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◆関西大学法学部・坂本治也教授らが検証「過去の大規模社会運動の否定的評価は政治参加にどう影響するのか」◆~なぜ日本人の政治参加は他国と比べて低水準なのだろう?~

Digital PR Platform / 2024年3月4日 14時5分





■ 研究の背景
 これまでの先行研究の知見に基づく日本人の政治参加意識は、儒教的価値観や集団主義といった文化、社会的ネットワークの弱さ、経済的不平等の拡大、政治参加を抑制する制度の存在といった観点から説明することが可能でした。しかし、これらの理論的説明では十分な説明がつかないことも多く、文化説や社会的ネットワーク説、不平等拡大説、制度説などは、日本の政治参加の低調さ、およびその時系列的な減少傾向についての既存の理論的説明は十分なものと言えません。
 そこで本研究では新たな理論的説明として、過去の大規模な社会運動に対する否定的評価が政治参加水準に与える影響に着目しました。つまり、日本人の政治参加が他国の人々に比べて低調であり時系列的にも低下しているのは、過去の社会運動に対する悪いイメージが投票参加を除いた政治参加全般に投影されて、投票参加以外の政治参加への強い忌避感を生じさせているためではないか、との仮説を立て、その仮説の検証を本研究で行いました。





■ 研究の内容
 本研究は、1960 年安保闘争、1960 年代末の全共闘運動、2015 年安保法制抗議行動という3つの大規模社会運動についての否定的評価が人々の政治参加水準とどのように関連しているのかを、シノドス国際社会動向研究所が2020年に実施した「第四回『新しいリベラル』を可視化するための意識調査」のデータを用いた定量的分析によって明らかにしました。
 仮説として過去の社会運動に対する否定的評価が現在の社会運動イメージに限らず、投票参加を除いた政治参加全般に負の影響を及ぼしているのではないかと推察しました。
 分析の結果、1960 年安保闘争や2015 年安保法制抗議行動への否定的評価は、投票参加以外の政治参加に対して有意な負の影響を与える関係にあること、また全共闘運動への否定的評価についてはそのような関係が見られないこと、が明らかとなりました。

 この結果、日本人の政治参加の低調さは、過去の大規模社会運動に対するネガティブな記憶によって規定されてしまっているのではないか、という結論に至りました。





■ 社会的な意義
 本研究の知見に基づけば、日本において投票以外の政治参加の水準を引き上げていくためには、過去の大規模社会運動についての「暴力的で怖い」「秩序を乱す」「非現実的,非寛容的」といった悪いイメージは、必ずしもすべての政治参加形態に当てはまるわけではない、という点を広く人々に理解してもらうことが重要です。
 しかし、現状では投票参加以外の政治参加の実態やその意義は、人々に十分認識されていません。それゆえに、象徴的なインパクトが大きい1960年安保闘争や2015年安保法制抗議行動のイメージが「投票以外の政治参加」を認識する際の手がかり(cues)として利用されている可能性があります。「投票以外の政治参加に関わるのは、危なくて、怪しくて、無意味」といった誤った単純化を防ぐためには、政治参加の多様な実態とその意義について、より深い理解を広めていく必要があります。

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