1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

【東京農業大学】「食と農」の博物館で企画展「美しき土壌の世界」を開催

Digital PR Platform / 2024年4月3日 14時0分

[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2209/86096/450_300_2024032115453065fbd78ab0497.JPG

この土壌という環境は、構造体を構成する無機的な材料(母材)の質、地形、気温や降水量といった気候条件、植物の多さや森と草原といった種類の違いや田んぼや畑などの土地利用の違いなどの要因によって形成されます。そのため、土壌は、これらの要因の組み合わせのバリエーションに応じて、多様性が生じてきます。
また、土壌は時間とともに変化します。土壌の生成プロセスには、数日から数十万年といった幅広い時間スケールが関わってきます。自然の作用や人間の活動によって、土壌は常に変化し続けています。例えば、無機的な材料(母材)が何かしらの岩石だった場合、岩石が時間とともに風化されて粘土鉱物といった新しい材料(鉱物)が形成されます。この風化の速度やタイプは母材の質や気候条件によって異なります。また、もう一つの材料である有機物は、微生物や土壌動物によって分解され、土壌中に新たな有機的な材料(腐植)が生成されます。この腐植の生成プロセスも時間とともに変化し、土壌の炭素の含有量や分解速度に影響します。植物が土壌で発芽し、成長するのにも時間が必要です。以上のように、土壌は時間とともに変化する環境ですし、また、変化してしまう環境だということを認識する必要があります。もし、この変化が私たち人間にとって好ましくない変化であった場合、これを修復するのは大変です。
土壌は、様々な要因の組み合わせでできた環境であると同時に、様々な要因に対して影響を及ぼします。例えば、土壌は植物の生育に不可欠な栄養素や水分を供給する場所です。根が土壌中に成長し、そこから水や栄養素を吸収して植物の成長と発育を支えています。そのため、土壌から供給される植物にとって必要な養分量が、植物の種類や量を規定する要因の一つになります。また、土壌は多様な微生物、土壌動物、植物の生活空間として機能し、生物多様性を支えています。微生物は土壌中の有機物の分解や養分循環に重要な役割を果たし、土壌動物は土壌中の有機物を分解して養分を再循環させたり、土壌の構造形成に貢献したりしています。土壌は微生物、土壌動物、植物の生活空間ですので、この空間が変化すると生物多様性の維持や養分循環に影響がでます。もし、仮に生物多様性が低下すると、生態系の安定性や機能性が損なわれる可能性がでてきますし、土壌中の元素循環が円滑に行われないと、植物への養分供給能が低下して生態系内のエネルギーフローが不安定になると予想されています。このような土壌を含めた自然環境が提供する生物に対する恩恵や利益を生態系サービスと言いますが、これらのサービスは人間の生活や経済活動に不可欠であり、人間社会の持続可能な発展に重要な役割を果たしています。土壌がもたらす生態系サービスが劣化すると、微生物多様性が減少し、土壌病害の発生が増加することで作物の収穫量や品質が低下し、食料不足や食糧安全保障のリスクが高まる可能性がでてきます。また、土壌が劣化して植生が貧弱になると、洪水や土砂災害の発生確率が高まる可能性や二酸化炭素の吸収量が減少することで温室効果ガスの放出量が増加する可能性があります。
一方で、土壌が地球上にいる全ての生物にとって好ましい変化するのであればどうでしょうか。長い歴史の中で地球は温暖化が進む時期に来ています。この事実は変わりませんが、土壌に炭素を貯めることで、地球温暖化が緩和できる可能性があります。最近の研究では、適切な土壌管理や土壌改良によって、土壌がより多くの炭素を吸収・貯留し、地球温暖化の進行を抑制することができることが明らかになっています。逆に不適切な土壌利用による土壌の劣化が土壌中の炭素の放出を増加させ、地球温暖化や気候変動の進行を加速させることも明らかになっています。地球の炭素循環において非常に重要な役割を果たしている土壌という環境をいかに理解して、地球上にいる全ての生物にとって好ましい方向に変化させるかが、これからの地球環境全体の持続的な健康を維持するために不可欠だと思います。」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください