「多階層的アプローチ」でトランスポーターの隠れた働きを解明
Digital PR Platform / 2024年4月24日 11時41分
研究背景
栄養素や代謝物などの微少分子は、すべての生物の細胞活動を駆動するために不可欠であり、これらの分子のバランスを保つことが健康を維持するために重要です。細胞内外の小分子の濃度制御は、細胞膜上のトランスポーターによって担われているため、トランスポーターは細胞レベルだけではなく、生体全体のシステムレベルにおいても小分子のホメオスタシスに重要な役割を果たしています。
トランスポーターの機能不全は、代謝異常、神経疾患、尿結石など、多くの疾患を引き起こします。一方で、ヒトでは500以上のトランスポーター分子が同定されているにもかかわらず、特に複雑な生理学的状態または病態生理学的状態に関与する微量な小分子の輸送を制御するために、どのようなトランスポーター分子が働き、他の分子と協働しているかを理解することは依然として困難です。
例えば、アミノ酸であるセリンの微量な立体異性体であるDセリンは、神経伝達において重要な役割を果たすことが知られており、最近では急性腎障害(AKI)および慢性腎臓病(CKD)のバイオマーカーとして注目されています。しかしながら、腎臓におけるDセリンの輸送メカニズムは不明でした。
研究内容
研究チームは、生体内の複雑な環境で複数のトランスポーターがどのように協力して働いているのかを調べるための研究方法として「多階層的アプローチ」という手法を用いました。この方法は、生体レベルから細胞や分子のレベルまで、さまざまなスケールで生命現象を解析・連係することで、トランスポーターの生体内での機能を明らかにすることができます。網羅的な手法で体液や臓器レベルから代謝物や遺伝子、タンパク質の変動を解析し、バイオインフォマティクスを用いてデーターを統合し、候補分子群を選別します。
さらに、スクリーニング系および輸送機能解析系により、トランスポーターの機能を解析することで成り立ちます。本研究では、微量な微小分子(D-アミノ酸)の変化を検出する「メタボロミクス」、生理的状況の変化により変動するトランスポーター分子を見つける「プロテオミクス」、目的の小分子を輸送する可能性のあるトランスポーターを選ぶ「スクリーニング」、任意のトランスポーター分子のみの機能解析が可能な「無細胞システム(リポソーム再構成系)」、そして生理的なトランスポーターの協力関係を制御することが可能な「生体組織を用いた(ex vivo)輸送解析」などの手法を組み合わせています(図1)。
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