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III型分泌装置阻害剤aurodoxの作用標的をPurAと同定--北里大学

Digital PR Platform / 2024年4月26日 14時5分

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北里大学大村智記念研究所の大村智特別栄誉教授、浅見行弘教授、阿部章夫教授、渡邊善洋特任助教、君嶋葵講師、薬学部の羽田健講師らと、東北大学大学院薬学研究科の岩渕好治教授、星薬科大学薬学部・医薬品化学研究所の叶直樹教授らの研究チームは、グラム陰性病原性細菌に高度に保存されているIII型分泌装置 (T3SS) の阻害剤であるaurodox の作用標的同定に関する研究を行った。




 この研究では、aurodoxがアデニロコハク酸合成酵素 (PurA) に結合し、T3SSからの分泌タンパク質の産生を抑制することを明らかにした。また、in vitroおよびin vivo実験の両方で、purAを破壊した細菌の病原性が著しく低下したことなどから、aurodoxの作用標的をPurAと同定した。今回の発見は、T3SSの機能におけるPurAの重要性を示唆するとともに、aurodoxの創薬シードとしての可能性と、抗感染症薬やワクチン開発の標的としてのPurAの新たな道を開くものである。
 本研究成果は2024年4月19日に学術誌 Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS) に公開された。


■研究の背景
 薬剤耐性 (Antimicrobial resistance: AMR) は、人類の健康にとって最大の脅威のひとつである。AMRの出現と新薬開発の間の絶えることのない戦いは、従来の抗菌薬によるアプローチが続く限り、止めることは極めて困難である。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌などの多剤耐性グラム陰性菌は、ほとんどのメロペネムやカルバペネム系抗菌薬および広域スペクトルを有するβ-ラクタム薬に対しても耐性を持つことが知られており、その感染症の治療は困難である。この問題を克服するために、本研究チームは、多くのグラム陰性病原性細菌に高度に保存されているIII型分泌装置 (Type III secretion system: T3SS) に着目した。T3SSは、病原因子を宿主細胞への注入を担っている病原細菌の装置 (仕組み) であり、細菌の病原性発揮には必要不可欠であるが、生存には必須ではないことが知られている。したがって、T3SS阻害剤は、治療抵抗性株に対する進化的選択圧を劇的に減少させる革新的な抗感染症薬となりうる (図1)。このコンセプトに基づき、本研究グループは独自のスクリーニング系を用いて、ポリケチド系天然化合物であるaurodoxをT3SS阻害剤として同定した。Aurodoxは、腸管病原性大腸菌 (enteropathogenic Escherichia coli: EPEC) の生育を阻害する濃度よりも33倍低い濃度でT3SSに依存した赤血球の溶血作用を阻害した (図2)。
 また、T3SSを保有するCitrobacter rodentium (CR) 感染マウスモデルを用いたin vivo感染実験において、aurodoxを経口投与したマウスは致死的な感染症に罹患しても生存することを明らかにし、微生物由来のaurodoxがT3SS阻害を介して治療効果を発揮することを世界で初めてin vivoで実証した。
 このように、aurodoxは新しい抗感染症薬として期待されていたが、aurodoxの作用標的は不明なままであった。

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