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がん抑制に重要な役割を果たす転写伸長マークが導入されるメカニズムを解明

Digital PR Platform / 2024年4月30日 10時0分

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―がん発症メカニズム理解への手がかりに―



 横浜市立大学医学部生化学教室の大西修平さんと緒方一博教授、仙石徹准教授らの研究チームは、クライオ電子顕微鏡*1を用いて、転写伸長に関与するヒストン修飾であるヒストンH2Bのユビキチン*2化を導入する酵素(Bre1複合体、別名RNF20-RNF40複合体)がヌクレオソーム*3に結合した状態の立体構造を決定しました。これにより、Bre1複合体がヒストンH2Bを特異的にユビキチン化するメカニズムが明らかになり、またその活性がヌクレオソームDNAの柔軟性で制御されている可能性が示唆されました。本研究は、ヒストンH2Bのユビキチン化レベル低下を伴うがんの発症メカニズムの詳細な理解と新しい診断法や治療法の開発につながる可能性があります。
 本研究成果は、2024年3月22日付で科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。

研究成果のポイント 
・ヒストンH2Bユビキチン化酵素Bre1複合体がヌクレオソームに結合した立体構造を決定
・ヌクレオソーム上のヒストンH2Bを特異的にユビキチン化するメカニズムを解明
・がん抑制因子であるユビキチン化H2Bの低下によるがん発症メカニズム理解への手がかりを提供







研究背景

 真核生物のゲノムDNAとヒストンやその他のタンパク質は結合してクロマチン構造をとり、また様々な位置でアセチル化・メチル化・リン酸化・ユビキチン化などの修飾を受けることで転写・複製・修復などの現象が制御されています。クロマチンの適切な修飾はゲノム機能に必須であり、その破綻は遺伝病やがんなど様々な病気の原因となります[1]。
 クロマチン修飾の中で、ヒストンのリジン残基のユビキチン化は様々な部位で起こり、その部位によって異なる生命現象を引き起こします。例えばヒストンH2Bのリジン120(H2BK120)のユビキチン化は転写伸長やDNA修復を制御するのに対して、ヒストンH2Aのリジン119のユビキチン化は転写抑制を引き起こします。
 ヒトにおいて、H2BK120はBre1AとBre1Bという2種類のタンパク質からなる複合体(Bre1複合体)によってユビキチン化されます。乳がん・大腸がん・肺がんなどで細胞内のユビキチン化H2BK120レベルやBre1Aレベルの低下が観察されることから、ユビキチン化H2BK120はがんを抑制する働きを持っていると考えられています。これまでに、Bre1複合体がどのようにH2BK120だけをユビキチン化するのか、またその活性がどのように制御されているのかは詳しく分かっていませんでした。

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