slr6090遺伝子)見つけました(図2)。この二つの遺伝子は共にpSYSX上に存在しており、配列が酷似していることから同様の機能を持つホモログであると考えられました。
 slr6031、slr6090遺伝子がコードするタンパク質Slr6031、Slr6090は幅広いシアノバクテリア種に保存されている一方で、その機能は配列情報だけからでは全くわかりませんでした。そこで立体構造予測プログラムを用いて解析を進めた結果、Slr6031、Slr6090の立体構造が他の微生物が持つDNA複製関連タンパク質と似ていることに気がつきました。次にslr6031、slr6090遺伝子を用いて発現ベクターp6031およびp6090を構築し異種のシアノバクテリアであるSynechococcus elongatus PCC 7942(以下PCC 7942)を用いて複製活性を評価しました。p6031およびp6090は共にPCC 7942において保持されたことから、Slr6031/Slr6090を新規の複製因子としてCyRepX (Cyanobacterial Rep-related protein encoded on pSYSX)と命名しました(図3左)。
 さらに研究グループはp6031/p6090の有用性を検証しました。CyRepA配列を用いて作られたpYSベクターと比較すると、CyRepXを搭載するp6031/p6090ベクターの細胞内でのコピー数は少なく、GFPの発現量や安定性は低いことがわかりました。しかし興味深いことに、PCC 7942細胞内においてp6031/p6090はpYSや他のプラスミドと共存できることが示され、PCC 6803の細胞内で起こっている「プラスミド同士の協調」を人為的に再現することができました(図3右)。
 シアノバクテリアはカーボンニュートラルな次世代の有用物質生産ホストとして期待されています。CyRepXの発見はシアノバクテリアにおけるプラスミド複製の理解だけでなく、新しい遺伝子工学ツールの開発にも貢献できる画期的な成果です。

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