がん細胞が進行方向を決める仕組みを解明--北里大学
Digital PR Platform / 2024年2月19日 14時5分
■研究内容と成果
今回、研究グループは、ARHGAP24遺伝子産物であるFilGAPが、細胞がEGFを受け取った後に、細胞内シグナル伝達(※3)を通じて、タンパク質リン酸化酵素であるRSKとGSK3によって順番にリン酸化されることを発見しました。がん細胞がEGFを受け取ると、細胞に仮足が作られます。しかし、FilGAPがリン酸化されないようにすると、仮足が作られなくなりました(図2)。また、がん細胞がEGFを受け取ると、細胞が移動する際の足場となるコラーゲンと接着するための「接着斑」と呼ばれる構造が少なくなりました。ところが、FilGAPがリン酸化されないようにすると、細胞がEGFを受け取っても接着斑が減りませんでした(図2)。上皮がん細胞は身体の中では、結合組織中のコラーゲン繊維の中を移動します。今回、この身体の中をがん細胞が移動する様子をシャーレの中で再現し、がん細胞がEGFに向かってコラーゲン繊維中を運動する様子を観察しました。そして、FilGAPのリン酸化による「仮足」と「接着」の制御が、がん細胞がコラーゲン繊維中をEGFの方向に向かって運動する際の「方向決定」と「移動速度」の制御にそれぞれ重要であることが明らかとなりました (図3)。
■今後の展開
今回、がん細胞が上皮成長因子に向かって運動するためにFilGAPのリン酸化が必要であることを明らかにしました。しかし、FilGAPのリン酸化が実際にどのようながんで起こっているかはまだ分かっていません。今後、どのようながんでFilGAPのリン酸化が起こっているかを明らかにし、そのリン酸化を阻害することで、がん細胞の浸潤・転移を防ぐ方法の開発に繋がることが期待されます。また、がん患者でFilGAPのリン酸化を調べることで、がんの進行状態を調べるマーカーの開発へと繋がることも期待されます。
■論文情報
・掲載雑誌名:PNAS Nexus
・論文名:RSK/GSK3 mediated phosphorylation of FilGAP regulates chemotactic cancer invasion
・著者名:堤 弘次(筆頭著者、責任著者)、太田 安隆
・DOI:10.1093/pnasnexus/pgae071
本研究は、文部科学省科学研究費補助金、上原生命科学財団、北里大学学術奨励研究の支援のもとでおこなわれたものです。
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