世界初!ES細胞用の科学的再現度が高い無血清培地を開発 培養肉の生産技術確立にもつながる研究成果
Digital PR Platform / 2024年5月21日 20時5分
【本件の内容】
研究グループは、化学的に定義され、情報公開されている成分のみを用いて、新しい無血清培地「DARP(DA-X-modified medium for robust growth of pluripotent stem cells)培地」を開発しました。この培地は、ウシ胎児血清成分を一切含まず、マウスES細胞の長期培養において必要な栄養素と環境を備えています。さらに、培地にコレステロールを添加することで、マウスES細胞が持つ特性を損なうことなく、安定的に細胞を増殖させることに成功しました。
本研究成果により、1,000種類以上もの成分で構成されているウシ胎児血清や、化学的成分が非公表な商用サプリメントが不要となり、研究者自身が培地成分を正確にコントロールできるようになります。これにより、実験の精度や再現性が大幅に向上し、マウスES細胞の自己複製能※6 や未分化性※7 の維持に必要な成分等の研究促進に大きく貢献できます。また、無血清培地を用いた持続可能な培養肉生産にも、技術的進展をもたらすことが期待されます。
【論文掲載】
掲載誌:
Frontiers in Bioengineering and Biotechnology
(インパクトファクター:5.7@2023)
論文名:
Development of a chemically disclosed serum-free medium for mouse pluripotent stem cells
(化学的に公開されたマウス多能性幹細胞のための無血清培地の開発)
著者 :
片山ともか1,#、武智真里奈3,4,#、村田大和2,#、千木雄太5、山口新平4*、岡村大治1,2*
*責任著者(共同責任著者)、#共同第一著者
所属 :
1 近畿大学大学院農学研究科、2 近畿大学農学部生物機能科学科、3 大阪大学大学院生命機能研究科、4 東邦大学理学部生物学科、5 徳島大学先端酵素学研究所
DOI :10.3389/fbioe.2024.1390386
URL :https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fbioe.2024.1390386
【研究の詳細】
現在、多くの研究機関で、ウシ胎児血清を含む培地がマウスES細胞の培養に使用されていますが、血清成分にはロットごとに大きなばらつきがあるため、科学的再現性に課題がありました。一方で、マウスES細胞用の無血清培地として、KSR※8 やB-27※9 のような無血清用サプリメントも世界中で広く使用されていますが、商用サプリメントの多くが成分非公表であり、それらの成分がマウスES細胞の動態や特性に及ぼす影響の精緻な解析が困難でした。
そこで研究グループは、以前開発に成功したガン細胞株のための無血清培地である「DA-X培地」をベースに、細胞外マトリックス※10 であるラミニンの最適化やコレステロールの適切な添加といった改良を加えることで、マウスES細胞の多能性※11 を損なわず、高い安定性と増殖性を示す新規の無血清「DARP培地」を開発しました。DARP培地は、マウスES細胞の未分化性を維持し、従来のKSRやB-27を用いた無血清培地と比較して、同等またはそれ以上の増殖効果を示すことが確認されました。さらには、DARP培地を用いることで安定してマウス初期胚(胚盤胞※12)から新たにES細胞を樹立することができ、またDARP培地条件下で維持されたES細胞からキメラマウス※13 形成も確認され、高い未分化性・多分化能性の維持効果が証明されました。またES細胞に加えて、エピブラスト幹細胞※14 の基礎培地としても使用でき、長期間に渡って安定した増殖性と多分化能性を維持することも示されました。
無血清DARP培地の開発により、すべての化学成分が明確に定義され情報公開されたことで、商用サプリメントに依存することなく、実験の精度や再現性を大幅に向上させることが期待されます。さらに、コレステロールのマウスES細胞における増殖促進効果も明らかになり、マウス多能性幹細胞の自己複製能や未分化性の維持に必要な、特定の成分の機能を解析する際の障害を大幅に低減することが可能になります。また、本研究成果は、無血清培地をベースとした培養肉生産における技術的進展をもたらすことも期待されます。
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