SGLT2阻害薬治療早期の一時的な腎機能低下に影響を与える因子と腎予後との関連性を明らかに
Digital PR Platform / 2024年5月22日 10時0分
![SGLT2阻害薬治療早期の一時的な腎機能低下に影響を与える因子と腎予後との関連性を明らかに](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/digitalprplatform/digitalprplatform_88485_0-small.jpg)
―日本腎臓学会の大規模データベースJ-CKD-DB-Exにより新たなエビデンスを創出―
横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学の金岡知彦診療講師、涌井広道准教授、田村功一主任教授、川崎医科大学高齢者医療センター 柏原直樹病院長、同学腎臓・高血圧内科学教室 長洲一准教授、順天堂大学大学院医学研究科総合診療科学 矢野裕一朗教授らの国内の複数の大学病院からなる研究グループは、慢性腎臓病患者包括的縦断データベース(Japan Chronic Kidney Disease Database: J-CKD-DB-Ex)を活用して、SGLT2阻害薬*1投与開始後の腎機能(GFR、糸球体濾過量)の初期低下(イニシャルドロップ/イニシャルディップ)に影響を与える因子を明らかにし、その腎予後との関連性を調べました。この大規模データベース研究により、腎臓病のリアルワールドデータ(医療現場の臨床情報)における新たなエビデンスが創出されました。
本研究成果は、「Diabetes, Obesity and Metabolism」誌に掲載されました(日本時間2024年5月9日)。
研究成果のポイント
イニシャルドロップに関係する因子として、レニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害剤や利尿剤の併用、尿中タンパク高値、およびSGLT2阻害薬投与開始前のGFRが関連していることを明らかにした。
CKD患者に対してSGLT2阻害薬の投与開始時に利尿薬を使用していることが、イニシャルドロップに最も強く関連していることをリアルワールドデータの解析を通じて明らかにした。
SGLT2阻害薬投与開始後のGFRイニシャルドロップが最も大きかった四分位に属するCKD患者では、他の四分位に属する患者よりもその後の複合腎エンドポイント(持続的なGFR50%以上の低下、もしくは末期腎不全への進行)の発生リスクが高い。
研究背景
日本腎臓学会では、CKD患者を対象とした包括的縦断データベース(Japan Chronic Kidney Disease Database: J-CKD-DB-Ex)を構築しています。全国20数大学が参加し、CKD患者を自動抽出するアルゴリズムを開発、電子カルテシステムSS-MIX2を用いてデータを直接収集しています。SS-MIX2は、厚生労働省による医療情報の電子化・標準化をすすめる事業の一環であり、電子カルテ情報から検査値や薬剤情報、患者基本情報などの大量データを自動収集するシステムです。現時点で14万人以上のCKD患者のデータがJ-CKD-DB-Exに含まれています。
本研究グループは以前、J-CKD-DB-Exを活用し、糖尿病合併CKD患者において、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬(現在では一部の薬剤は心不全、CKD患者にも適応)は、投与開始時の蛋白尿やレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の使用の有無、薬剤を投与する前の腎機能の変化とは関係なく、腎保護効果を発揮することを報告しました[1]。SGLT2阻害薬は、投与初期にGFRの低下を来すことが知られており、この現象はイニシャルドロップあるいはイニシャルディップと呼ばれています。この初期のGFR低下に関連する要因については様々な報告がありますが、まだ十分には解明されていません。また、SGLT2阻害薬投与開始後のGFR初期低下が腎機能に与える影響については、DAPA-CKD試験、EMPA-REG OUTCOME試験、CREDENCE試験などの大規模ランダム化比較試験(RCT)による事後解析で、初期低下の程度が腎予後に影響を与えないことが報告されています。しかしながら、これらのRCTでは、ほとんどがRAS阻害薬を服用し、蛋白尿を認める患者に限定されており、ある一時点でのGFR測定(投与2週間後など)のみを初期低下と定めており、リアルワールドデータでの検証は十分ではありませんでした。
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