1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

海産微細藻類における窒素固定型シアノバクテリアのオルガネラ化(細胞内小器官化)の進行を明らかに

Digital PR Platform / 2024年4月15日 14時5分





<今後の研究への応用の可能性>
1) 生物の細胞内共生進化の基礎研究への貢献
細胞内共生は生物の進化を駆動する重要なプロセスです。例えば、真核生物のエネルギー代謝を行うミトコンドリアは、真核生物の祖先であった生物が、好気性バクテリアを細胞内に取り込んだ後に、オルガネラ化することによって形成されました。また、光合成を行う葉緑体は、真核生物がシアノバクテリアを細胞内に取り込んでオルガネラ化することによって形成されました。
本研究でB. bigelowiiの培養株の長期安定培養が実現し、その解析を行った結果、B. bigelowii 細胞内のシアノバクテリア由来のUCYN-Aのオルガネラ化が進行していることが示されました。そしてこのUCYN-Aは、窒素固定に関わるオルガネラとして分化の途上にある「ニトロプラスト」であると提唱するに至りました。
今後、B. bigelowii 株の研究を進めることにより、細胞内共生進化とオルガネラ化の基礎研究に貢献することが期待できます。さらに、この「ニトロプラスト」を細胞内に安定的に保持するメカニズムが明らかになれば、農業上重要な植物への窒素固定能の付与による、窒素肥料の必要が無い食用植物の創生への道が開かれることも期待されます。

2) 海洋における窒素循環研究への貢献
植物の光合成には窒素が必要です。窒素は地球の大気の78.1%を占めるありふれた元素ですが、植物は大気中の不活性な窒素分子をそのまま光合成に使用することはできません。不活性な窒素分子は、窒素固定を行う細菌や古細菌によって反応性の高い窒素化合物に変換されることによってはじめて、植物が光合成に使用できるようになります。そのため、窒素固定細菌の生態やそれらによる窒素固定量の把握は、生態系を理解する上でも重要です。
環境DNA解析によって海水中から発見されたUCYN-Aは、窒素固定に関わる遺伝子群を保持しており、かつその現存量が多いことから、海洋における窒素循環において重要な役割を果たしていると考えられてきました。このUCYN-A は、光合成や代謝に関わる重要な遺伝子を欠損しているため、単独では生存・培養できません。そのため、実験環境下でUCYN-Aによる窒素固定に関するより詳細な研究を行うためには、その共生宿主であるB. bigelowii を含めた培養株の確立が望まれていました。
本研究でB. bigelowii(UCYN-A)の長期安定培養が実現したことにより、実験環境下におけるB. bigelowii (UCYN-A)による窒素固定量の見積もりが可能になりました。今後、本B. bigelowii (UCYN-A)培養株を用いた実験が進められることにより、全地球規模での海洋の窒素循環における、本生物の果たす役割の解明が期待されます。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください