1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

タンパク質結晶の高強度化と高延性化を実現

Digital PR Platform / 2024年5月30日 10時0分


研究内容
 本研究グループは、大型の結晶作製を可能とする塩濃度勾配法を用いて、タンパク質結晶の一つである鶏卵白リゾチーム結晶を作製し、グルタルアルデヒドを含む架橋溶液に浸漬することで架橋タンパク質結晶を作製しました。そして架橋を施していない純粋なタンパク質結晶と異なる架橋時間で作製した架橋タンパク質結晶に対して、圧縮試験による応力ひずみ曲線*2の解析や内部の欠陥構造の詳細を観察しました。
 図2は、純粋なタンパク質結晶と7日間架橋を施した架橋タンパク質結晶の典型的な応力ひずみ曲線を示しています。図2(a)は原点付近の拡大図を示しており、図2(b)でほとんど見えない純粋なタンパク質結晶の応力ひずみ曲線に対応します。架橋によって応力ひずみ曲線が劇的に大きく変化していることがわかります。
 ここで架橋前後の曲線で注目すべき点が二つあります。一つ目は曲線の形状です。純粋なタンパク質結晶は圧縮により弾性変形を示し、その後、破壊が起こりました。このように弾性変形から破壊に至る材料を脆性(ぜいせい)材料と呼び、ガラスやセラミックスで典型的に見られるふるまいです。一方、驚くべきことに、架橋タンパク質結晶は弾性変形後に破壊することなく、上下降伏点現象*3を示し、その後塑性変形*4を生じました。さらに、その後の大きなひずみにおいても明瞭な破壊が観察されませんでした。このような弾性変形後に破壊することなく塑性変形を示す材料を延性材料と呼び、金属や高分子材料でよく見られるふるまいです。それぞれの圧縮試験前後の光学顕微鏡写真からも、純粋なタンパク質結晶は圧縮試験によって粉砕しているのに対し、架橋タンパク質結晶は壊れずに形状を維持しており、脆性から延性へと変化したことがわかります(図3)。このような脆性から延性への変化が温度の変化によって発現する材料は報告されていますが、架橋液に浸漬するだけの簡便な方法で得られるのはタンパク質結晶特有の性質である可能性があります。


[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1706/88973/500_173_202405291334046656b03c93f0b.jpg
図2 (a)純粋なタンパク質結晶と、(b)7日間架橋を施したタンパク質結晶の典型的な応力ひずみ曲線



[画像3]https://digitalpr.jp/simg/1706/88973/500_106_202405291334076656b03f6d0aa.jpg
図3 (a)(b)純粋なタンパク質結晶の圧縮前後と、(c)(d)架橋タンパク質結晶の圧縮前後

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください