微小な“ねじれ”を由来とするタンパク質結晶の不完全性の観測に成功
Digital PR Platform / 2024年5月8日 10時0分
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図2 P-GI結晶の(a)デジタルX線トポグラフ像と(b)回折角度位置のマッピング図
さらに興味深いことに、結晶がねじれているにもかかわらず、I-GI結晶と同様に結晶の完全性を由来とするX線の動力学的回折*7現象が観測されました。具体的には、ロッキングカーブの振動現象です。この動力学的回折現象はダイヤモンドやSi結晶など、極めて完全性の高い限られた結晶でしか観察されていません。しかし、P-GI結晶で観測されたふるまいは、Ⅹ線の動力学的回折理論から予測されるふるまいからわずかにずれていることが分かりました(図3)。さらに、結晶のねじれが大きいほど、理論からのずれが大きくなることが分かりました。これはP-GI結晶の不完全性が“ねじれ”に起因していることを示しています。すなわち、“ねじれ”が結晶の不完全性として残された最後の欠陥であり、“ねじれ”の制御が結晶の品質制御に重要であることを示しています。
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図3 (a) P-GI結晶のロッキングカーブの実測値と理論曲線,
(b) ねじれの大きさとロッキングカーブの理論曲線との一致度合いの相関
R2は1に近いほど、実測値が理論予測に近いことを意味する。
完全結晶であるI-GI結晶とねじれ結晶であるP-GI結晶の結晶構造データより、I-GI結晶のGI分子間の接触(相互作用)は等方的である一方、P-GI結晶では分子間接触が異方的であることが分かりました(図4)。結晶の“ねじれ”の原因について、これまでにいくつかメカニズムが提案されていますが、そのほとんどが温度や圧力などの外的な環境因子により説明されています。一方、これまで本研究グループが発見したタンパク質結晶の微小な“ねじれ”の起源は、結晶を構成するタンパク質分子の形状に由来することを提案してきました。本研究により、同一分子から完全結晶とねじれ結晶が観測されたことで、ねじれの起源として分子間接触の異方性を提案することができ、結晶のねじれの起源解明に一歩前進しました。また、結晶を構成する分子を由来とするより原理的で本質的な“ねじれ”のメカニズムとして注目される理論モデル「geometrical frustration(幾何学的フラストレーション)」を改善できる重要な実験的証拠となる可能性があります。
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