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植物の精細胞放出を制御する簡便な方法を開発

Digital PR Platform / 2024年3月18日 10時0分


研究内容
 まず、この青色光照射による花粉管破裂がシロイヌナズナ以外の他の植物種でも見られる現象であるかどうかを調べました。その結果、トレニアやベンサミアナタバコにおいても観察され、他の植物種にも共通した現象であることを確認しました(図2)。さらに、青色光を花粉管の一部にだけ照射する実験により、青色光は花粉管の先端付近に作用することで破裂を誘導していることが明らかとなりました。この花粉管破裂時のカルシウムパターンを明らかにするために、カルシウムセンサーであるGCaMP*2を発現させた花粉管の観察を行いました。その結果、青色光照射後にカルシウムイオンが流入している様子が観察されました(図3)。このことから、青色光には花粉管に対してカルシウムイオン流入を誘導する作用があり、これにより花粉管破裂が起こることが示唆されました。




[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/84896/350_166_2024031415052865f293a8ebb1c.jpg


図2 シロイヌナズナ以外の植物種における青色光による
花粉管破裂誘導
矢尻は破裂した花粉管を示す。












[画像3]https://digitalpr.jp/simg/1706/84896/350_309_2024031415080265f2944255e0f.jpg


図3 花粉管のカルシウムイメージング
上:青色光非照射時におけるGCaMPの蛍光像。花粉管先端から基部側に向かってカルシウムイオンの濃度勾配が形成されている。



下:青色光照射時におけるGCaMPの蛍光像。青色光照射後、花粉管基部側に向かってカルシウムイオン濃度上昇が観察され、その後花粉管は破裂した(矢印)。




今後の展開
 花粉管から放出された精細胞は、さらに精細胞の外側を覆う内部形質膜の崩壊による精細胞膜の露出、そして卵細胞分泌性ペプチドの作用による細胞膜融合因子の活性化を通して受精可能な状態になると考えられています。シロイヌナズナを材料とした研究において重複受精は花粉管破裂後約7分程度で完了する素早い現象であることが示されており(参考文献1)、精細胞の活性化も数分以内には完了すると考えられます。しかし、その反応の素早さゆえに、重複受精完了に至る過程の全容解明が困難でした。花粉管破裂にはメス組織で産生されるペプチドや活性酸素種が関与することが報告されており、これらを添加することによって花粉管破裂を誘導できることは知られていました。しかしながら、顕微鏡観察下におけるこれらの添加には一定以上の顕微操作技術が必要であること、添加した液体によって観察対象が移動してしまうため経時的な観察に不向きであること、破裂効率が低いことなどの問題点がありました。
 本研究により煩雑な操作をせずとも任意のタイミングで観察対象のブレを最小限に抑えて人為的に花粉管破裂を誘導することが可能となりました。これにより、内部形質膜の崩壊および細胞膜融合因子の活性化過程についてより時空間的に解像度の高い解析が可能となり、精細胞活性化の全容解明に貢献すると考えられます。また、異なる種間の交雑では花粉管が卵細胞の付近まで伸長するもの花粉管破裂が起こらないために受精に至らず雑種が形成できない場合が知られています。このような組み合わせに対して本研究で明らかになった方法を適応することにより、これまでになかった組み合わせの雑種を得られる可能性があり育種への利用なども考えられます。

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